「いらっしゃいま、せぇ・・・・?」
「・・・よぉ。」
・・・え?
「どどどーもぉ!いらっしゃいませー!」
「・・・よぉ。」
ども、仁っす。
いやぁ、本日もまたお日柄も良く--
じゃなくて。
本日もまたいつものように俺の主人、有希さんがやって来たのだが・・・
「ななななな何事ですか!?」
有「分かる、分かるぞ。私もお前と同じ気持ちさ!」
「へ?」
有「まさか・・・日本代表もビックリ。俺様2TOPと一緒にBlack出勤する日が来るとは思ってませんでしたよ!」
俺達はカウンターの端に座り込み、こそこそと密談モードに突入。
ここに来る度、有希さんは頭を悩ませている。
原因はこの2人の激しすぎる愛のセクハラ。
なのに今日はどうだ。
まさか一緒に来るとは!
「どうしちゃったんすか。とうとう敗北しちゃったんすか!?」
有「バカ言え!なーんか知らねぇけど一人で飲みに出るの禁止にされたんだよ!」
「えっ!?」
なんすかそれは。
有「そんなの守れるわけねぇだろ?で、いつものようにこそーっと出ようとしたらこれだよ。玄関開けたらあらビックリ。何故かいたんですね。帝王と医者がそこに。」
「ま、待ち伏せ!!」
さすが愛の力!
全てお見通しということっすか!!
有「そーなんだよ!もーどうすりゃいいの!私を何歳だと思ってんだ!生徒指導ごっこなら他でやってくれってんだよ!!」
「うわわわ声がでかいっすよー!」
もはや密談ではない。
フルオープンっす。
孝「おい、早く来い。」
真「何やってんだ。」
有「・・・へーい。」
しぶしぶ席に向かう有希さん。
すごい。すごすぎる。
何がすごいってそりゃ・・・
「あの2人を引き連れて来るなんて…有り得ない。」
マジで有り得ない。
有「マジで有り得ねぇよ!どうなる日本!どうなる今日の私!!」
「そ、そういう意味じゃ・・・」
有「あぁ!?」
「い・・・・いえ。」
ほんと有り得ない。
2人の真ん中に座らされてはぁぁぁぁーとため息をついている有希さん。
どうやら俺のご主人様は本日も初っ端から修羅場のようです。
「真樹さんと孝さんはいつものでいいっすか?」
「「あぁ。」」
とりあえず、仕事をしようと思う。
「えと有希さんは・・・・・これに変えたんすよね?」
有「あぁ。」
孝「------いつものと違う。」
は-----はうっっ!!!!
有「あー、実はこの前来た時によ。こっちの方が飲みやすいじゃんってことに気付いてさ。」
ダメ!ダメダメダメダメダメっすよぉ!!
孝「この前って・・・・いつだ。」
ほら!ほらきた!!
有「おととい・・・い、いやいやいつだったかなぁぁ!」
言い切ってから気付く有希さん。
見事に地雷を踏みまくりました。
真「てめぇ・・・またこっそり抜け出しやがったなぁ?」
有「ちち違うよー!誰だったかなぁ!一緒に来た!!累だったか純君だったか要だったか!?」
真「お前の嘘はすぐばれるって言ってんだろうが。」
有「うう嘘じゃねぇよ!な、なぁ仁!?」
「おお俺に振るんすかぁぁ!?」
前から思ってたけど有希さんは本当に嘘が下手だ。
そしてすぐ俺に助けを求めてくる。
とにかくあまりにも頼られるので
『もしかして俺のこと・・・?』
なんて思ってこっそり聞いたことがある。
『有希さんもしかして・・・俺のこと好きなんすか?』
有『好きだぞ?』
即答。
どうやら全く眼中にないらしい。
まぁ仕方ない。
桜館のイケメンファイブでさえ有希さんへの異性の壁を越えるのに苦労してんだ。
俺が越えられるわけが無い。
有「おいコラ近寄るな!大人しく飲んでろ!」
孝「嫌われたな真樹。」
真「このくらいじゃめげねぇよ?」
ちなみにこの2人は有希さんにお熱だ。
スキンシップと称してちょっかいを出す。
その様はどっからどう見ても好きな女子を苛める悪ガキにしか見えない。
もちろん・・・
大金積まれてもそんなことは言えません。
有「孝!てめぇもやめろ!」
真「そうだ、やめろ。」
孝「聞こえねぇな。」
ちなみにほぼ毎日来てくれてるのに真樹さんと孝さんが一緒にいるのは初めて。
一人でも手に余るっていうのに・・・・・
今日は激しいスキンシップ×2!!
どうなる日本!
どうなる有希さん!
そして・・・・・・どうなる俺!!!
有「ったく、ゆっくり飲みてぇのに・・・仁くん、両隣の客が迷惑行為を働くんですがどうすればいいっすか。店員の権限使って追い出してはもらえないっすか。」
だだだから俺に振らないでください!!
「へ・・・・・へへっ!」
笑って誤魔化-----
せない!!
(こ、ここ怖ぇぇぇぇー!!!!)
真樹さん、孝さん。
2人からの視線・・・
思い切り鋭いヤツを同時に頂きました。
イエス・死んじゃう。
有「おいコラてめぇら。仁を苛めるんじゃねぇよ。怖がってんじゃねぇか。」
あああんたのせいっすよぉ!!
真「とりあえず威嚇。」
孝「脅しとかねぇとな。」
有「バカが。同類め。」
(こ、怖ェェ・・)
対面してるだけで圧倒されてしまうのに…
タメ口で話したり悪態つくなんてマジで有り得ない。
恐ろしすぎる。