許せ!

許せ!—11 SAKURA∞SAKU first

「あ、あの・・・離れてください。」
孝「却下。」

「却下ってお前・・・意味分かんねぇ。」
孝「恋人だろ。今日一日。」
「・・・それはパーティーの間だけだろうが。」

孝「12時まで約3時間。お前は俺の女だ。」

「・・・・・・。」

 

何言ってんだこいつ
何が楽しくて恋人ごっこの続行?

そんなに恋人が欲しけりゃ真面目に彼女を探せ。

 

「と、とにかく離れろ。」
孝「このままでいい。」
「い、いやいや何言って--」
孝「有希。」
「な、なんだ?」

 

孝「お前が言ったこと。なかなか嬉しかった。」

「・・・・・そうかよ。」

 

(くそ・・・)

 

今度は話題を変えやがった。

それにしても、嬉しかったのか?

ふーん。

ふーん・・・

どの辺りが?

 

孝「お前、なんでこんなに細ぇんだ?」
「は?え、そうっすか?」

 

不意に、抱きしめる腕に力が加わった。

 

孝「お前、女なんだな。」
「-----そうですけど。」

 

なんだそりゃ。

確かに「女と思うな」と言ったのは私だが・・・

まさか素直に男だと思ってくれてたんだろうか。
それはそれでびっくり。

 

「そんなことよりいい加減--」
孝「放さねぇ。」
「・・・・・・・。」

 

おいおいどうしちゃったんだよお前。

恋人ごっこはもう終わりだろ?

それに偽物恋人でちゅーだのぎゅーだの・・・
そんなのおかしいだろ。

ついでに私のドキドキメーターも爆発寸前だよ。

 

 

「孝、頼むから---」

孝「放したくねぇんだ。」

「・・・・・え?」

 

 

な、なんだって?

 

 

「こ、孝様・・・?」

孝「・・・どうなってんだよ俺は。」

「へ?」

 

 

そ、それって私に聞いてんのか?

でで、でもなんて答えれば--

 

 

 

 

 

孝「お前が欲しくてたまんねぇ・・・」

 

 

 

 

 

(・・・・・・・。)

 

 

 

言葉が出てこない。

 

出るはずもない。

 

 

(ほほ、欲し-----?)

 

 

一体こいつは何を言ってんだ。

 

まさか私をおちょくってんのか?

それともドッキリか?
やっぱドッキリなのか!?

 

「ここっ孝様!!そろそろお時間では!?院長も工藤も心配してるかと!!」

 

おちょくってる?
ドッキリ?

 

いやいやそんなことはどうだっていい。

 

だってお前…シリアスモードで「お前が欲しい」なんて言われて平常心でいられるか?

 

そんなの無理だ。

心臓ヤバイ。ドキドキが止まんねぇんだけど!

 

とと、とにかく離れて落ち着かせてください!

 

孝「なぁ・・・」
「なな、なんすかっ!!?」

 

耳元は厳禁!!
マジ勘弁!!!

 

 

 

 

 

孝「このドレス。帰ってから脱がせていいか?」

「・・・・・・・・・・。」

 

 

 

 

 

(・・・・・ドレスを?)

 

 

脱がせていいかって?

 

 

(・・・・・・・・・・。)

 

 

やっぱこいつ---

 

 

 

 

ただの、エロだ。

 

 

 

 

(そーゆーことっすか。)

 

 

「・・・死ね。」

孝「---っ!」

 

 

無防備な腹に懇親の一撃を食らわせる。

そして会場へリターン。

 

 

(チッ---!!)

 

 

なーにがお前がほほ、欲しいだ!

よくもあんな恥ずかしいセリフ吐きやがって。
バッカじゃねーの!

 

孝「怒るなよ。」

 

早歩きで歩いてるのに余裕で追いつく孝。
相変わらず足が長いっすね!

 

「けっ!ふざけんな!」

 

ビームを飛ばす勢いで睨みつけ
これ見よがしに悪態を吐き捨ててやった。

 

 

『有希さん!』
「げ。」

 

 

その後会場へ戻るとやはり色んな視線を頂いた。

しかもちょい悪院長に捕まり、なぜか
「面白いお嬢さんだ!気に入った!」
とバシバシ叩かれ更に変な目で見られた。

終わった。

今後何があってもT大付属病院にお世話になることは無いと思う。

 

「お前のせいだからな。」
孝「・・・・・。」
「おい、聞いてんのか?」
孝「・・・・・。」

 

帰りの車に乗っている間、孝はずっと何かを考え込んでいた。

話しかけても完全スルー。
おまけに時々首をかしげてため息まで漏らす始末。

 

(あぁなるほど・・・)

 

どうやら脳内のメンテナンス中らしい。

頼むから厳重に点検してくれよ。
これ以上の意味不明行動は困る。
激しく迷惑だ。

 

 

 

そして我々2人は

 

 

 

住処である桜館へ、無事帰宅した。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・許せ!(完)