様子見

様子見—3 SAKURA∞SAKU first

(いやぁ…見事に期待を裏切ってくれたなぁ。)

男子顔負けのビックリ活躍をした姫のおかげもあって俺達は優勝してしまった。

あいつらが見てたらなんて言ったかな。
ふと、他の住人達の顔が浮かび笑いが出る。

『優勝おめでとー!!』

 

優勝の証としてガラス製のトロフィーをもらった。
あんまり嬉しくない。

累と姫を見ると、二人ともそれぞれ変な顔をしている。

まさか優勝するとは思ってなかったんだろうけど・・・
勝ったからには何か別のものを期待していたに違いない。

 

累「ちょっと待ってて。挨拶してくるから。」
「分かった。」
有「うーっす。」

 

累は先輩に挨拶しに走っていった。

早く戻ってきてよ累。
結構疲れちゃったから早く帰りたい。

そういえば累は賭けに負けたから今日は徹夜で手伝いなんだな。
・・・ドンマイ。

 

(そういえばたこ焼き・・・)

 

ハッとして周りを見回すと会場は閉幕モード。
姫が食べ物買いたいって言ってたけど既にお店も片付けてたり引き上げてたり。

どうしよう…約束破っちゃった。

 

(・・・・・・・・・・ん?)

 

謝ろうと姫を見ると---

なんか様子が変だ。
チラチラと目を泳がせて妙にそわそわしてる。

 

(あれ---)

 

どうしたんだと姫の視線を辿ってみると・・・

集団の女の子がこっちに向かってくる。
なんとなく目付きが鋭いのは気のせいじゃないと思う。

 

(これは・・・やっぱりアレかな。)

 

姫も気付いてるんだろう。
参ったなこりゃって顔に書いてある。

 

『あのっ、天宮さん。私達この人に話があるんですけど、ちょっとお借りしてもいいですか?』

 

予定通りの台詞が飛んできた。

予想はしてたけど・・・

こういうのって逆に嫌がられちゃうよ?
少なくとも俺は嫌だ。

 

「えと、ごめんね?話があるなら俺も一緒でいい?」
『えっ?』
有「・・・・。」

 

(・・・・・あれ?)

 

予想外に不機嫌な声が出た。
自分でもビックリ。

 

累「あれ?どうかした?」

 

累が戻ってきた。
ナイスタイミング累たん。

 

有「か、帰ろう。2人とも。」

 

しばらくだんまりしてた姫が帰ろうと言い出した。

これはスルー大作戦だろうか。
それが出来れば苦労はしないけど・・・

 

『ちょっと待ってよ!』
有「・・・・・・。」

 

集団の女の子を甘く見たらいけない。
総合レベルが10000ポイントは上がる。

 

『その人、天宮さんと神崎さんとどういう関係なんですか!?』
『そ、そうだよ!今まで一度も特定の女の人作らなかったのに!』

 

う、うーん。
どう答えればいいんだろう。

そんなの勝手じゃんって言いたいけどそれじゃ姫への風当たりが更に強くなりそう。

そんなことになったら姫にも悪いし・・・
それに今後姫の俺に対する態度にも影響する。

 

(・・・ぷっ。なに、こいつら。)

 

どうしようかと思って2人に目を向けると・・・

2人はそれぞれうんうん唸ってた。
姫に限っては顎に手を当てて眉間に皺を寄せている。
きっと頭をフル回転させてるんだろ。

 

 

---利用すんなよ

 

 

ふと、姫が言った言葉が頭をよぎる。

 

(なるほどね・・・)

 

この前学校で似たようなことがあったって言ってたけど
「姫=彼女」なんて言った累の気持ち、分からなくはないな。

だって…上手くやれば都合の良い女の子よけになる。

 

でも---

 

今はもう、あの時とは違う。

 

姫が桜館に来て一ヶ月。

累を筆頭に、要も真樹も孝もなんらかの形で姫に好意を持ってる。

そしてもちろん

 

俺もその中の一人。

 

(先手必勝---ってとこかな。)

 

あの時、累がどういうつもりだったのかは分からないけど

コレは「利用」じゃない。

 

これから、おそらく姫に落ちていく俺には必要なこと。

 

ライバルと呼ぶには手強すぎる桜館住人達。
そいつから姫を勝ち取る為には無視して通れない道。

つまり--

 

自分は『男』だって
意識してもらわないといけない。

 

チラリと累を見ると・・・うん。

同じこと考えてるんだと思う。
付き合い長いからね。

 

有「はぁぁぁ。あのねぇ皆さん。よーく聞いてくださいよ。」

 

仕方ねぇなぁ、とでっかいため息をついて女の子たちと向かい合う姫。

迷惑かけるつもりはなかったんだけど、ごめんね。

でも---