あ「ふふっ。相変わらずだなぁ、有希は。」
ふと、あっ子さんが笑い出した。
ていうかそれってどういうこと?
発言が謎過ぎる。
累「どういうこと?」
もっと聞いて。累。
あ「君達2人ともグレートイケメンなのにさ。あまりにも普通なんだもん。相変わらずだなぁと思って。」
うーん、全然意味が分かんない。
あ「あいつ、見た目にトキめかない変わり者で有名だったんだ。」
え、そんなことで有名だったの?
凄いね姫、さすがだよ。
(ま、なんとなく分かるかも。)
桜館の住人達はあんなだし、一目惚れされるなんて日常茶飯事。
それなのに平気な顔して接してくるから・・・
姫ってもしかして不細工好きなのかなぁなんて思ってた。
でも違ったんだね。
あ「しかもなかなか落ちないからさ。自分から仕掛けといて逆に有希に夢中になっちゃう男子もいたんだよ。」
累「・・・・・。」
「ま、本人はぜーんぜん好かれてる自覚が無かったみたいだけど。」
「・・・・・。」
姫・・・昔からそういう人だったんだね。
(でも・・・)
でも俺は
きっと俺達は
---外見で判断しない
そんな姫に惹かれてるんだと思う。
あ「有希を落とすのは大変だよ?お二人さん。」
「え?」
累「・・・・・。」
ニヤッと挑発的な笑みを浮かべるあっ子さん。
どうやら俺達のことを「姫に仕掛けて逆に夢中になってる奴ら」と思ってるみたい。
でも---
(・・・落とす---か。)
そういえば今まで女の子を落としたいと思ったことがない。
好きになってもらいたいと感じたこともない。
多分こっちの気持ちが恋愛に発展する前に好きになってくれる女の子が多かったのが大きな原因の一つだと思う。
それって嬉しいことなんだけど・・・
満足感はない。
でもうちの姫は?
軽ノリすんなとか自分を女として見るなとか。
有り得ない発言ばかりで俺達の誰かを特別に好きになる気配もない。
そういやこの前、要が頭突きされてるのを見た。
しかも2発。
聞けば真樹も孝も累も殴られたことがあるって。
俺達の"男"の一面に自分から捕まりにくる女の子はたくさん見てきたけど
でも姫のように俺達を『男として見ない』女の子に出会ったことはない。
俺らにとって、姫は初めてのタイプ。
そんな女の子を…
簡単に落とせるはずがないでしょう。
だって・・・
どうやって"男"を感じさせればいいか分からない。
累「落とすのが大変って・・・そのくらい知ってるよ。」
「うん、分かってる。」
あ「ふふっ。それって要するに・・・有希のことが好きってこと?」
累「うん。」
「・・・・・・・。」
(累・・・)
やっぱりお前、姫のこと好きだったんだ。
ばればれだけど・・・
本人から聞くと、ね?
あ「そっちのお兄さんは?」
え、俺?
俺は・・・
「うん、好きだよ。」
(あれ・・・)
さらっと肯定の言葉が出ちゃったけど・・・
え、俺って姫が好きなの?
俺は・・・恋をしてるの?
あ「そっか!頑張ってね。応援してる。」
「・・・。」
累「・・・・サンキュ。」
(うーん・・・)
いやいや、恋じゃないだろ。
そういう呼ぶには熱が足りないと思うけど。
人の恋路はたくさん見てるけど…
自分のことになると明らかに経験値低いよね。
この気持ちがどのくらいのレベルなのかさっぱり分からない。
でも
姫が気になってるっていうのは分かる。
今まで感じたことのない感情を姫に抱いているのは---確かだ。
要するにきっと
俺はいつか
姫に、落ちる。
なんとなくそう思う。
有「はい、次の試合のゼッケンもらってきたぞ。」
「----!」
絶妙なタイミングで戻ってきた姫。
俺らが仲良く話してたと思ったのかニコニコ顔だ。
(・・・・・・・・・・・・。)
まぁ、今はこんな感じでいいや。
あんまり急いで結論付けても何にも解決しない。
---姫のことが好き
その「好き」にどれだけ意味が含まれてるのか、含まれていくのかは分からない。
そういうこと。
あ「・・・・・。」
「・・・・・。」
姫はあっ子さんと連絡先交換。
その時チラッと彼女と目が合った。
軽く会釈するとニッコリ微笑まれた。
ありがとあっ子さん。
少しだけ気持ちが整理されたような気がします。
今からデートなんだろう。
あっ子さんは男達を引き連れて帰っていった。