予感

予感 14 ~GAME





電話やメールはもちろん、今や財布やスケジュール管理まで担う敏腕秘書的な携帯電話。






そんな輝かしい科学の進歩を






今ほど憎らしく思ったことはない。






透「------。」

「------。」

透「---------。」

「------。」






静まり返った部屋に鳴り響く無機質な電子音。

昂った心を鎮める効果でもあるのか・・・

まるでふと我に返った酔っ払いのように、ゆらゆら揺れてた透ちゃんの瞳に正気という名の光が戻ってきた。







(ウソだろ・・・)







これってつまり、アレか?

数秒先に待っていた幸せキスタイムが幻になってしまったってことか?






(いや待て諦めるな・・・)






今なら・・
今ならまだ間に合うかもしれない。






透「っ・・・!」






何事もなかったことにして顔を近づけてみた。

結果、プイッと顔を逸らされた。
ものすごくショック。






(なんなの・・・)






なんなのコレ・・・

新たな嫌がらせ?

だとしたら絶望感が半端ないですけど。






透「ぁ、ぁ、あの、えと---」

「・・・・・・。」

透「・・・・・電話、鳴ってるみたいだけど。」

「・・・そうだね。」

透「・・・出ないのか?」





え。





「・・・どうせ晋か玲だろ。いいじゃん出なくても。」

透「なな何言ってんだ!早く出てやれよ!そして退け!」





は?





「なんでそうなるの。まさかここでやめるとでも思ってるわけ?ふざけんな。キスは諦めてもエッチは断固続けるからね。」

透「なな--な----!」

「透ちゃんだってさっきまで乗り気だったじゃん。」

透「そそ、そんなはずあるか!ていうかさっさと出ろよ!仕事の電話だったらどうすんだバカ!」

「・・・・・・。」






(あぁ、なんだろうこの感覚・・・)






決して罵倒されるのが好きなわけではない。

どちらかと言えば褒められる方が好きだ。

が、いつものように言い返してくる様子に
必死に俺を押し返してくる様子になぜか安心してしまう。

さっきの可愛い透ちゃんも良かったけど・・・

いつもの勝気な透ちゃんもやっぱり好きだわ。






透「なに変な顔してんだ!さっさと出ろよこの変態!」

「・・・・・。」






やっぱ可愛い透ちゃんの方がいいかも。






「ていうか出ろ出ろって言うけどさ。鳴ってるの、透ちゃんの携帯だからね。」

透「へ?私の?・・・一体誰だこんな時間に。」

「全くだ。俺の幸せタイムをぶち壊しやがって。」

透「・・・・・。」






---PIPIPIPIPIPI






未だしつこく鳴り続けている携帯。


あいつらめ・・・

ゲームにおいて他の奴の邪魔はしない。
それが暗黙の了解じゃなかったわけ?

二人して俺の邪魔ばかりしやがって・・・

今度会ったら覚えてろよ。






透「おい、取ってくれ。」

「え?」

透「携帯だよ。取ってくれ。」

「えーヤダ、放っとけばいいだろ。そんなことより・・・続きシよ?」

透「---は!?」

「もう我慢の限界。早く透ちゃんに入れたくて堪んない。」

透「な---なな、なにを---!」

「透ちゃんだって中途半端なままじゃ辛いだろ?もっともっと気持ちよくなりたいだろ?」

透「わわ私は別に---ちょ、やめろっ!触るな!」






スルリと腰を撫でるとジタバタ暴れ出した。

ていうか触るなだと?
バカ言うんじゃありません。

ただでさえ目の前でご馳走取り上げられた気分だってのに・・・

これ以上焦らされたらリアルに爆発するかもしれない。






透「コラ---!ゃめっ---携帯---!」

「ほっとけって。それよりほら、コッチに集中して?」

透「ちょ---っ!」

「んー」






もはや完全に正気に戻ってしまった透ちゃん。

正にさっきとは別人。
待て、やめろと必死に抵抗してくる。




だがやめるわけがない。




邪魔してくる手を再びシーツに押し付け、柔らかな胸をフニフニと堪能する。

そして無防備な首元にちゅう、と吸い付いてやった。






透「この---ゃめろっ--!退け--!」

「やーだ、やめないし退かない。」

透「バカ---てめ、っ---す、んだ!」

「ん?」





なに?








透「電話っ---部長だったらどうすんだー!」








(え・・)







それは---






ちょっと困るかも。






「チッ・・・分かった、分かりましたよ。」






結局、またお預けかよ・・・






透「はぁっ、はぁっ---!やっと観念したかこの変態!ていうか手ェ離せ!」

「・・・観念したわけじゃないから。それに---手は片方だけね。逃がす気はないから。」

透「な---っ!」






しぶしぶ体を起こすと手を離せと訴えてくる透ちゃん。

でも残念。
まだ解放してあげるつもりはない。






「電話が終わったら覚悟してろよ。」

透「な、なんだ!?」

「今度こそ何が起こっても絶対やめないから。」

透「わ、わけ分からんこと言ってないでさっさと取れよ!」

「はいはい。」






チラリと視線を移すと少し離れた所でシーツに埋もれている携帯。

よいしょと軽く身を乗り出し、なかなか鳴りやまないソレを掴み上げた。






(さあて・・・)






散々俺の邪魔をした迷惑ヤローは

一体どこのどちら様でしょうか。










(・・・・・・・・?)










ディスプレイに表示されてたのは







知らない名前だった。







透「おい、寄越せ。」

「・・・・・・。」

透「おい!」

「・・・・・・。」








(・・・ツカサ?)








ツカサって---








誰だ?