予感

予感 13 ~GAME






『進藤くんはきっと・・・女に振り回されることなんてないんでしょうねぇ。』






いつ、誰に言われたかも覚えてない・・

恐らく遊んでた女に言われたんだろうその言葉。






それをなぜか、ふと思い出した。






もちろん嫌味を含んだソレになんと答えたかなんて覚えてない。

そうかもねぇ、なんて適当にやり過ごしたのかもしれない。







だが、今なら声を大にしてこう答えようと思う。







「俺だって---振り回されることはある。」







そしてその言葉通り







俺は今、透ちゃんにブンブン振り回されている。











---日下透ちゃん




普段の彼女は、外見性格共に男子寄り。

どちらかというと女の子にモテそうな雰囲気で

逆に男からは「女として見れない」とか「いい友達」なんて言われちゃうタイプ。






そんな透ちゃんは、エッチの最中考え事をするのがお好きらしい。






透ちゃんに触れてるのは俺なのに

気持ち良くさせてるのも俺なのに

明らかに他のことに気を取られてる透ちゃん。





そりゃ、もちろんイラッとした。

もう許さん・・・

こうなったら苛めて苛めて泣かしてやる
どんなに謝られても絶対止めん!

そう心に誓った。






なのに・・







透「たつ、み、さ---」







あのタイミングで名前を呼ぶなんて・・・

ずるいと思う。






透「も---ゆるし、て---!」






しかも---なにそれ。

リアルに録音しとけば良かったと思った。







透「辰巳、さんっ---!」

「っ--」







更には悩まし気に眉根を寄せて

いじらしく唇をかみしめて







そして必死に俺を見つめながら

ぽろぽろと涙を零した。







一般に女の涙は武器だと言うが

透ちゃんのそれはリーサルウェポンだと思う。







(可愛い・・・)







キラキラと光る涙を前に

さすがに、ドキッとした。







そして気付いたら・・







透「ぁっ!--ん、ぅ-------ッッ!?」







イかせるつもりなんてなかったのに

まだまだ焦らしてやるつもりだったのに




---この可愛い透ちゃんは俺だけのモンだ




そんなワケの分からない独占欲に駆られてコロッと暴走してしまった。








全く、透ちゃんといるとほんと調子が狂う。








そしてそれは、現在も進行中だったりする・・・








透「は、ぁ・・・っ・・」

「・・・っ」

透「ん--」

「透ちゃ--」






---透ちゃんは快感を怖がってる。

これは前回彼女を抱いた時に分かったことだ。


---出来れば怖がらせたくない

そう思うのは当然だろ?

まぁ気休め程度だろうけど、少しでも恐怖を取り除けるようにと唇を重ねながらイかせてみた。






のだが






(-----、・・・?)






なんだろう・・






激しく、違和感を感じる。






透「ん・・・ぁ--」

「・・・・っ」

透「は、・・んっ--」

「----、・・?」






絶頂の余韻で小さく震える透ちゃんの体。

そんなに疼くのか、キュッと背中を仰け反らせ

キスの合間に甘い吐息を漏らす。


そんな反応が可愛くて可愛くて、調子に乗って更に深く唇を重ねると






透「----は、っ、も・・いい加減に、しろ--!」






素直に流されてしまえばいいのに・・・

気持ちいいくせに意地っ張りな透ちゃんは、弱々しくも必死に顔を逸らし俺の唇から逃れて行った。






---ってのがいつものパターンだろ?






なのに







透「ん、っ・・・」

「----!」







やっぱり、今日の透ちゃんは変だ。







だってキスの相手は俺だってのに







まるで「もっと・・・」とねだるように

可愛い唇をちゅちゅ、と押し付けてくる。








・・・・・。








え、意味が分からない?

なに言ってるか理解できないって?


いやいやだからつまり---








透ちゃんが

俺のキスに応えてくれているのだ・・








透「・・・っ、ぁ--」

「・・・っ」

透「ん、ん・・・」

「・・・。」







(ウソ、だろ・・)







俺は夢でも見てるんだろうか。

それとも透ちゃんが夢を見てるんだろうか。




だってあの透ちゃんがだよ?

俺=変態の服着たクズヤロー、そう思ってる透ちゃんがだよ?






透「・・・ぁっ、--ん・・・」

「----。」

透「は、---ぁ‥」

「っ---」






今にも蕩けてしまいそうな甘い声を上げて

更には自分から舌を絡ませてくるなんて・・







(やば・・・)







これは、ヤバい。








ちょっと

いや









すっごく嬉しいんですけど・・・









(可愛い・・・)







あんなことやこんなことまでヤっちゃった仲なのに

たったこれだけのことに喜びを感じるなんてどうかしてる。







でも・・・







うん、やっぱり嬉しい。







透「ん---ぁ、ぁ、あぁっ---!」







気に入ってる女の子のこんな姿を見て

しかもこんなに可愛くおねだりされて

果たして調子に乗らない男がいるだろうか。






答えは---?






もちろん、ノーだ。







透「は----あ、っ・・・!」






当然、調子に乗った俺の単純な手。

そして無造作に透ちゃんの柔肌を弄り
再び、彼女の中に指を沈めていく。






(---!)






さっきの絶頂のせいか、それとも散々焦らしたせいか透ちゃんのソコはとろとろ・・・

その熱い感触を愉しみながら壁を擦り上げると、まるで待ちわびていたかのように俺の指に絡み付いてくる。






「・・・そんなに気持ちいいの?」

透「ぁ---そこ、・・・だめ・・っ」

「・・・ここ?」

透「っ---ぁぁ!」






快感から逃げようとする体をシーツに押さえつけ、きゅ・・と上壁を押し上げる。

するとイイ所を掠めたのか、身を震わせて一際切ない声を上げる透ちゃん。

そんな悩ましい反応に無意識に口角が上がってしまう。






透「ぁ---辰巳、さ---ん・・」

「--!」






細い首筋に吸い付くと弱々しく名前を呼ばれた。

それって故意なんだろうか。

もし無意識なら非常に質が悪い・・






透「待って----ぁ・・待っ--!」

「ダメ、待たない・・」

透「ぁ、ぁ、あ--っ!」






悦んで絡みついてくるのか
それとも押し返そうと拒絶してるのか

どちらにせよ必死に締め付けてくるソレに逆らい、ぐるりと中を掻き回す。

そしてさっき見つけたイイ所を猫の首をなでる様に引っ掻き

更に快感を煽る様に、小さく震える敏感な突起を根元からじっくりと撫で上げた。






透「--ダメっ、ぁ、あ・・たつ、み、さ----っ!!」






指の動きに誘われ、ビクビクと体を震わせる透ちゃん。


ていうか---今のなに。

俺を呼びながらイっちゃったわけ?








「あー・・・」








もう







可愛すぎだろ、この子・・・







「・・・・・今日は随分大人しいんだな。」

透「・・・ぁっ・・」

「・・・抵抗しないなら遠慮なく抱くよ?」

透「・・はっ、ん---」






可愛い透ちゃんに挑発されて沸々と湧き上がってくる凶悪な欲情。

なんとなくそれを悟られたくなくて、目を合わせないよう耳元で話しかけてみる。


だが聞こえてないのか聞いていないのか・・

いつもなら鉄拳が飛んできそうな発言にも関わらず、密着した体からは淫らな息遣いしか返ってこない。







全く---

今日の透ちゃんは一体どうしてしまったんだろうか。







あまりの別人っぷりに、これってドッキリなんじゃないかとも思えてきた。







まぁ、別人だろうがドッキリだろうが

そんなことはどうだっていい。







---透ちゃんに、挿れたい







今はもう、それしか考えられない。








「は、ぁ・・・」







弾け飛びそうな欲望を鎮めるようにぎゅっと目を瞑る。

何度か深く息を吐き、軽く体を起こした。



目を合わせたら即暴走しそうな気がして、シーツの白さを睨みながら自分のシャツのボタンを外していく。




そして三つ目を外し終わり、ゆっくりと視線を









「・・ぇっ・・・」









なんだか、久しぶりに透ちゃんの顔を見たような気がした。








そして彼女の黒い瞳と目が合った、その瞬間








まるで静寂を打ち破るファンファーレのように








パーンと心臓が震えた。








(な、な、なにコレ・・・)







目の前の透ちゃんは予想以上に予想外・・・







シーツに散らばる乱れた髪
上気した艶めかしい肌

涙で潤んだ瞳はトロンと揺らめいて

薄く開いた唇からは赤い舌をチラリと覗かせて


そして俺を見上げるその顔は








まるで恋する乙女のように紅く色付いている。








(だ、誰これ・・)








マジで・・・








この可愛い乙女は、誰だ。








「・・・・・・。」

透「っ・・」







無意識ってのは、きっとこのことを言うのだろうと思った。


考えるより先に、まるで吸い寄せられるように紅く染まった頬を包む自分の手。

更に細い顎を持ち上げ、濡れた唇に指を滑らせる。






「・・・・・透・・」






そしてなぜだろう・・・






早く挿れたくて堪らないのに

すぐにでも激しく掻き抱いてしまいたいのに






今は無性に









唇を重ねたい--









「・・・キスしていい?」

透「・・・っ」






返事は、返ってこない。






でも否定を表さない濡れた瞳が






早くしろ、と訴えてる。







(ヤバいよな、これ・・・)







もし、今の透ちゃんの行動が俺を落とそうと目論むゲーム上の作戦だとしたら






その作戦は大成功だと思う。






そしてもしこれが作戦だったとしても






俺はきっと、喜んで罠にはまってしまうのだと思う。






まぁ・・・

透ちゃんにそんな小賢しい真似ができるとは思えないけど。






「・・・今日は絶対、止められない。」

透「・・・・・・。」

「止めないからな?」

透「------。」






こんな風に念を押すのは初対面の日のトラウマのせいだ。

もちろん返事は返ってこない。

だが一応断りを入れたということで良しとする。






透ちゃんの唇まで10㎝

5㎝

3㎝・・






そして悩まし気に目を細める透ちゃんの唇を






迷うことなく奪










PIPIPIPIPIPIPIPI--










透「・・・・・・。」

「・・・・・・。」


透「・・・・・・。」

「ぇ・・」











え---









えぇ・・・