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「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
あれから数分。
とりあえず、お互い衣服を整えた。
「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
ピリリと寒い部屋は人がいるのかと疑うほど静まり返っている。
そんな中、私と玲くんは目を合わせることなく
お互いクッションを抱きしめ並んでソファーに座っているのだが・・・
「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
しーん--
どうしよう・・・空気が重過ぎる。
出来ることならさっきのアレはなかったことにしてしまいたい。
全てを忘れて全力でとぼけて
そうだな、ボスの話題にでも花を咲かせたい。
ちなみに玲くんはどういうつもりなのか
帰る素振りも見せず静かにソファーに沈んでいる。
「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
それにしてもどうすりゃいいのこの沈黙。
お互い喋らない。
ひたすら沈黙をキープ。
気まずい・・・
頼むよ玲くん先に喋ってくれ。
お先にどうぞ?
いやいや無理。
何をどう切り出せってんだ。
チラリと玲くんを見るとなぜかソワソワしてる。
え、目そらされた。
ちょっとショック。
(はぁ・・・)
まったく・・・
目を逸らしてしまいたいのはこっちの方だ。
だってもう---
最悪だ。
変態、俺様に続きまさか王子とまでヤッちまうなんて・・
なんの悪夢だこれは。
そんなに私が憎いのかお前ら!
大体、玲くんは例の病んでるゲームは卒業したんじゃなかったのか?
ピュアフレンドでいるって言ってたくせに
さっきだって何もしないって約束したくせに
サラッとコロッと裏切りやがって・・・
覚えてろよコラ。
君のことは二度と信じてやらないからな!
(はぁぁ・・・)
クッションに顔を突っ込み心の中でため息を漏らす。
とりあえず私的には・・・
今すぐ玲くんをボコボコにしてやりたい。
でもその前に
これだけは言っておかないといけない。
「玲くん。」
玲「な、なに?」
「君とは・・・絶交だ。」
玲「え!!」
ビクッと跳ねる玲くん。
尻が3㎝ほど浮いた。
玲「そそ、そんな---!」
「・・・嫌か?」
玲「い、嫌だ!」
「そんなに嫌か?」
玲「やだ!」
「そうか。それじゃ・・・保留にしてやってもいい。」
玲「---!」
パッと目を輝かせる玲くん。
このお調子者め。
さっきのまでのしおらしい態度はどこへやら。
クッションを抱いたまま身を乗り出し、
嬉しい!と言わんばかりに食いついてきた。
まぁ、本当なら確実に絶交だ。
当たり前だろ。
当然の報いだ。
が、しかし、これは簡単な問題ではない。
なぜならこの王子・・・
こいつは香織とも直樹とも
ついでに司とまで親交を深めすぎている。
そんな状況で私だけ絶交するのは現実的に無理だろ?
何があったのか必ず聞かれるしそれに答えるのは非常に面倒だ。
だが・・・
はいドンマイ、と軽く許してやるつもりはない。
玲「あ、ありがとう透ちゃん。でもあの・・・保留ってどういうこと?」
「条件付だけど・・・絶交は考え直してやってもいい。」
玲「ほ、ほんと!?」
「ただし・・・今度こそ君が約束を守れるならの話だ。」
玲「や、約束?」
「・・・・・。」
そう、約束を守れるなら・・・
不本意だが絶交を取りやめてやってもいい。
よいしょと玲くんに体を向け、深い深い深呼吸を一つ。
そして背筋をピンと伸ばし
がっつりと視線を合わせた。
「さっきのことは・・・誰にも言うな。」
さっきのこと。
つまり---
忍のことだ。
玲「さっきのって、あの--」
「特に・・・司には言わないで欲しい。」
玲「・・・・・。」
「あいつら、今でも仲良しだからさ。知られたら・・・面倒なんで。」
玲「・・・・・。」
ま、知られたくないってのが本音だけど。
「・・・・・。」
玲「・・・・・。」
「約束できないなら--」
玲「・・・約束したら、許してくれる?」
「え?」
玲「さっき泣かしちゃったこと・・・」
「え。」
---泣いてなんかないですけど
出来ればとぼけたい。
全力で目を逸らしてやりたい。
だが、じーっと真剣な眼差しを向けてくる玲くん。
珍しく鋭い視線から逃げることができない。
「・・・約束、ちゃんと守ってくれるか?」
玲「うん。」
「絶対に?ボスに誓えるか?」
玲「うん。」
「きなこにも?」
玲「うん。」
「それじゃちょっとだけ-------許す。」
玲「-----っ!!」
(-----うおっ!)
思い切り表情を緩ませる玲くん。
なんだその満面の笑顔は・・・
うちの蛍光灯の10倍は輝いてるぞ。
つい1分前に二度と信じないと誓ったばかりだってのに・・・
あまりの可愛さにうっかりクラクラ--
してる場合じゃない!
「そ、それともう一つ!条件がある!」
玲「良かった・・・許してくれてありがとう。」
「いいか良く聞け!今後一切エロいことはしない!これだけは全力で死守しろ!じゃないと--」
玲「ねぇ透ちゃん。」
「おいコラ聞いてんのか!大事なこと言ってんだぞ!」
玲「・・・一つ、聞いてもいい?」
「えっ---?」
玲「・・・・・・。」
「な、なんだ?」
話を途中で遮られた。
そして改めて姿勢を正す玲くん。
ついでにこれまた真剣な目で見つめてくる。
玲「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
玲「・・・・・・。」
「・・・?」
な、なんだ?
玲「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
玲「・・・・・・。」
「あ、あの・・・玲くん?」
じーっと目を合わせたまま何も話さない。
そんなに言いにくいことなのか?
頑張れ玲くん。
言いたいことがあるならバシッと--
玲「・・・ごめん、やっぱり今度でいい。」
「え・・・」
こ、今度?
え、今度にするの?
玲「・・・はぁ‥」
「・・・・・。」
スッと目を逸らし、熱いため息を一つ。
そして切なげに眉を寄せてしまった。
(・・・な、なにそれ。)
まるで愛の告白を終えた乙女のようだ。
いやいや乙女は置いといて
(き、気になるんですけど・・・)
あれだけもったいぶっておいてそりゃないだろ。
気になるぞ。
すっごく気になる。
玲「透ちゃん・・・」
「な、なんだ!」
やっぱり言う気になったか!?
思わず身を乗り出した。
玲「泣かせちゃったり約束破ったり・・・今日は本当にごめんなさい。」
「え?あ、あぁ・・・うん。」
玲「お詫びにはならないと思うけど・・・今度ご飯でもご馳走させてね。」
「え、いや、別にそんな--」
玲「・・・・・。」
「わ、分かった。」
無言の圧力に思わず頷いてしまった。
玲「それじゃ・・・そろそろ帰るね。」
「え?」
帰る?
え、帰るの?
玲「・・・・・。」
「あ、いいよ、そのままにしてて。」
玲「ううん、ご馳走様でした。」
「い、いいえ。」
コーヒーカップを台所に持って行く玲くん。
偉い、さすが王子。
・・・じゃなくて!
玲「じゃぁ、また。」
カップを片付けた後、真っ直ぐ玄関に向かった玲くん。
どうやら本気で帰るらしい。
いや、別に帰らないで欲しいわけじゃないぞ。
ただ・・・
なんだか拍子抜けするというか・・・ねぇ?
玲「鍵、すぐ閉めてね?」
「へ?」
玲「女の子の一人暮らしなんだから。ちゃんと用心して?」
「わ、分かった。」
散々悪さした奴が何言ってんだ。
なんて思ったが口には出せず・・・
玲「お休み、透ちゃん。」
更にはなぜか憂いを帯びた笑顔を向けられて
ポンポンと頭を撫でられた。
「お、お休み・・・」
玲「・・・うん。」
そうして
---バタン
玲くんは帰って行った。
「・・・・・・。」
バタンと閉まった玄関を見つめ
しばらくの間ポカンと放心。
だって・・・
「え、えぇ・・・」
な、なんだったんだ一体・・・
喜んだり落ち込んだり
挙句の果てにはあんな顔見せやがって・・・
(気になるじゃないか・・・)
もしかして私、なんか悪いことしたか?
いやいやしてない。
悪さしたのは玲くんの方だ。
そういや前にもこんなことがあったような・・・
あぁアレだ、晋ともめた時だ。
ったくなんなんだよあいつら。
人を振り回すのもいい加減にして--
「・・・・・・。」
ま、あいつらのことなんかどうだっていい。
「・・・風呂入って寝よ。」
ガチャリ、と鍵を閉める。
そして
しーんと静まり返るリビングに戻った。
・・・・・GAME「約束」完
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