約束

約束 15 ~GAME






「やっぱり・・・透ちゃんと忍くんってそういう関係だったんだ。」

透「---ぇっ」

「そうだろうなとは思ってたけど。」

透「へ---?」






居心地の悪い沈黙を破ったのは

色の無い自分の声だった。






「まぁ、2人がどういう関係だったかなんて興味は無いけどさ。」

透「・・・・・。」

「でもさすがに・・・あのタイミングで間違えられたら、ねぇ?」

透「-----。」






たまに聞くよね。

エッチの最中、元彼だとか浮気相手だとか
自分じゃない男の名前を呼ばれた、なんて悲しい話。


それが原因でケンカしてそのまま別れちゃう人もいるらしいし

「名前を間違える」のは恋人同士にとって大事件なんだと思う。

まぁ、俺と透ちゃんはそういう関係じゃないけど。



でも・・・






「忍くんとは恋人同士だったの?」

透「え?」

「それとも体だけの関係?」

透「ぇ、な、なに---?」






確かに俺達は恋人同士じゃないし
さっきも言ったけど2人の関係に興味は無い






けど、名前を間違えられたのはショックだった。






なんでって





そりゃまぁ・・・個人的なことだよ。

嫌なことを思い出したっていうか
過去の古傷をグリグリえぐられたというか





とにかく





自分の中の「優しさ」が消し飛ぶ程度には







イラッとした。







透「え、あ、あの玲くん・・・なに、なにやってんの?」






質問に応える気はないんだろうか。

目をぱちぱちやりながら透ちゃんが恐る恐る聞いてくる。



ていうかなにやってんのって

そんなの見れば分かるだろ。






「ベルト外してるの。」

透「え。」






まるで幽霊にでも遭遇したかのように
透ちゃんがビシッ!と固まった。







透「あの玲くん・・・もしかして怒ってる?顔が怖---え、ちょっと---!?」






焦る透ちゃんを見つめながら体を起こす。

そしてシャツを脱ぎ、そのまま下も脱ぎ捨てた。

ついでにエッチの常識、コンドーさんを取り出し手早く装着---


完了。






透「え!いやいやちょっと---!」






どうやら本気で危機を感じたらしい。

顔色を変えて逃走を図り出した。

でも







逃がすと思ってるの?







透「う、ぁ---っ!?」






細い肩をソファーに押さえつける。

そして強引に足を開き

痛いほどに反り立った自分自身を



濡れた割れ目にグッと押し付けた。






透「ぁっ!」

「・・・・・。」

透「ぇ---ぁ・・な、に・・っ!?」

「・・・・・。」






---クチュクチュ

愛液を絡み付けるように入り口を抉ると腰を跳ねさせながら透ちゃんが驚きの声を上げる。

なんでこんなに感じるのって顔してるね。

まぁ、散々焦らしたからさ。
この程度の刺激でもすごいだろ?






透「れ、玲くん待って---!なんか--変っ・・・!」

「本当は・・・求めてくれるまで待つつもりだったんだけどね。」

透「えっ---ぁ!」

「悶えてる透ちゃんは可愛かったし。出来れば優しくしてあげたかったけど。」

透「ゃ---れ、玲く・・・んっ!」

「でももう、やめた。」

透「ぁ--あっ!ゃめ---!」






こんなに濡らしてるくせにまだ強がるらしい。

どうにか逃れようと必死に俺の手首を掴んでくる。






でもそんな抵抗、無駄な足掻きだ。






「ねぇ透ちゃん。俺は---忍くんじゃないよ。」

透「えっ---」

「だから・・・ちゃんと分からせてあげるね。」

透「---!?」






逃げようと捩れる腰を引き寄せて
物欲しそうにヒクつくソコに狙いを定める。

そして一気に







奥まで腰を突き入れた。







透「ゃ---ぁ、あぁぁっ!!」

「・・・、・・」

透「ぁっ---ゃ、だ・・・ぁ!」

「・・・・っ・・」






突然の刺激に驚いたのか
それとも無意識に体が悦んでるのか

ソファーの端を掴み、いやらしく背中を仰け反らせる華奢な体。

そして拒否の言葉とは裏腹に、もっとちょうだいとでも言うようにギチギチ締め付けてくる。






「すごい・・・吸い付いてくるよ。そんなにイイの?」

透「ゃ、---ぁ・・っ!」

「ちょっと待ってね・・・」

透「ぁ---っ」

「ほら、ココだよね?透ちゃんの好きなとこ。」

透「ゃ、あぁっ---!」






コツン、と奥の壁を突き上げる。

確認するようにソコを擦ると悲鳴のような甘い声が返ってきた。

何度も言うけど散々焦らしたからね。
これだけでイきそうなくらい気持ちいいだろ?






「それにしても・・・透ちゃんって感じやすい体してるよね。」

透「ゃ、ゃめ、ろ---っ」

「元々感じやすかったのかな。それとも忍くんに教えてもらった?」

透「っ!」





ハッと我に返ったようにこっちを見上げてくる。

なにその反応・・・

それってつまり正解ってこと?






「忍くんにはどんな風に抱かれてたの?」

透「・・・・・。」

「優しかった?それとも激しかった?」

透「-----っ!」






ヒュッと息を呑む透ちゃん。

そして思い切り眉を潜め、唇をきゅっと噛み締めた。






それにしても・・・






こんな質問するなんて
つくづく俺って大人気ないと思う。






でも仕方ない。






今はとことんイジワルしたい気分。






「透ちゃんは優しいのと激しいの、どっちの方がすき?」

透「っ・・・」

「分からない?それじゃあどっちも試してみよっか。」

透「---ぇ、・・」

「いっぱい気持ちよくしてあげるからね。」

透「ちょっと待って・・・玲くんやめ---ぁ----んぅっ!」





ゆっくりと自身を引き抜き
そして再びゆっくりと割り入っていく。

まずはじわじわと犯すように

透ちゃんを抱いてるのは俺だと刻み付けるように





「こら、顔逸らしちゃダメ。」

透「ぁ、あぁ---っ!」

「ちゃんと俺のこと見てて?忍くんのことはしばらく忘れてよ、ね?」

透「----っ!」






意識させるようにワザと忍くんの名前を出す。

意地が悪いって?

そうだよ。
イジワルしてるんだから。






(・・・ん?)






なんだろう。

ふと・・・妙な違和感。


忍くんの名前を出すと透ちゃんがビクッと体を強張らせる。

その反応がなんというか・・・

何か怖がってるように見える、ような気がする。






まぁ・・・気のせいだと思うけど。






「ほら、ちゃんと顔見せて?この手は・・・邪魔。」

透「ゃだ---やめ・・ぁあっ!」

「ほんと、透ちゃんって感じやすいんだね。」

透「動く、な---!」

「中も熱くて柔らかくて・・・すっごく気持ちいい。」

透「ぁ、---んんっ!」

「---!」






透ちゃんの好きな部分をグリ、と擦る。

すると今までとは違う激しい反応が返ってきた。






「イきそう?」

透「ぁ、ぁっ---ソコ、ゃだ---っ」

「いいよ、それじゃあ・・・イかせてあげるね。」

透「嫌---ぁっ!?」






濡れた結合部に指を滑らせる。

そしてすぐ側にある小さな突起を空気に晒し
寒そうにヒクヒク震える敏感なソレを






根元から舐めるように撫で上げた。







透「ぅ、ぁッ--あぁ------っ!!」

「----っ、・・」







透ちゃんの体がビクン、と震える。

そして白い首筋を弓なりに反らし

中を激しく痙攣させた。






透「はぁっ、ぁ---ん・・!」

「っ・・・」






(きつ・・・)






そんなに良かったのか、呼吸も切れ切れに俺を締め付けてくる。


あれ、もしかして恥ずかしいのかな。

手の甲で目元を覆い、隠れるように顔を逸らしてしまった。






「・・・イッちゃったね。」

透「っ、ゃ・・・」

「嫌なの?でも透ちゃんのここ、ビクビクしてるよ。」

透「ゃッ---!待っ--て!」

「やだ、待てない。」

透「ぁ---んっ!」






落ち着く暇なんて与えない。


耳元に唇を寄せると逃げるように体を捩らせる透ちゃん。

これだけで反応しちゃうなんて・・・
あまりの感度の良さに無意識に口角が上がってしまう。









けど









俺は馬鹿だった。









調子に乗れば痛い目に合う、なんてよく言うけど

この時の自分は見事にそれだったと思う。









もしこの時、あんな質問を投げなければ










これ以上苛めるのは止そうと踏み止まっていれば










きっと、俺の運命は変わっていたと思う。










でも---










「ねぇ透ちゃん、どっちがいい?」

透「---ッ、ぇ?」















「忍くんと俺、どっちの方が気持ちいい?」

透「---っ!」















この時の俺はただただ透ちゃんをイジメたくて・・・











何も考えず意地悪な質問を投げつけて











嫌がる透ちゃんの手を掴み、強引に顔を覗き込んだ。











「ねぇ、透ちゃ------っ!」












思わず、言葉を呑んだ。









なぜなら目の前の透ちゃんの表情が

想像してたのとあまりにもかけ離れていたから。








「え・・・?」








たとえ文句を言いたげに睨んでいたとしても
悔しそうに唇を噛み締めていたとしても

少なくとも快感に揺れた艶やかな表情を浮かべてると思ってた。








でも、違った。








怯えるように寄せられた眉根
震えを耐えるように固く結ばれた唇








そして俺を見上げる透ちゃんの目には








今にも零れそうなくらい涙が溜まってて・・・









(な、なんで・・・?)









あまりの衝撃に








周りの空気が凍りついたような気がした。









「透ちゃ--」

透「玲く、ん--」

「----あ、あの・・」

透「頼む・・」

「・・?」














透「あいつのことはもう-- 聞かないで・・・」














(え・・・)










なぜか、ドキッとした。









嫌な予感が当たりそうな気がするっていうか・・・

妙に心がざわついて鼓動がどんどん速くなっていく。









「なんで・・・なんで聞いちゃダメなの?」










(あ---)







なんだかヤバイ気がする。

その答えは・・・
聞いたらいけないような気がする。







透「---ぃ・・」

「え・・・?」

透「・・怖、い---」

「----っ!」








心臓が鈍い音を立てた。








そして追い討ちをかけるように

透ちゃんの目から涙が零れ落ちた。









(ウソ、だろ・・・)









これはさっきの可愛い涙とは違う
昨日の夜、忍くんに謝りながら流した涙とも違う








この涙はあれだ。









軽い気持ちで触れたらダメなやつだ。









「透ちゃん・・・」










俺は、馬鹿だ。









幼馴染だって言ってたし
アルバムの中ではお互い笑い合ってたし

たとえ体の関係があったとしても

透ちゃんと忍くんは普通の幼馴染なんだと思ってた。







でも、これは違う。







怯えるような透ちゃんの様子
そして忍くんに対する「怖い」という感情

どう考えてもこれは









普通じゃない










「透ちゃん・・・」










一体・・・










忍くんと何があったの---?