約束

約束 08 ~GAME





体の温度がぐんと上昇
中でも特に顔へと熱が集中

クリアだった視界は徐々にゆがみ
まるで水の中の世界のようにグラグラ揺れ出す。






さて、ここで問題だ。

この現象が何を意味するか分かるか?






それはね






気を抜いたら最後、涙がポロリ--









玲「えっ・・・」








恐らくビックリしたんだろう。

すぐそこにある玲くんの目が落っこちるんじゃないかってくらいまん丸になった。






「あ、あれ・・・」






ちなみに驚いたのは玲くんだけじゃない。
私も同じだ。


基本、私は人前では泣かない。

理由?

そんなの恥ずかしいからに決まってんだろ。
泣き顔だけは意地でも見られたくない。






「・・・い、いてて。コンタクトがずれたかも。」






とりあえずコンタクトのせいにした。

下を向き、痛がるフリしながらささっと袖で水滴を回収。



ちなみに私のようなタイプは決して「泣いている」ことを認めない。

わざとらしかろうがなんだろうが意地でも「泣いていない」を貫き通す。

余談だが私はコンタクトなんかつけていない。
昔から視力だけは常に良をキープしている。







いやいやそんなことはどうだっていい!






(どど、どうしよう・・・!)






無意識に握り締めた手に力が入る。




だって熱い、顔が燃えるように熱い。




それにどうすりゃいいのこれ。

拭いても拭いても溢れてくる
眉間に力を込めても溢れてくる

涙の止め方が分からない!







(くっそ・・・止まれ、止まれ!)







それもこれも







全ては「大丈夫」のせいだ。







勝手な勘違いだって分かってる。

自分に都合よく解釈してしまったってのも分かってる。

でも---







すごく嬉しかった。







張り詰めてた心をふわりと包まれたような

まるで優しく温めてもらえたような気がして・・・







(・・・・・・・・。)







ダ、ダメだ。

思い出したらまた涙が--








玲「透ちゃん・・・」

「!」






(ヤ、ヤバイ・・・)






ものすごく気まずそうな声が降って来た。

分かる、分かるぞ。
私もかなり気まずい。

でもごめんな玲くんもうちょっと我慢して。
今すぐこいつを止めるから!






玲「透ちゃん・・・」

「・・・・・・。」

玲「・・・ごめんね。」

「・・・、・・?」






え・・?






「・・・なに謝ってんだよ。玲くんは何も悪くない。悪いのはコンタクトだ!」






そう言いたいのはやまやまだ。

だが・・・ごめん。

涙のせいで喋れません。






(-----!)






何のアクションも返せず黙ってると
さっきと同様、ふわりと頭を撫でられた。



遠慮がちに触れてくる大きな手。

それは何度か後頭部を往復。

そしてゆるゆると髪を弄び、乱れた横髪を耳に掛けた。






(ぅっ・・・うぅ---!)






人の体温って、怖い。


普段は36度ちょっとのただの熱なのに

こういう時はガンガン誘ってくる。


そう・・・








涙を!








「ご、ごめ・・大丈夫、だから・・・」






なんとか声を引っ張り出す。

--大丈夫だから撫でるのはやめてくれ

その意味を込めて玲くんの手をそっと振り払った。




しかし--






(や、やめてー!)






玲くんのなでなでが止まらない。


それどころか綺麗な指が頬に触れ
優しくふわっと包みこまれた。

そしてそのまま、導くように上へ誘導--







(あれ・・・)









突然、視界が一変した。









「え---」









顔を隠す暇なんて無かった。






気付けばすぐ目の前に綺麗な王子の顔。






おそらく涙にショックを受けたんだろう。

切なそうにきゅっと眉根を寄せ
ばっちり濡れてる目元に指を滑らせてくる。




---泣いてる女は放っておけない




確かに玲くんってそういう奴だよな。

しかもこんな男子な私にも優しくしてくれるなんて

君ってやっぱりイイ奴だね。








だがしかし

今の私に優しさを受け止める余裕は無い。








---泣き顔見られた!








これはもう

今年一番の大事件である。








「あ、あ、あの!!ここ、これは涙じゃなくて---!」

玲「透ちゃん・・」

「だだだからえとっ---!そ、その前にちょっと離れて--」








(-----!?)








玲くんはきゅっと目を細め

もう一度「ゴメン」と呟いた。








「え---?」








そして次の瞬間








柔らかな唇を押し付けてきた。