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香「やだやだ帰らない!まだ透と一緒にいるー!」
直「か、香織さん?」
「ど、どしたのお前。」
午後7時
ボスと仲良くなろうツアーも終盤。
そしてそろそろ帰るかと切り出したところ
香「今日は帰りたくない。ずっと透といたいの。」
何を思ったのか
まるで恋人を引き止める彼女のように香織がダダをこね出した。
「何言ってんだよお前。明日早いんだろ?」
香「早いけどいいの!透と一緒にいる!」
司「ワガママ言ってんじゃねぇ。ほら、飴やるからよ。」
香「そんなのいらない!透がいなきゃダメなの!!」
「か、香織・・・!」
なんて可愛いヤツなんだお前。
熱い告白にうっかり抱きしめてしまいそうになった。
だが聞けば明日は彼氏とプチ旅行で5時起きらしい。
結局、暴れる香織を直樹に託し
ボスツアーはお開きになった。
「それじゃ、今日はありがとな。」
「こちらこそ。」
そして現在午後7時半
ここは我がマンションの公用駐車場。
夜道は危ないでしょってことで玲くんが車で家まで送ってくれた。
さすが王子、紳士だよね。
「わざわざ送ってもらって悪かったな。玲くんも気をつけて帰れよ?」
「うん。」
「じゃ、またな。」
「うん。」
(あー、疲れた・・・)
さすがに体力の限界。
なんせ昨日は帰るのが遅かったし記憶がなくなるまで飲んだからな。
気分的にはガッツリ飲みに出たいけど・・・
体力的に大人しく家で過ごそうと思う。
そうだ、溜め込んだDVDでも見るか。
そんな健全な夜のプランを思い描きながらドアノブを引く。
そしてよっこいしょと車から降りた。
いや
降りようとした。
「・・・玲くん、送ってくれてありがとう。」
玲「うん。」
「じゃあな。」
玲「うん。」
「・・・・・。」
いやいや・・・
うん、じゃなくて
「・・・あの、玲くん?」
玲「うん?」
「・・・ドアが開かないんですけど。」
玲「・・・うん。」
引いてみる
押してみる
うーん、やはり開かない。
「・・・ロックしてんの?」
玲「・・・うん。」
「嫌がらせか?」
玲「ううん。」
「じゃあなんだ。気まぐれか?」
玲「・・・・・・。」
「?」
(な、なんだ・・・?)
なぜか悩まし気に俯いてしまった玲くん。
しかもなぜかハンドルをきゅっと握りしめた。
「玲くんどうした?もしや悩み事でも--」
玲「あの!」
「おっ!?」
突然、玲くんが叫んだ。
「なな、なんだ!?」
玲「え、えっと、あの---」
「・・・・?」
玲「その--------忘れ物!」
え?
玲「あの・・・えっと・・・」
「・・・?」
玲「そういえば今朝・・・透ちゃんの家に忘れ物しちゃって・・・」
「へっ?」
だんだん声が小さくなっていく。
そしてなぜだろう。
明らかにソワソワしている。
ていうか忘れ物?
私の家に?
玲「・・・今から取りに行ってもいい?」
「・・・・・。」
玲「・・・ダメ?」
「-----。」
ちらりと遠慮がちに視線を寄越す。
そしてじーっと目を見つめてくる。
(え、えぇ・・・)
何やってんの玲くん。
めちゃくちゃ可愛いんですけど。
「・・・・・・。」
玲「あの・・・」
その潤んだ目はまるで捨てられた子犬。
そんな目で見つめられて「ダメ」と言える薄情者がいるだろうか。
いやない。
じゃなくて
「---ぷぷ!」
玲「えっ?」
うっかり噴き出してしまった。
「それって私の必殺技だろ?」
玲「えっ」
「本当は忘れ物なんかないくせにさ。まだ遊び足りなかったのか?」
玲「・・・ばれた?」
「ばればれ。」
なんでばれたんだろ、なんて言いながら恥ずかしそうにはにかむ玲くん。
うーん、可愛い。
「あーあ、参ったなぁ・・・」
玲「え?」
玲くんのこういう一面ってほんと憎めない。
無邪気って表現すればいいのか?
とにかく、妙に心をくすぐられてしまう。
まあ、それはひとまず置いといて
「・・・来るか?」
玲「え?」
「家。」
玲「え!いいの?」
少し迷ったが誘ってみることにした。
言っておくが玲くんが可愛いからじゃないぞ。
簡単に男を家に上げたらダメだと今朝反省したばかりだし玲君はその張本人。
本来なら即却下だ。
ただ今日は
まだ独りになりたくないっていうか・・・
「・・・まぁ、明日も休みだからな。茶くらいなら出してやる。そうだ、ゲームでもやるか!」
玲「ゲームはやらないけど行く。」
「・・・やらないのかよ。」
玲「へへ、嬉しい。」
「は?」
玲「透ちゃん、ありがとう。」
「---!」
(ぐぁっ---!)
辺りはこんなに真っ暗なのに
なぜか玲くんの周りが光り輝いたような気がした。
そして、でた・・・
兵器・王子スマイル
(や、やめろ・・・)
ただでさえ可愛いくせに笑うと更に可愛くなるとは・・・
おいコラそんな顔で私を見るな。
あっち向いてろ--
(はっ・・・!)
「ちょ、ちょっと待て!家に来る前に一つ条件がある!」
玲「条件?」
うっかり玲くんエアーに呑まれてる場合じゃない。
どんなに可愛いかろうが無邪気だろうが
これだけは絶対に譲れない。
「いいか、玲くん!」
玲「ん?」
「変なことはしない!」
玲「え?」
「これが約束できないなら我が家への訪問は無しだ!」
玲「変なことって?」
「そりゃお前・・・あんなこととかそんなこととか--」
玲「うわ、透ちゃんのエッチ。」
「・・・。」
お前が言うな。
玲「まぁでも・・・今日は大人しくしてる。」
「は・・・」
玲「まだ透ちゃんと一緒にいたいからさ。」
「え。」
玲「だから約束する。変なことしない。」
「そ、そっか。」
玲「うん。」
まだ私と一緒にいたいだと?
(・・・・・。)
くっそ---
可愛いこと言いやがって!
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