トラブル×トラブル

トラブル×トラブル 07 ~GAME







「ちょ---透ちゃん!もう飲んだらダメ!」







行きつけの店なんだろうか。


Blue Hawaiiと雰囲気の似た感じのいいBar。

そこに入った透ちゃんは案内も受けずカウンターに座り

慣れた様子で「アレくれ」と注文した。







(え・・・!)







そして出てきたアレにビックリ。

だって店員さんの手には小さなグラスが1つと








怪しげなボトルが2本。








「こ、これ飲むの?」
透「あぁ。」
「2本とも?」
透「そうだぞ?」







何か問題でも?って顔してるけど大事件だよ。

だってこれ全部飲むって有り得ない。
一体何を目指してるの透ちゃん。







透「じゃ、改めて---乾杯!」
「か、乾杯。」







しかし俺の心配なんか露知らず、透ちゃんは度数の高いソレをグイグイ飲み出した。

それはもう・・・







スポーツドリンクを飲むように。







透「---このっ・・おいコラ返せ!」
「ダメ!もう十分飲んだでしょ!いい加減帰るよ!」
透「何言ってんだ!まだまだ飲むに決まってんだろー!」







飲み始めてから一時間。



よっぽど酒に強いんだろう。

主にボスについて世間話をしているうちに透ちゃんはボトルを2本開け放っていた。

そして休む間もなく次の酒に手を伸ばし始めた。



顔色的に酔ってはないと思う。

言動もしっかりしてるし目もちゃんと開いてるから。





でも、さすがにこれ以上はマズイと思う。

確実に体調が悪くなる気がする。





それに酔っぱらって潰れられても困るよ。
せっかくの計画が台無しになっちゃう。







透「聞いてんのかコラー!返せって言ってんだろー!!」
「え、わっ!?落ちる!落ちるって!」







というわけで・・・

とりあえず隙を見て透ちゃんから酒を取り上げてみた。





だけどよっぽど気に食わなかったんだろう。

酒を取り戻そうととんでもパワーで掴みかかってきた。



でも絶対返さないからね。

これ以上飲ませるわけにはいかない!







「いい加減にしなさい!いくらなんでも飲みすぎでしょ!」
透「う、うるせぇほっといてくれよ!それに止めないって約束したじゃないか!」
「そ、それは、その---」
透「あれ?してなかったっけ?」
「・・・・・。」







え?







透「ちょっと待て・・・約束した?いや、してないような・・・」
「・・・・・。」
透「あれって夢だったっけ?」
「・・・・・。」







顎に手を当てうんうん唸る透ちゃん。

どうやらついさっき交わした会話を忘れてしまったらしい。








ていうか透ちゃん?








もしかして、酔ってるの?








(・・・・・・。)








いやいやどう考えても酔ってるでしょ!

顔色全然変わってないのに酔ってるよこの人!







透「とにかく、玲くん。まだ帰るわけにはいかんのだよ。」
「・・・なんで?」
透「なんでって・・・酔ってないからに決まってんだろ!」
「十分酔ってるじゃん!」
透「うるせぇそれ返せ!潰れるまで飲むんじゃー!」
「な、何言ってんの!ダメ!」
透「ダメってお前っ----くっそぉぉ!なんだってんだよー!!」
「・・・・・。」







カウンターをバンバン叩いて悔しがる透ちゃん。

なにそれすっごく面白い。








いやいやそうじゃなくて!








(ウソ、だろ・・・)








なんなのこの状況・・・

さっきまでこのあと透ちゃんと、なんてウキウキしてたのに。

甘い夜?
大人の時間?

一体どこに消えてしまったんだろう。
もはや甘さのかけらすら見当たらない。







(と、とにかく---!)







今はお酒と透ちゃんを引き離さなくちゃ・・・

じゃないとこの人---







リアルに倒れる!!








『あれあれ透さん。今日は随分荒れてるっすね!』
透「・・・うるせぇなぁ。」
『それに---はっ!誰すかこのイケメンは!まさか透さんの彼氏!?』
透「違うに決まってんだろ。こいつはケチんぼ王子だよ。私から酒を取り上げるんだ!」
『うーん、これだけ飲めば仕方ないっすよ!』
透「チッ、お前もグルかよ。」
「・・・・・。」







店員の一人が透ちゃんに話しかけてきた。

随分親しい間柄みたいだけど・・・
やっぱり良く飲みに来るのかな。







『あの、今日はありがとうございました!こちら、お釣りっす!』
「え?あ、ありがとう。」
『こちらこそありがとうございました!また是非寄ってください!』
「うん。」







そういえば会計を済ませたんだった。

すっかり忘れてた。







透「あれ、玲くん帰んの?気を付けてな。」
「透ちゃんも帰るよ!」
透「は?私はまだ帰らな---ちょ、何すんだコラ!放せぇぇ!!」
「大人しく言うこと聞きなさい!」
『ぷ、ぷぷー!』







強引に持ち上げると豪快に暴れだした透ちゃん。

その様子がよっぽど可笑しかったのか。
店員さんに思い切り笑われてしまった。





でも今はそんなの気にしてられない。





思いきり抵抗する透ちゃんを引きずり、たまに抱えて出口に向かう。







『あ、ありがとうございましたーっ!ぷぷ!』








(あー、もう・・・!)








遠慮のない笑い声を背中に受けながら









暴れる透ちゃんを抱えて店を出た。









(なんなのこの展開・・・)









ほんと、もうヤダ・・・!