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「ちょ---透ちゃん!もう飲んだらダメ!」
行きつけの店なんだろうか。
Blue Hawaiiと雰囲気の似た感じのいいBar。
そこに入った透ちゃんは案内も受けずカウンターに座り
慣れた様子で「アレくれ」と注文した。
(え・・・!)
そして出てきたアレにビックリ。
だって店員さんの手には小さなグラスが1つと
怪しげなボトルが2本。
「こ、これ飲むの?」
透「あぁ。」
「2本とも?」
透「そうだぞ?」
何か問題でも?って顔してるけど大事件だよ。
だってこれ全部飲むって有り得ない。
一体何を目指してるの透ちゃん。
透「じゃ、改めて---乾杯!」
「か、乾杯。」
しかし俺の心配なんか露知らず、透ちゃんは度数の高いソレをグイグイ飲み出した。
それはもう・・・
スポーツドリンクを飲むように。
透「---このっ・・おいコラ返せ!」
「ダメ!もう十分飲んだでしょ!いい加減帰るよ!」
透「何言ってんだ!まだまだ飲むに決まってんだろー!」
飲み始めてから一時間。
よっぽど酒に強いんだろう。
主にボスについて世間話をしているうちに透ちゃんはボトルを2本開け放っていた。
そして休む間もなく次の酒に手を伸ばし始めた。
顔色的に酔ってはないと思う。
言動もしっかりしてるし目もちゃんと開いてるから。
でも、さすがにこれ以上はマズイと思う。
確実に体調が悪くなる気がする。
それに酔っぱらって潰れられても困るよ。
せっかくの計画が台無しになっちゃう。
透「聞いてんのかコラー!返せって言ってんだろー!!」
「え、わっ!?落ちる!落ちるって!」
というわけで・・・
とりあえず隙を見て透ちゃんから酒を取り上げてみた。
だけどよっぽど気に食わなかったんだろう。
酒を取り戻そうととんでもパワーで掴みかかってきた。
でも絶対返さないからね。
これ以上飲ませるわけにはいかない!
「いい加減にしなさい!いくらなんでも飲みすぎでしょ!」
透「う、うるせぇほっといてくれよ!それに止めないって約束したじゃないか!」
「そ、それは、その---」
透「あれ?してなかったっけ?」
「・・・・・。」
え?
透「ちょっと待て・・・約束した?いや、してないような・・・」
「・・・・・。」
透「あれって夢だったっけ?」
「・・・・・。」
顎に手を当てうんうん唸る透ちゃん。
どうやらついさっき交わした会話を忘れてしまったらしい。
ていうか透ちゃん?
もしかして、酔ってるの?
(・・・・・・。)
いやいやどう考えても酔ってるでしょ!
顔色全然変わってないのに酔ってるよこの人!
透「とにかく、玲くん。まだ帰るわけにはいかんのだよ。」
「・・・なんで?」
透「なんでって・・・酔ってないからに決まってんだろ!」
「十分酔ってるじゃん!」
透「うるせぇそれ返せ!潰れるまで飲むんじゃー!」
「な、何言ってんの!ダメ!」
透「ダメってお前っ----くっそぉぉ!なんだってんだよー!!」
「・・・・・。」
カウンターをバンバン叩いて悔しがる透ちゃん。
なにそれすっごく面白い。
いやいやそうじゃなくて!
(ウソ、だろ・・・)
なんなのこの状況・・・
さっきまでこのあと透ちゃんと、なんてウキウキしてたのに。
甘い夜?
大人の時間?
一体どこに消えてしまったんだろう。
もはや甘さのかけらすら見当たらない。
(と、とにかく---!)
今はお酒と透ちゃんを引き離さなくちゃ・・・
じゃないとこの人---
リアルに倒れる!!
『あれあれ透さん。今日は随分荒れてるっすね!』
透「・・・うるせぇなぁ。」
『それに---はっ!誰すかこのイケメンは!まさか透さんの彼氏!?』
透「違うに決まってんだろ。こいつはケチんぼ王子だよ。私から酒を取り上げるんだ!」
『うーん、これだけ飲めば仕方ないっすよ!』
透「チッ、お前もグルかよ。」
「・・・・・。」
店員の一人が透ちゃんに話しかけてきた。
随分親しい間柄みたいだけど・・・
やっぱり良く飲みに来るのかな。
『あの、今日はありがとうございました!こちら、お釣りっす!』
「え?あ、ありがとう。」
『こちらこそありがとうございました!また是非寄ってください!』
「うん。」
そういえば会計を済ませたんだった。
すっかり忘れてた。
透「あれ、玲くん帰んの?気を付けてな。」
「透ちゃんも帰るよ!」
透「は?私はまだ帰らな---ちょ、何すんだコラ!放せぇぇ!!」
「大人しく言うこと聞きなさい!」
『ぷ、ぷぷー!』
強引に持ち上げると豪快に暴れだした透ちゃん。
その様子がよっぽど可笑しかったのか。
店員さんに思い切り笑われてしまった。
でも今はそんなの気にしてられない。
思いきり抵抗する透ちゃんを引きずり、たまに抱えて出口に向かう。
『あ、ありがとうございましたーっ!ぷぷ!』
(あー、もう・・・!)
遠慮のない笑い声を背中に受けながら
暴れる透ちゃんを抱えて店を出た。
(なんなのこの展開・・・)
ほんと、もうヤダ・・・!
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