トラブル×トラブル

トラブル×トラブル 04 ~GAME





香「あー!司くんだー!」
司「よぉ香織。」







どこへ行ってたのか、やっと戻ってきた香織ちゃん。

直樹くんと二人で司くんを挟むように座り
可愛らしくカンパイのグラスを合わせた。







「香織ちゃんと司くんって仲良しなんだね。」
香「うん!かれこれ付き合い長いよね!高校からの知り合いだし!今でもしょっちゅうボスに会いに行くし!」
司「そうだな。」
「ふーん。司くんって透ちゃんと何歳離れてるの?」
司「・・・・・。」

「・・・ボスってすごく可愛いよね。今まで出合った猫の中でダントツ。」
司「・・・二歳違い。」







しぶしぶ答えてくれる司くん。

本当は嫌なのに猫が絡むとついつい反応してしまう性格らしい。







直「あ、そうだ!ボスといえば・・・司って次の休みはいつ?」
司「休み?明日だけど。」
直「明日か・・・皆さん、明日の予定はどうですか?」
司「は?」







急に予定確認を始める直樹くん。

それってもしかしてボス面会ツアーの予定合わせ?







透「私は明日でもオッケー。」
香「私も!」
直「玲さんはどうですか?」
「え?俺も大丈夫だけど・・・」
直「それじゃ司。明日皆でボスに会いに行ってもいい?」
司「は・・・」







驚く司くん。

そりゃそうだよ。
あまりにも急な話だからね。






でも次の瞬間---

司くんは俺をジーッと見つめてきた。






これってアレかな。
お前も来るのかよ的な視線かな。







「・・・ボスってすごく綺麗な毛並みだよね。触ったら気持ち良さそう。」
司「・・・一回触るとやみつきになる。」







まるで野良猫並みの警戒心を見せる司くん。

なのに威嚇しながらもボスの話題には律儀に返事をくれる。
なんだかちょっと面白い。







透「いい加減にしろよ司。玲くんは私の友達だぞ。失礼な態度を取るな。」







透ちゃんが司くんを睨みつける。

面白かったから別に構わないんだけどね。
それに実際、警戒されても仕方ない存在だし。







司「友達だと?寝ぼけたこと言ってんじゃねぇよ透。こういうヤツに限って"友達"のフリして近づいて来るもんなんだ。」







うわぁ・・・司くん、鋭い。







香「王子はそんな人じゃないよ?ねぇ?」
直「うん、優しいし、いい人だし--」
司「お前らは黙ってろ。」
透「ったく・・・お前はほんと昔からイケメンが苦手だよな。」
司「は?」






え。






透「何かトラウマでもあるのか?もしや大好きなあの子をイケメンに取られた過去でも?」 
司「・・・・・。」
透「まあ、何があったか知らないけど玲くんに八つ当たりするのはやめろ。イケメンに生まれたのは玲くんのせいじゃない。」
司「・・・・・。」
香・直「・・・・・。」






う、うわぁ・・・
透ちゃんって鈍い。






透「とにかく明日は休みなんだろ?何か予定入ってるのか?」
司「・・・昼からなら大丈夫。」
透「そっか。じゃあ昼からお前の家に行くぞ?」
司「・・・分かった。」
香「やったー!」
直「良かった。」
「俺も行っていいの?」
司「・・・。」
「ありがとう司くん。」






軽く頷いてプイッと顔を逸らす司くん。
それを見て軽く微笑む透ちゃん。

鋭かったり鈍かったり
ツンデレだったり猫好きだったり

顔は似てないけどどことなく似てるっていうか・・・

なんだかこの姉弟って面白い。











いやいやちょっと待って。

のん気に姉弟観察してる場合じゃない。












「ところで、司くんは何の仕事してるの?」
司「仕事?」







ほとんど強制だけど、透ちゃんのおかげでせっかく司くんが受け入れてくれたんだ。

今夜のためにもここでガンガン距離を縮めておかなきゃ。







司「・・・医者だけど。」
「え、お医者さんなの?すごいね。ちなみに何のお医者さん?」
司「・・・。」

「・・・可愛いボスのご主人様は何のお医者さんなのかな。」
司「・・・外科。ちなみにT大付属病院に勤務してる。」







やっぱり猫が絡むと答えてくれるツンデレな司くん。

しかも聞いてないことまで教えてくれた。

ていうかこんな無愛想で本当にお医者さんなの?

まぁ、世の中には俺様な医者も存在するけど--









(・・・あれ?)









「T大付属病院の外科?」
司「・・・そうだけど。」
「それじゃ、高原晋って知らない?」
司「・・・高原、晋?」
「うん。」







ピクリと反応する司くん。
そして再びジーッと俺を見る。







司「・・・晋さんのこと知ってんの?どういう関係?」
「あ、やっぱり同じ職場だったんだね。俺、晋とは高校以来の友達なんだ。」
司「・・・友達?」
「うん。今も良く会うんだよ。今度会ったら宜しく伝えててくれる?」
司「・・・。」







司くんは再びコクン、と頷いた。

どうやらまた少し距離が縮まったようです。



それにしても---







(晋・・・ナイス!)







ああ見えて晋は優秀なお医者さんだと聞いてる。

少なくとも司くんも少しは晋を尊敬してるんだろう。

明らかに俺に対する視線が柔らかくなった。
持つべきものは俺様な医者だね。







透「ちょ---司っ----お前、晋と知り合いなのか!?」
香「晋ちゃんと司君が同じ職場なんて!すごい偶然だね!」
直「・・・。」
司「晋ちゃんって・・・お前らも晋さんを知ってるのか?」
香「知ってる知ってる!うわーすごいなぁ。外科ってイケメンがたくさんいるんだね!」
透「司と晋に接点が・・・そんな・・・ウソだ、ウソだろ!」
司「?・・・まぁいい。今度挨拶しとこう。」
透「バ、バカやめろ!頼むから刺激を与えないでやってくれ!」
司「は?」







怪訝そうな顔の司くん
ニコニコ嬉しそうな香織ちゃん
なぜか押し黙る直樹くん
そして頭を抱える透ちゃん

うん、なんてまとまりの無い光景。







司「・・・で?」
「えっ?」
司「・・・あんたは何の仕事してんの?」
「お、俺?えっと・・・俺はインテリアデザイナーって仕事してるよ。」
司「・・・インテリアデザイナー?」
「うん。」







(ビ、ビックリした・・・)







司くんが初めて俺に声を掛けてくれた。

話しかけるなんて普通のことなんだろうけど・・・
なんだかとっても嬉しかったりする。







香「そうそう!王子の仕事、詳しく聞きたかったんだ!」
直「この前は途中でお開きになりましたもんね。」
「そ、そうだったっけ・・・えと、仕事の内容は幅広いんだけど。今は飲食店のデザインを手がけることが多いかな。」
香「飲食店のデザイン?それってレストランを作っちゃうってこと?すごーい!」
「作るのはデザインだけどね。」
直「そんな!デザインするなんてすごいですよ!ね、司!」
司「・・・すごい。」
「え!」







つ、司くん!

どうしよう・・・

とんでもなく嬉しいんだけど!







香「王子作のレストラン、この近くにはないの?」
「この近く?そうだなぁ・・・あ、水族館みたいなレストランがあるよ。」
司「・・・へぇ。」
香「素敵!」
透「水族館?それってもしかして・・・店の中心に円柱の水槽が通ってる店か?」
「透ちゃん、行ったことあるの?」







何かを思い出したように手を叩く透ちゃん。

そこってデートに定番のロマンチック系レストランなんだけど・・・

透ちゃんが知ってるなんて意外だな。







透「ちょっと前に晋と行った。」
「え・・・」
司「晋さん?」
直「・・・・・。」
透「ちなみにハンバーグ食った。すっげぇ美味かった。」
香「えー!行ってみたい!」







(いつの間に・・・)







魚も夜景も綺麗だった!なんて香織ちゃんと話す透ちゃん。

まぁ、透ちゃんが誰とご飯食べたって俺には関係なんだけど。

でも・・・なんとなく複雑な気分。







透「ていうかあの店を作ったなんて・・・玲くんは天才だな!」
「え・・・そ、そうかな。」
透「そうだろ!まるで海の中のレストランみたいだった!」
「-----。」







(海の中のレストラン、か・・・)







嬉しいこと言ってくれるね。







透「思い出したらまた行きたくなったなぁ。」
「じゃ、今度行く?」
透「そうだな。どうせなら皆で一緒に行かないか?」
香「やった!行く行く!」
直「行きたいです。」
司「・・・・・。」


「つ、司くんも行かない?」

司「・・・行く。」








(ぷ・・・っ)








そういえばさっきも同じことがあったよね・・・

やっぱりこの二人って姉弟なんだな。
イジケるタイミングもそっくり。









それにしても











司くんの警戒心が解けてきたのは気のせいじゃないよね?












「よーし。それじゃたっぷりサービスしてってオーナーに伝えとくよ。」
香「本当!?嬉しい!」
透「さすがデザイナー!」
直「楽しみだね、司。」
司「ん。」







ちょっぴり口角を上げる司くん。







よしよしこの調子。







このまま一気に司くんと仲良くなろう。