いつからだろう。
女なんて勝手に寄って来るし適度に遊べればいい・・・
そう思うようになってた。
だが異性に対して努力を怠っていると自分の気持ちに鈍くなるらしい。
(確かに・・・大切だったかも。)
記憶の隅に捨てられた「ガキの頃のレンアイ」を思い出してみた。
そうだ・・・
中2の時は激しかったな。
当時の彼女が好きでたまらなくて
とにかく毎日「好きだ」って言ってたような気がする。
そういや高1の時の彼女は大切すぎて手ェ出せなかったっけ。
え、あるじゃん。
俺にも輝かしいピュアな過去が。
一体どうしてなんでこんな俺になったんだ?
有「よし!直ったぞ!」
「えっ、もう!?」
パソコンを見ると・・・ちゃんと動いてる!
どうやら考え事してる間に直してくれたらしい。
さすが本職なだけある。
「サンキュー助かった。」
有「気にすんな。で、今からまだ仕事すんの?」
「少しな。」
有「そっか。じゃぁちょっとだけ休憩しようぜ。実はお菓子さんを持ってきました!」
「おぉ!気が利くじゃん!」
有「だろ?それじゃ用意するから。お前はコーヒー入れてくれ。」
「了解。」
バッグからせっせとお菓子セットを引っ張り出す。
おぉ、カスタードプリンまで・・・
さすが有希、グッジョブ!
有「んー!幸せいっぱいじゃー!」
菓子を頬張りだらしなく顔を緩めて叫ぶ。
まぁ確かに美味いけどね。
幸せいっぱいいっぱいだけどね。
(ガキみたいな顔しやがって・・・)
そのくせコーヒーの合間にタバコに口を付ける。
前から思ってたがお前には似合わねぇ。
タバコやめろ。
(それにしても・・・幸せそうな顔じゃなかったよな・・・)
さっき見せた顔。
すっげぇ好きになったヤツがいるか聞いた時のあの顔は---
辛そうで苦しそうで
今にも泣き出しそうな
『女』の顔をしていた。
(チッ・・・・気分悪い。)
さっきは思い出してたんだよな?
話の流れから考えて昔の恋愛・・・
つまり、過去の『男』のことを。
(・・・・・・・・ムカつく。)
あんな顔しやがって・・・
なに?いったい何があったわけ?
すっげぇ気になる。
だって・・・らしくねぇじゃん。
どっちかというとあっけらかんとした明るいヤツだし
恋愛で傷つきそうなタイプには見えないし
だからってわけじゃないけど有希の悲しむ顔は見たくないというか。
あんな顔見せられたら・・・
どうしたらいいか分からなくなる--
ちょっと待て。
今の思考はなんだ。
(・・・・・バカバカしい。)
---大切に思えるかどうか・・
有希のことは大切・・・・ですよ。
それが何か?
『こいつのこと大切かも、って思える女子がいたらゴーだ。素直に溺れてみろ。そしたら分かる、多分。』
大切に思う奴に溺れてみるってことは・・・
有希に溺れるって事じゃないの。
待って待って、俺ってこいつのこと落とそうとしてたんじゃなかった?
有希に溺れたら落ちるの俺になっちゃうじゃん、あはは。
ちょっと待て。
なんか俺、動揺してる?
やばい冷や汗が・・・
---大切に思えるか・・
あーもう何度も繰り返すな。
あの女はノーで
有希はイエス
だからといって言われるままに大切だと思う女に溺れようとは思わない。
そんなことより
なんで悲しむ顔を見たくないと思う?
はっきり言おう。
変態の俺にとってそういう顔は大好物よ。
なのになんで・・・
---好き
ちょっと待てーい。
心臓鳴った。
今心臓がドカンと鳴った。
(ちょっと・・・マジで勘弁してよ。)
なんで今のタイミングで「好き」だなんて考えるわけ?
そもそも好きじゃないだろ。
いくら恋愛から遠ざかってたからってそんな大切な感情に気付けないほど俺のそれは使い物にならないなんてこと--
---スキ?
(---ドッキーン!)
ふざけんな俺。
マジで止めて。
心臓ヤバイっていってるじゃん。
有「要?なにボーっとしてんだ?」
「え!」
有「コーヒー冷めちまうぞ?」
「そ、そうだな!」
(あぁもう・・・クソっ・・)
有「ふーんふーーーん。」
恐る恐る有希を見ると・・・
そんなに旨いのか鼻歌まで歌いながら菓子を食ってる。
そんな色気のない姿を見て
あれ、なんか可愛いかも・・・
なんて思ってしまった自分を叩き回したくなった。
どうやら俺は、いつの間にかこいつに惹かれているらしい。
そう定義するとさっきからグラグラと感情が揺れることにも説明がつく。
いやいや、説明なんか必要ないか。
---ドキドキする
これが何よりの証拠でしょ。
「なぁ、有希。」
有「---ん、んっ!?」
そういえば初めて呼び捨てで呼んだっけ。
名前を呼ぶと変な反応が返ってきた。
相当ビックリしたらしい。
有希は俺を見たままコーヒーをゴックンと飲み込んだ。
有「な、なんだ?」
「・・・・・。」
有「か、要?」
「・・・・・。」
部屋にあるテーブルは小さくて、目の前に座る有希に簡単に手が届く。
焦ってる様子だが逃げないのをいいことにゆっくり手を伸ばす。
そして目を丸くする有希の頬に触れると、ピクッと肩が揺れた。
(・・・・・・・・やばい。)
なんだよ今の・・・
マジで可愛いんですけど。
ていうかやばくないか俺。
こいつに触れてることが嬉しい。
胸が・・・熱い。
---欲しい
何かが目覚めた。
体の中で何か起きた。
これって・・・あれだよ。
---独占欲
(おいおい・・・)
お見事。
まさかこんなことになるとは・・・
そして俺は
管理人争奪戦・・・
ゲームオーバーってことだな。