「い、いやぁ・・・孝様もいい車に乗ってらっしゃるんですねぇ。」
孝「だからやめろ。その呼び方。」
「さすがお医者様。」
買出しは孝の車で出ることになった。
そしてやはりすんごい車が出てきた。
高級車は座席から違う。
私の部屋のソファーよりふわふわだ。
こっそり取り替えてやりたい。
(ウイスキー、ブランデー、焼酎にワイン・・・っと。)
もっとふわふわを堪能していたかったがスーパーに着いた。
酒置き場に直行し見つけた酒共を片っ端からカゴに放り込む。
「あいつらのはこんなもんか。」
孝「いいんじゃねぇ?」
酒が大量に埋まった籠を軽々しく持ってレジに向かう孝。
さすが馬鹿力。
籠の方がイカレそうだ。
『いらっしゃいま、せ---!?』
レジに行くとお姉さんに二人で飲むの!?的な視線を頂いた。
いやいや違いますよ、6人分です。
ま、ほとんど私のだけどな。
(・・・・・ん?)
酒瓶と缶をせっせとレジに通すお姉さん。
だがどうしたんだろう。
みるみると顔が赤く染まっていく。
そしてチラチラと上がる視線--
(・・・・あぁ!)
なるほど。
原因はこいつだ。
俺様孝様。
どうやらあまりのイケメンを前に可愛らしく顔を染めるお姉さん。
周りを見回すと他のレジの子も買い物客も皆孝を見ている。
(確かに見た目はいい男だもんなぁ・・・でもね皆さん騙されちゃいかんですよ!こいつはいい面を被った俺様野獣なんです!)
心の中で訴えた。
「孝、今日は私が出すからな。ていうかほとんど私のだし。」
しばらくかかってレジ打ち終了。
この前は世話になったからな。
今日こそは私が、ということで財布を出--
そうとするとまたもや孝が先に諭吉様を数枚出した。
孝「は?」
「いやいやだから--」
孝「バカかお前は。」
「は・・・」
孝「いいからそれ、袋に詰め込んどけ。」
「え、ちょ-----おいっ・・・」
邪魔だ、とでも言うように背中を押された。
・・・参ったな。
この前も出してもらったし・・・
今度から先に出しておけばいいのか?
袋にガチャガチャ詰めながら次の策略を練る。
とにかく次回は絶対払わせてもらおう。
「ふ、袋破れそうだな・・・」
はちきれんばかりに詰められたアルコール達と車に乗り込む。
孝を連れてきて良かった。
一人じゃ絶対ムリだった。
「ていうか孝、精算ありがとな。でも今度は--」
孝「礼を言うことじゃねぇ。この前も言ったぞ。」
「そ、そっか。」
言われたけどやっぱお礼は言いたいじゃんか。
そしてやはりこういうのは慣れない。
「-----あ、そういえば店の奴ら皆お前に見入ってたな。」
孝「いつものことだ。」
「うわなんだ今の発言!おモテになる方は言うことから違うんですねぇ。庶民には理解できないっす。」
孝「うざいだけだ。」
「へぇへぇ。」
孝「-----で?」
「は…?」
で?って
なんだ?
孝「さっきの話。」
「さっきの話?なんだっけ?」
孝「・・・真樹のこと。」
真樹のこと?
え、何かあったっけ。
真樹、真樹…
「あー・・・・その話か。だから何もないって。」
孝「何された。」
「・・・お前もしつこいなぁ。」
孝「言え。」
言えって言われてもな…
寝起きにディープなキッスをかまされましたなんて言えるわけねぇだろ。
むしろ消し去りたい事件だあれは。
孝「早く言え。」
「いいじゃねぇか別に。気にすんな。」
孝「・・・・・・・。」
うわ・・・無言の圧力。
空気に押し潰される。
「え、えーと、えーと…」
なんか、なんか他にないか。
言い訳カモーン・・・
「その・・・そう、アレだ、孝様と同じっすよ。あいつも私で遊んでいるようでして・・・」
孝「遊んでる?」
「私の常識ではチューとかギューは簡単にできねぇモンなんだけどな。なのにお前らときたら・・・挨拶はろくにできねぇくせにチューはぶちかましてくるんだもんな。」
孝「・・・・・・・・。」
言い訳というかなんというか・・・
日頃溜め込んでいるストレスをぶちまけてみた。
しかも孝、この件に関してはお前も同類だ。
「やっぱあれか?お前ら外人さん目指してんの?チューを挨拶にしてんの?」
孝「・・・・・・・・。」
だんまり。
まさか図星か。
「--------?」
ふと、孝が車を止めた。
え、まだ家に着いてないっすけど…
なんで?