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辰「ねぇ透ちゃん・・」
透「あのさ・・・心配してくれるのは有り難いけど大丈夫だ。今日は香織の家に泊まる予定だから。」
辰「香織ちゃん、昨日から彼氏と旅行に行くって言ってたけど。」
透「ふ、ふーん、そうなんだ。」
それにしても・・・
前から思ってたけど日下さんは嘘つくのが下手だ。
やっと捻りだしたんだろう秘策も一瞬で玉砕・・・
どんまい!
辰「俺と二人きりが嫌なら・・・そうだ、妹を呼ぶってことでどう?」
透「妹って、誰の。」
辰「俺。」
透「へぇ、あんたの妹ねぇ。ふーん、ふーん・・・え!あんた妹がいるのか!?」
辰「・・・いるけど。」
透「マジで!?そりゃびっくり!」
え、俺もびっくり!
すっごい気になる!
辰「俺は透ちゃんに弟がいた方がビックリしたけど。」
透「そうか?普通だろ。」
日下さんに弟!?
なにそれそっちも気になる!
(あ、あれ・・・?)
ふと、疑問発生。
「あ、あのぉ・・・」
透「なんだ?」
辰「?」
日下さんには弟がいる、らしい。
だったら・・・
「家に帰れないなら、弟さんの家でお世話になるのはどうですか?」
それなら万事解決でしょ?
もしくは実家に帰るとか。
確か実家も遠くないって言ってたような言わないような・・・
(冴えてるじゃん俺!)
ていうか二人してこんな簡単なことに気付かなかったのか?
まぁ仕方ないか・・・
昨日は辰巳さんも日下さんも相当お疲れだったから--
(へ・・・・・)
正直言ってこれですべては解決したと思った。
俺もやっと落ち着いて眠れるーなんて思った。
なのに---
(な、なんで・・・・・・?)
日下さんの表情がみるみる曇っていく。
そして更になんでだろう。
日下さんを見つめる辰巳さんまで眉根を寄せて、心底困り果てた顔に--
(な、なにこれ-----)
ずーんと沈み込む空気。
い、息ができないっす。
透「そりゃ・・・いい考えだな。うん、弟の家に泊めてもらおっかな。」
辰「え--」
透「二人とも悪かったな。疲れてるのにお騒がせして。」
辰「・・・・・・」
え、あ、あの・・・
透「私はそろそろ帰るよ。来週から忙しくなるし、お前らもゆっくり休めよ。」
辰「ちょっと透ちゃん!」
そそくさと腰を上げる日下さん。
そんな日下さんを行かせまいと腕を掴んで制止する辰巳さん。
ていうか・・・え、なにこれ。
俺のせい?
俺のせいでこんな雰囲気に?
しかも日下さん帰るって言った?
こんな重い空気を放置して?
ちょ、---
「ちょちょちょっと待ったー!」
透「ぅお!?」
バンと机を一叩き。
そして今にも辰巳さんに一発かまそうと拳を向ける日下さんに待ったをかけた。
辰「き、木戸?」
「さっきのは-----無しで!」
透「・・は?」
「い、家に帰れないなんて大変ですよねー!もーどうしたらいいんだろ!やっぱり辰巳さんの家にお世話になるのが一番いいんじゃないですかね!?」
透「・・・急に何言い出すんだお前。」
辰「あ、やっぱりお前もそう思う?そういうわけだから透ちゃん、ね?」
透「ね?ってなんだよ。」
戻した。
弟さんにお世話になる件をゴソッと無視して話題を戻した。
(た、助かっ----た・・・?)
つい数秒前の張り詰めた空気はどこへやら。
二人は・・・主に辰巳さんは何事もなかったかのように再び日下さんを誘い始めた。
透「木戸てめぇ!話をぶり返しやがって!」
「・・・・・・・スミマセン。」
ギラリと睨まれた。
すごく怖い。
でも、これで良かったんだ。
だってあんな居たたまれない空気に晒され続けるなんて・・・
ムリムリ、俺には無理!
(それにしても・・・)
さっきのアレはなんだったんだろうか。
弟さんの話題が出たときは普通だった。
なのに弟さんに世話になる話になった途端空気が一変。
もしかして日下さん・・・
弟さんとケンカしてるとか?
(ま、いっか・・・)
気にならないと言ったらウソになるけど
あの重圧エアーを乗り越えて質問できるほど俺の心臓は強くない。
透「ふぁぁ、もーやだ眠くなってきた。フワフワの布団で泥のように眠りたい。」
辰「俺の布団、昨日干したばっかりだよ?ふわふわだよ?」
透「ふ、ふーん・・・ふわふわかぁ・・・」
それにしても
やっぱり・・・違和感。
頬杖ついてあくびする日下さんをなでなでする辰巳さん。
その表情は羨ましいと思えるほどに優し気で
そして細められた目はひどく切な気に見える。
つまり何が言いたいかというと
やっぱり辰巳さんの様子がいつもと違う
・・・ような気がする。
透「ていうか・・・なんか変だぞあんた。」
辰「え?」
透「私なんかほっといてたまには他の女の子と遊んで来いよ。そしてそのまま帰って来るな。」
辰「えー、ヤダ。」
透「ヤダってお前・・・はぁ、なんでそんなに私に構うんだか・・・」
辰「え、なんでか分からない?」
透「分かるかよ。」
どうやら日下さんも疑問に思ったらしい。
でもまぁ多分、心配だからとか放っておけないからとかそういう理由だとは思うけど--
辰「透ちゃんのことが、好きだからだよ。」
(え・・・)
----な
なな・・
透「ななっ---なに言っちゃってんだお前ー!」
辰「だから、透ちゃんが好き--」
透「あーもうはいはい!そういう冗談はいらないから!」
辰「冗談じゃないのに。」
さすがに顔を染めてそっぽを向く日下さん。
それを追いかけるように日下さんの頬を撫でる辰巳さん。
そんな二人はまるで
甘い空気に包まれた
仲睦ましい恋人同士・・・
いやいやそうじゃなくて!
(な、な、なんだったんだ今のは・・・)
日下さんが好きって・・・
ほ、本気?それとも冗談?
いつもの辰巳さんだったら確実に冗談だろう。
でもさっきの辰巳さんは、なんだか--
(ちょちょ、ちょっとちょっと・・・)
どどどうしよう・・・
もしかしたら俺--
とんでもない現場を目撃したのかもしれない!
辰「透ちゃん、顔真っ赤。」
透「うう煩いな!放っとけ!」
辰「ふふ、可愛い。」
透「かか、可愛いだと!?ちょ、コラ!触るな!」
それにしても・・・
いい加減このやり取りを見るのも飽きてきたっていうか
人の家で何しちゃってんだっていうか・・・
透「バカヤロー!気安く触るんじゃない!」
辰「少しくらいいいじゃん。俺と透ちゃんの仲だろ?」
透「ちょ---やや、やめろー!」
(・・・・・・。)
月曜日から必死に働きます。
なんなら二人の分まで頑張らせていただきます。
だから・・
いちゃいちゃするならよそでやってー!
・・・・・・・・GAME「ある休日の災難」(完)
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