とある休日の災難

とある休日の災難 02 ~GAME






「よ、宜しくお願いします。」






うわぁ・・・

近くで見てもすごい。
いや近くで見た方がすごい。

女子の言ってたことは本当だった。

目が合っただけだけど気絶しそう。





じゃなくて






(この人と組むのか・・)






進藤辰巳。

存在はもちろん知ってた。

顔パスでS社に入ったとか
社内の女を食い荒らしてるとか

何かと噂の絶えない目立つ人だからね。






辰「経験積んできたのに今更パートナー組むなんて面倒だろ?」

「えっ!」

辰「俺もここに異動した時は嫌でさぁ。」

「え、ぇ・・」

辰「でも一年くらいで独り立ちできると思うよ。それからは好きなように仕事出来るから。少しの間だけ我慢してね。」

「はは、はいっ!」






キュッと口角を上げる進藤さん。

さすがはS社きっての色男。
飛んでくる色気が半端ない。






辰「それじゃとりあえず・・・今俺が手掛けてる企画を手伝ってもらおうかな。」

「はい!」

辰「これが企画書ね。暇な時に読んでてくれる?」

「は、はい!」

辰「はは、木戸君って元気いいね。」






軽く渡された企画書は月刊マンガ並みに分厚かった。

最高峰は企画書の厚みからして違うんだろうか。






(企画担当、進藤辰巳---だけ?)






家に帰って早速書類をめくる。

担当者の名前を確認すると進藤さん一人。

え、これ一人で全部作ったわけ?
いやいやまさかね。






「まぁいっか・・・さてさて、イケメンさんの実力-----チラッと拝見させていただきましょうか。」






半ば上から目線で読み始めた。

どうせ大したことないだろ、そう思ってた。







だが企画書を読み終える頃







俺は体の震えを止められなくなってた。







「な、な---なにコレ‥」







---スゴイ




稚拙な感想だがこれしか思い浮かばない。

だって---なんでこんなこと思いつくんだ?

ここでアレを持ってくるなんて
しかもこのタイミングで応用するなんて--

斬新的すぎる!






「すごい---すごい!」






一回じゃ物足りない。
二回、三回と企画書を読み漁る。


これは本当にあの人が考えたことなのか?

しかも一人で?
誰の助けもなく・・?







辰「そうだよー、頑張って考えてみた。」






なにその軽い感じ!






辰「意外と良く出来てただろ?」

「意外とだなんて---!俺っ---感動しました!」

辰「感動したの?木戸君は大げさだねぇ。」

「そんなことないですっ!」

辰「そ、そう?」







(コレだ、コレだ・・・!)







俺は今、猛烈に興奮している。






そして生まれて初めてかもしれない。

誰かに対して「憧れ」の感情を抱いたのは・・






「あのっ!」

辰「ん?」

「辰巳さん。」

辰「へ?」

「とお呼びしても宜しいでしょうか。」

辰「え・・・う、うん、いいけど。」

「ありがとうございます!俺、一生懸命頑張ります!」

辰「えー、適度に程よく頑張ろうよ。」







そんなこんなで辰巳さんという天才に出会った俺。







そして想像以上にこの人はすごかった。







とにかく才能の違いに圧倒された。

差を見せつけられて心を折られたこともしばしば。

いずれにしても初めての経験。

ちなみに無気力症候群は完全に俺の中から消滅した。







辰「木戸、おめでとう。」

「え?」







そしてその日はあっという間にやって来た。







辰「一年間本当に良く頑張ったよ。」

「え・・」

辰「やっぱりお前は優秀だね。独り立ちしても全然問題なし。晴れて卒業--」

「嫌です。」

辰「え?」

「卒業なんて何言ってるんですか!俺なんてまだまだです!これからも厳しく指導宜しくお願いします!ビシバシ抉るようにしごいて下さい!」

辰「えぇ‥」






卒業=辰巳さんとの別れ

そんなの有り得ない。

やっと見つけた俺のオアシスを易々と手放して堪るか。






というわけで






辰巳さんと出会って5年。

俺は未だに彼のペアとして一緒に仕事させてもらっている。

そして離れる気は更々ない。






「お前、なんでまだ進藤と一緒なんだよ。とっくに卒業してもいいはずだろ。」

「自分、まだまだなんで。」

「ふーん・・・それにしてもよくあんな奴と一緒にいれるよな。」

「はい?」

「女にはだらしないし行き先ではキャーキャー言われるし。」

「辰巳さん、カッコいいですからね。」

「・・・・・・。」






ちなみに彼といて気付いたことが多々ある。


気付いたことその①

辰巳さんはとにかく目立つ。


仕事の才能はもちろん、あの外見だ。
男女問わずその魅力にメロメロ。

この水嶋センパイもそうだ。

悪口ばっかり言うけど実は辰巳さんが大好き。
俺の目はごまかせない。






「ねぇねぇ木戸君、進藤くんの携帯番号教えて?」

「え?」

「私、進藤くんのことが好きなの。協力してよ木戸君。」

「すみません・・・そればっかりは自力でお願いします!」

「あ!コラ逃げんな!」






気付いたことその②

辰巳さんはとにかくモテる。

S社の女性社員はもちろん、取引先でも怖いくらいすごい。

キレイ系から可愛い系の女性がまるで狩人のようにギラギラと彼を狙っている。

だがポリシーなのか、辰巳さんは仕事関係の女性には基本的に手を出さない。






辰「別にポリシーってわけじゃないけど・・・ただ仕事関係の女性ってなぜか強引な子が多くてさ。」






まぁ、それは仕方ないですよね。

ハンターの皆さんにとって辰巳さんは恰好の獲物ですからね。






「こう見えて押されるより押す方が好きなんだよね。強引女子より控えめ女子。委員長タイプより保健委員タイプが好き。」

「あ、なんだか分かる気がします。」

辰「だろ?」






なるほど・・・

例に漏れず辰巳さんもそのタイプだったんですね。

グイグイ女子よりおしとやか女子。
男はそんな大和撫子さんが大好きです。







と、思ってたんだけど








最近辰巳さんは・・・

とんでもない女性に夢中になってる。








「おいコラ変態。ここのデータはどうすりゃいいの。」








とんでもない女性。

その名も日下透さん。

そしてなんとこの日下さん・・・

辰巳さんのことを面と向かってヘンタイと呼ぶ。






辰「データは処理済みだから大丈夫だよ。ていうか透ちゃん、いい加減それで呼ぶのやめてよ。」

透「仕方ないだろその通りなんだから。」

辰「まぁ否定はしないけど・・・ところでそろそろ休憩しない?休憩ついでにコーヒーでも飲みに行こうよ。」

透「え、行かない。ていうか外に出るなら缶コーヒー買って来いよ。はい小銭。」

辰「もー、透ちゃん冷たい!」






うん、冷たい。






辰「ただいまー。どうせだから俺も缶コーヒーにしちゃった。はい、透ちゃんどうぞ。」

透「あぁどうも。」

辰「ねぇねぇ、買ってきたご褒美にさ・・・今夜食事に付き合って?美味しい物でも食べに行こうよ。」

透「は、行くわけないだろ。あんたと飯食うくらいなら一人で空気食ってる方がまだましだ。」

辰「く、空気!?ひ、酷いー!!」

「・・・・・・。」






ガチで酷い。






(な、なんなんだこの人・・・)






だって辰巳さんにだよ?

声を掛けられただけで恋に落ちると称されるあの辰巳さんにだよ?

恋に落ちるどころかドキドキしてる様子もないなんて・・・






辰「もー!ちょっとは優しくしてよ透ちゃん!」

透「あ!コラ引っ付くな変態!」

「・・・・・・。」






(し、信じられない・・・)






日下さんを追いかける辰巳さん
それを足蹴にする日下さん・・・

最近じゃそんな珍光景に慣れてきた自分が怖い。






---日下さんの何がいいんだろう






これは当然の疑問だと思う。

口は悪いし性格も勇ましいし見た目もなかなか男子寄り。

これが俺の中の日下さんだ。

個人的には実は男なんじゃないかと疑っている。






そんな日下さんを、なぜ?






(まさか---)






まさか辰巳さん、覚醒した?

日々酷い扱いを受けるうちに?

苛められることに快感を見出してしまったとか?






(それとも---)







それともまさか・・










---恋?










辰「透ちゃん疲れてない?」

透「疲れてるに決まってんだろ。分かり切ったことを聞くな。」

辰「だったら少し休みなよ。良かったらそのベッド使って?」






恋・・・?

いやいやまさか。

辰巳さんに限ってそんなこと--

でも目の前で繰り広げられるコレを見てると・・・ねぇ?






透「ベッド使ってってお前・・・これあんたのモンじゃないだろ。勝手なこと言うな。」

辰「そんなの気にしないで。ほら、横になって?」

透「ちょ---コラ触るなって言ってんだろ!だいたい木戸さんの前だってのに恥ずかしくないのかお前!ていうかなんで我々は木戸さんの家にいるんだ!」

辰「え、なんでだろ。なんで?」

「・・・・・・。」







本日、親睦会明けの土曜日。

時刻は昼前の午前11時。

そして現在地は








「え・・・えぇと・・・」

辰「・・・・・・。」

透「・・・・・・。」









あんたら、なんで俺の家にいるんですか。