遼 02 SAKURA∞SAKU first

二階からバタバタと音が聞こえてくる。

そして女がひょっこり顔を出した。

 

有「よぉ!悪ぃな迎え頼んで!悪いついでに後5分待っててくれ!おいてめぇら、茶出してやってくんね?」
純「姫、俺に任せてー。」
有「サンキュ!」

 

ひ、姫?
あいつ姫になっちゃったのか?

 

「あ、あの、お構いなく・・・」
要「遠慮するなって。適当に座りなよ。」
「・・・・は、はい。」

 

促されるままソファーに座る。

 

「ども・・・」

 

お茶を頂きました。

 

「・・・・・・・・・・・。」

「「「・・・・・・・・。」」」

 

 

超----気まずいんですけど。

 

 

"ずずっ"

とりあえずお茶をすする。

 

 

(えー・・・なんでこんなことになってんだ俺は。)

 

大体有希の奴は何やってんだよ。

引っ越したって言ってたけど・・・

ここが家になったならこのイケメン兄さん達はなんなんだ?
ボディーガードか?
ある意味誰にも負けそうにないけど。

 

 

「お前は有希の何だ?」
「へ?」

 

 

どこから声が、と見回すと。

その美しさはやばいっすよ・・・

声の主は妖艶な空気をまとう黒髪のお兄さん。

ちなみに不機嫌そうに見えるのは気のせいだろうか。

 

「え、えぇと・・・有希とは高校から一緒で。腐れ縁て言うんですかね・・・今は専ら飲み友扱いされてますけど。」
真「へぇ・・・」

 

なぜか探るような目を向けられる。

 

(え、な、なんで!?)

 

そんな目で見ないで下さい。
何も隠してません!

 

要「こらこら真樹。そんなに威嚇しないの。」
真「こいつにはニ度も邪魔されたからな。それに威嚇じゃねぇ。これは脅しだ。」

 

(一緒じゃないっすかぁ!)

 

しかも邪魔ってなんのこと!

俺達初対面っすよ!
仲良くしましょーよ!

焦る。

一体自分に何が起こっているのか理解不可能。
お願いだから誰か助けてください!

 

累「遼は有希を狙ってるの?」
「え?」

 

今度はすっげーストレートな言葉が飛んできた。

 

「え、えぇと・・・?」
「「「・・・・・・・。」」」

 

 

(あぁ・・・そういうこと。)

 

 

どういう成り行きかは分からない。
しかし、どうやらイケメン兄さん達は有希を狙っているらしい。

 

「まぁ・・・・・狙ってますね。」
孝「やっぱりそうか。」

 

やっぱり?
やっぱりって何よ。

 

要「強敵現るだねぇ、君たち?」
孝「お前にとってもだろ。」

 

強敵?

いやいやそれはお宅らのことっすよ。
同じ男としてどうすればいいんですか俺。

 

純「それにしても…随分長い付き合いなんだね。」
累「確かに。」
真「既にフられたか?」

 

い、痛い。

言葉の全てが突き刺さる。
美人さんが俺を苛める。

 

「付き合いは長いんですが。まぁ有希はあんなですし・・・気持ちを伝えるつもりはまだ--」
純「"あんな"って?」
「え?あー、いや、深い意味は・・・・」
孝「言え。」

 

深い意味で言ったわけじゃないんだけど何か気になることがあるんだろうか。

まさか・・・

既に何か起こったとかじゃないよな。

 

要「遼くん?」

 

 

(くっそー・・・)

 

 

本気かどうか知らないが・・・
どうやら皆さんがあいつを狙っているのは確かなようだ。

なんでまたこんな『イケメン代表!』みたいな5人が同時に・・・

マジでどうすりゃいいの俺。

 

でも

 

全部は言えないにしても少しは教えといた方がいいんだろうな。

誰とは言わないが見たところ強引そうな人もいるし・・・
何も教えず放っておいたらあいつが傷つく可能性がある。

 

ちらっと2階に目をやり、有希がまだ下りてこないのを確認する。

 

「お宅ら、有希を狙ってるんすね?」

「「「・・・・・・・・・・。」」」

「まぁ、誰が狙おうが自由なんですが・・・あいつ、結構深いトラウマ抱えてるんで。出来るだけデリケートに扱ってください。」
真「なんだてめぇ。何か知ってるような言い方だな。」
「付き合い長いんで。でも俺からは言えないし・・・あいつに無理に聞くのも止めて下さい。じゃないとあいつ・・・壊れちまうから。」

 

 

そう。

 

 

壊れちまう。

 

 

孝「----壊れる?」
「本当はライバルに塩なんか送りたくないんすけどね。有希が傷つくのは・・・困るんで。」
孝「・・・・・。」

 

モデル兄さんは綺麗な顔を少し歪ませた。

 

要「そっか。詳しくは分かんないけど・・・サンキューな。」
「いえ。」

 

掴み所のない笑顔がかなりカッコいいグレー髪のお兄さん。

気だるそうなオーラに包まれてるけど・・・
とってもいい人だったんすね。

 

ところで

 

こんだけ話込んだのにまだ下りてくる様子のない有希。

5分って言ったくせにどんだけ時間かかってんだ!
と思ったが、話を聞かれずにすんだのでまぁよしとする。

 

有「悪ぃ!データが見つかんなくてよ!」
「お、おお。」

 

ちょうど再び沈黙が出来たころ有希の声。

 

有「全員集まってどうしたんだ?まさかもう仲良くなったのか?いいですねぇ、男子はそういうのに抵抗がなくて。」
「・・・・・・・・。」
「「「・・・・・・・。」」」

 

どこを見て仲良しと判断したわけよ。

感じてくれ。
このギクシャクした空気を!

 

有「改めて、こいつが遼だ。かれこれ長い付き合いだな!」
「あ、あぁ。」

 

集中する視線。

 

非常に・・・・痛いっす。