「・・・何が入ってんだそれ。」
「え、色々。もし持って行けたらいいなと思って。」
「・・・遠足気分だな。」
「そ、そんなことないぞ。」
午後10時40分。
いざ現場に向かおうと西本の家を出た。
そして夕方のうちに用意していたリュックを自宅から持ち出し、準備完了。
中身は色々。
大方無くしたと思ってた懐かしい品々だ。
「じゃあ行こっか。」
「ああ。」
「ごめんな、勉強する時間使わせて。」
「別にいい。」
冬も間近。
外は随分肌寒い。
お互い上着のポケットに手を突っ込んで歩く。
「それにさ、帰りは一人になるけど・・・怖くないか?」
「怖いわけないだろ。」
「一人で帰れるか?」
「あのなぁ、ガキ扱いすんな。」
「あ、ごめん。」
公園までの道のりはあまり明るくない。
途中にコンビニが一軒あるだけの寂しい道。
車通りも少なくて、足音がヤケに響く。
信号もほとんどなくて、10分程で到着した。
「よいしょっと。」
「・・・。」
現場のすぐ横の柵に腰掛けた。
西本も無言で隣に座る。
「そこ。」
「・・・。」
「そこで引かれたんだ。」
「・・・ふーん。」
指で示した先はただのコンクリート。
なんの変哲も無いただの道だ。
でもあの日、確かにここでトラックと衝突した。
「あのさ。」
「ん?」
「もしあの時・・・死んじゃったんだとしたら・・・どうなるのかな。」
「・・・。」
不安な時は余計に不安になることを考えてしまうもんだ。
あの時、死んでもおかしくないくらい血が出てたと思う。
起き上がりたくても体が動かなくて
目の前がだんだん暗くなって
あぁ、死ぬんだって思った。
もしあのまま命が尽きてしまったとしたら
元の自分に戻った時
私は死ぬのか?
「大丈夫なんじゃねぇの。」
「え。」
真っ直ぐ前を見たまま呟く西本。
そしてこっちを見ずに続ける。
「何年も後の世界なんだろ。」
「・・・。」
「医療も今より進んでるわけだし。医者がなんとかしれくれてるだろ。」
「西本・・・」
一度チラリとこっちを見て、いつものようにプイッと顔を逸らした。
(ははっ・・・)
外灯の灯りが頼りなくてよく見えないけど
西本の頬は紅く染まってるように見える。
やっぱりお前、実は優しいヤツなんだな。
ひねくてて分かりにくいけど。
「信じないんじゃなかったのか?」
「・・・信じてねぇよ。ただ妄想に付き合ってやっただけ。」
「そっか。それでも、サンキュー。」
「・・・別に。」
さて。
時刻は11時を回った。
(どうか、戻れますように。)
ポケットに突っ込んだ手を
固く握りしめた。