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(それにしても---)
晋のアレは一体なんだったんだろうか。
「……うーん。」
アレってやっぱり・・・
助けて-----くれたんだよな?
でも--
「・・・なんで?」
・・・うーん、良く分からない。
もしやただの気まぐれか?
それともwith親父との飯にマジで連れて行こうと思ってるとか。
・・・どちらもあり得そうだから怖い。
ていうか親父と飯ってのはなんだ。
そんな中学生の言い訳みたいな理由で人を説得できると思ってんのか。
ま、実際に司も忍も納得したんだけども・・・
そんなにヤバいヤツなのかあいつの親父。
まぁ何にせよ---
晋のおかげで助かったのは事実。
(・・・後でちゃんと礼言っとこ。)
だって・・・
もしあの時、晋が助けてくれなかったら
私はきっと
今頃--
「・・・もー、やめやめ。」
首をブンと振って思考を追い出す。
最近こんなんばっかだよな。
なんか暗いっていうか・・・
いい加減息が詰まる。
「・・・・・・布団がふっとんだー。」
辛い時ほど楽しいことを考えろってね。
誰かがそう言ってたような気がする。
「椅子に座ってもいいっすか?もちろんいいっすよー。」
ふふ・・・
ダジャレってステキだよな。
腐った気持ちを一瞬でハイにしてくれる。
「猫が寝込んだー・・・・・・ぷぷっ。」
猫ダジャレマジ最高。
そういやボスのヤツ、元気にしてるかな。
久しく会ってないけど--
『今日はカフェオレな気分なんですか?』
「っ、へ---!?」
『え?』
突然ぶつかってきた声に
遠慮なく変な声が出た。
「なな、な-------!?」
「え、えと?」
「なな、直樹!?」
「え、え?···は、はい?」
ビックリした。
ものすごくビックリした。
そして振り返るとそこには我が後輩、直樹。
こいつもビックリしたんだろう。
大きな目を更に大きくさせてフリーズしている。
ていうか今の聞いてた?
聞いてないよな!?
直「す、すみません、驚かしちゃいましたか?」
「い、いやいや大丈夫!ちょっとその----かか、考え事してただけだ!」
直「考え事?」
「そそ、そうそう考え事!」
頼むから深く追求しないでくれ。
ダジャレ考えてほくそ笑んでましたなんて間違っても言いたくない。
直「・・・大丈夫ですか?」
「え!?だだ大丈夫大丈夫全然大丈夫!」
直「本当ですか?透さん、最近忙しいみたいですし・・・疲れてるんじゃないですか?」
「え。」
直「司もなかなか連絡取れないって言ってました。」
「あ、あぁ、まぁ、それはだな--」
直「あの、俺に出来ることがあれば何でも言ってください。」
「は・・」
直「透さんが悩んでるのを見るのは、その・・・嫌です。」
「!」
(な、直樹、お前…!)
知ってた。
知ってはいた。
けど改めてなんて優しいんだろうこの後輩。
癒される。
すっげー癒される。
出来ることならお前に抱き着いてありがとーーー!と叫びたい。
いやいやそんなことより、いつの間にこんなところまで来てたんだろう自分。
気付けば目の前には自販機。
しかも無意識にカフェオレを買おうとしていたらしい。
「それにしてもこんなとこで何やってんだ?もしかしてお前もサボり?」
直「サボりっていうか···パソコン業務で目が疲れちゃって。」
「ほう。」
パチパチと目を瞬かせる直樹。
仕事は適当にと教えたはずなのに。
どうやら頑張りすぎて目をやられたらしい。
「相変わらず頑張り屋さんだな。よし、そんなお前のためにコーヒーでも恵んでやろう。」
直「え!そ、そんな、大丈夫です---!」
「遠慮するなって。ほら。」
直「えっ、あ、あの-----ありがとうございます。」
カフェオレをキャンセルし、ブラックを2本購入。
ほら、と手渡すと躊躇しながらも嬉しそうに受け取る直樹。
相変わらずいい笑顔だね。
ものすごくほっこりする。
「よーいしょっと。ほら、お前も座れば?」
直「えっ、あ、はい!」
自販機の横に置かれた簡易ベンチにどっかり座り込む。
隣を叩くと直樹も素直に腰を下ろした。
「ん、お前もやる?」
直「あ、俺は大丈夫です。」
「あれ、お前タバコ吸わないんだったっけ?」
直「はい。あ、でも遠慮しないでください。煙気にならないので。」
「ありがと。でもまだいいや。コーヒー飲んでからにする。」
直「・・・・・・。」
どうぞと言われても吸わない奴の隣で吸うのはマナー違反だからな。
服に匂いが移るし副流煙ヤバイし。
ま、酒の席では遠慮なく吸うけど。
「そういや最近飲みに行ってないよな。」
直「そうですよね。随分行ってない気がします。」
「だよなぁ。」
直「香織さんは彼氏さんと上手くいってるみたいですし、透さんはプロジェクト抱えてるから忙しいですよね···」
「プロジェクト?ああ、あれはもういいんだよ。」
直「え?」
「私の役目は大方終了した。」
例のS社との合同プロジェクト。
やることはまだまだあるんだけどな。
まぁ、後はS社のエリート連中ががなんとかするだろ。多分。
直「そういうところ、透さんらしいですね。」
「え?」
何がおかしいのか、くすくすと肩を揺らす直樹。
なにやらとっても楽しそうだ。
(あぁ・・・なんて曇りのない笑顔なんだろ。)
正にピュアスマイル。
なんだか周りの空気まで清々しくなった気がする。
まるでマイナスイオンを浴びているかのようだ。
直「落ち着いたらまた食事にも行きましょうね。」
「うんうん、行く行く。」
直「約束ですよ?透さんとの食事はその···す、すごく楽しいですから。」
「え、そ、そう?」
直「はい。」
今度ははにかみスマイルを頂きました。
伴ってマイナスイオンもグンと増加。
ボロボロだったハートがギュンギュン癒されていく。
直「そ、そういえば、先週末は楽しかったですよ。」
「先週末?なんかあったっけ?」
直「司の家にお呼ばれして、そのまま朝まで飲み会でした。」
「へぇ。」
先週末といえばS社との親睦会の日。
あんまり思い出したくはないが・・・
変態とお泊まりしちゃったあの日だな。
直「ボスにもいっぱい触れたし、アルバムもいっぱい見せてもらいました。」
「ボスは羨ましいけど、アルバムはねぇ…」
前にも言ったが司はアルバム作りが趣味だ。
あの弟が夜な夜な写真整理してるなんて··
何度も言うが似合わない。
直「あ、それに忍くんとも一緒だったんですよ。」
「-------。」
あー
そう。
直「彼、写真より実際に見た方が全然綺麗でした。」
「·····そっか。」
直「本人は嫌がってましたけど。男なのに綺麗って言われるのは嬉しくないって。」
「はは、口癖変わってないんだな。」
癒しのマイナスイオンタイムはあっけなく終了した。
なんだろうこの気持ち・・・
深呼吸の最中に悪質な排気ガスをがっつり吸い込んじゃったような気分。
それにしても、最近あいつの話題が多過ぎるような気がする。
さっきなんて本人に会っちまったし・・・
---勘弁して
この一言に尽きる。
直「忍くん、透さんに会えなくて残念がってました。」
「・・・そっか。」
直「近いうちにまた帰ってくるって言ってたので、その時は透さんも一緒に集まりましょうね。」
「え···」
それは···
「私はお前と二人がいいかな。」
直「えっ」
「あいつらは男子同士、仲良くナンパにでも行けばいいじゃん。」
直「--------。」
あ、直樹も男子か。
「まぁとにかく、私はいいや。」
直「--------。」
願わくばその集まりにも誘わないでもらいたい。
「そんなことより直樹、前に行きたい店があるって言ってたよな?」
直「--------。」
「この前は---誰だっけ、晋だったか?話の途中で邪魔されたからさ。」
直「--------。」
「まだ行ってなかったら次の休みにでもどうだ?」
直「--------。」
「香織も誘ってさ、久々に3人で-----ん?」
あ、あれ・・・?
「な、直樹?どうした?」
直「-----ぇ?」
ちょ---な、なんだ?
「お前・・・顔が真っ赤だぞ?」
こっちを見つめる直樹。
その顔はまるで真っ赤に燃える夕日のよう・・・
直「-----っ!!」
「え。」
今度はなんだ。
ハッと息を呑んだかと思ったらバチン!と口元を覆いやがった。
「な、直樹?」
直「ぇ、あ、えと---っ」
「だ、大丈夫か?気分でも悪く--」
直「あ、あのっ!俺っ、そろそろ仕事に戻ります!」
へ?
「いやコラ待て待て。仕事なんかより医務室に行った方が--」
直「コ、コーヒー!ありがとうございました!大切にします!」
「は?いやいや早く飲まなきゃ冷める--」
直「それじゃ!」
「え!」
え。
え?
「・・・・・・な、なんだぁ?」
まるで逃げるように去っていってしまった直樹。
すっかり置いてけぼりを食らってしまった。
「ど、どうしたんだあいつ・・・」
恥ずかしいことでも思い出したのか?
それとも仕事頑張りすぎて熱が出ちゃったとか・・・
いやいやそんな馬鹿な。
「・・・あ。」
タイミングを見計らったかのようにカランコロンと鳴り響く音。
時刻は17時。
終業を告げるチャイムだ。
ていうかもうこんな時間?
今日は全く仕事が進まなかった。
進まなかったっていうか・・・
何かやったっけ?
「・・・よいしょっと。」
今日はさっさと帰ろう。
残業しても集中できそうにないし
そもそも残業する気力もないし
片付いてない仕事は・・・
明日木戸に押し付けようと思う。
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