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司「てめぇ透・・・お前こんなところで一体何してやがる。」
(あ、なんかデジャヴ···)
ズイ、と前に出る司。
さっきの晋と同様、腕を組み顎を引いてはるか頭上から睨んでくる。
「ぇ、あ----いや、その・・・チラッと健康診断にな。」
司「--------。」
「へへ。」
まさかこのタイミングでラスボスに遭遇するとは・・・
何たる不運。
こうなったらもう笑ってごまかすしかない。
司「ていうかお前、よくも毎日毎日懲りずに無視してくれたもんだよなぁ。」
「ぅ···」
司「一体どういうつもりだよ。」
「・・・・・・。」
場所を気遣ってか、小声ではあるがガッツリ凄んでくる司。
まぁ、誘いに関しては徹底的に無視してたからな。
お前の気持ちは分からんでもない。
「わ、悪かったよ。でも仕事が忙しくてさ。」
司「忙しくても返事くらい返せるだろうが。」
「け、携帯無くしちゃって。」
司「カバン貸せ。」
「え!···あ、あれー、こんなところに入ってたのかー。」
司「・・・ふざけんな。」
かなりお怒りの様子の司。
何度も言うが気持ちは分かる。
だが、だが···
仕方がなかったんだ!許せ!
司「まぁいい。今日会えたのはラッキーだったよ。」
「は?」
司「とにかく、今日という今日は付き合ってもらうからな。」
「え、いや、ごめん、今日はちょっと···」
司「お前なぁ---」
岡「あ、あの日下···こちらの方は?日下の知り合い?」
司「え?」
晋「···そういやお前ら、姉弟だって言ってたな。」
岡「へぇ、キョーダイ。え!キョ、キョーダイ!?」
司「え---」
「あ。」
しまった。
二人のことすっかり忘れてた。
司「す、すみません晋さん。見苦しいところお見せして。」
「見苦しいってお前···」
司「それにいつも透がお世話になってるみたいでご迷惑おかけしてます。」
「迷惑かけられてんのはこっちだけどな。」
司「なんか言ったか。」
「いえ別に。」
私と司を見比べてふーんと呟く晋。
何がビックリなのかえー!と叫ぶ岡野。
そして急にしおらしくなる司。
どうやら病院では晋の方が強者らしい。
司「ちなみに岡野、こいつ、俺の姉貴。」
「どうも、姉の透です。」
岡「おお、お姉さんなんすか!?てっきり妹さんかと!」
「あら、やだもー岡村さんたら。」
岡「岡野っすよー!」
晋・司「・・・・・・。」
おっと、こりゃ失敬。
司「ていうか聞いてくださいよ晋さん。こいつときたら付き合い悪いのなんのって。」
晋「あぁ、知ってる。」
司「久々に知り合いが帰ってきてるってのに···旅行だの仕事だのってかれこれ1週間以上逃げ続けてるんですよ?」
晋「ふーん。」
べ、別に逃げてるわけじゃ・・・
まぁ逃げているけれども。
司「夜になっても家に帰って来ないし。」
晋「···なに?」
司「一体どこほっつき歩いてんだろうなこのバカ姉貴は。」
「は、ははっ」
そりゃまあ···色々と渡り歩いてますよ。
ていうかなんなんだこの状況。
目の前に司、左手に岡野
そして右手には晋
おまけに背中は壁だし
逃げられないというか押し潰されそうっていうか···
頼む、誰でもいいからヘルプミー。
司「とにかく、今日くらいどうにかならないのかよ。」
「え・・・だからそれは--」
司「忍、明日帰っちまうんだぞ?」
「え---?」
晋「・・・シノブ?」
明日、帰る···?
司「忙しいなら仕方ないって言ってるけど・・・忍のヤツ、本当はお前に会いたがってんだぞ。」
「------。」
司「かれこれ1年以上会ってないだろ?あいつもなかなか帰って来れないし、ちょっとだけでも時間作れないのかよ。」
「------。」
岡「なぁなぁ日下、忍ってもしかして四宮さんのこと?」
司「え?あぁ、まぁ···」
岡「やっぱり!幼なじみって言ってたもんな!」
晋「幼なじみ・・・」
岡「ていうか四宮さん明日帰っちゃうのか。残念。」
男共が何か喋ってるが···
全然頭に入ってこない。
---明日、帰る
それってつまり
またしばらく、平和な毎日が戻ってくるってことで・・・
(やっ、た・・・)
司には悪いが・・・
正直な気持ち、ホッとした。
だって···
この一週間、気が休まる時がなかった。
仕事しててもご飯食べてても、いつの間にかアイツのことを考えてしまう。
もし泊まってるホテルがバレたらどうしようとか
運悪く偶然八合わせたらどうしようとか
そんなことばっかり考えてしまって---
夜もろくに眠れない。
激しく不本意だが、まあ眠れたのは親睦会の後変態と過ごしたあの夜だけだ。
司「おい、聞いてんのか透。」
「へ?」
司「···なにニヤけてんだよ気持ち悪い。」
「んだと。」
司「で、今夜は?時間作れないのか?」
「ぇ---」
今夜・・・
今夜まで我慢すれば
またしばらく安心出来る---
「え、と・・・ごめん司。残念だけどやっぱり今日は--」
『あれ?そこにいるのって------司?』
(ぇ----)
ド、クン···
なんの前触れもなく
岡野の後から飛んできた声。
心臓だけじゃない···
全身に、ドンと衝撃が走った。
岡「あ!噂をすれば、四宮さん!」
『噂って、俺の?』
司「お、ちょうどいいところに来たな。」
『え?』
晋「?」
シノ···ミヤ···?
そんな···まさか----
でもこの声--
(なんで-----なん、で·····)
忘れるはずがない
忘れられるはずがない
この···少し低めのハスキーボイス。
ドクン、ドクンッ--
心臓がバカみたいにでかい音を鳴らす。
呼吸もなんだか苦しくなってきて···
コワイ・・
声の主を確認するのが、怖い--
『こんな所に集まって何やってるの?』
「------っ!」
現れたのは岡野よりも頭一つ分飛び抜けた長身。
司に向かってにっこりと笑いかけて
そして---
(な、なんで・・・)
なんでお前がここに----
『え------透?』
視線が繋がったその瞬間
世界が真っ暗になったような気がした。
今日はツイてない一日だとは思ってた。
でも---
これはあんまりだろ。
(頼むよ------)
誰か···
誰か夢だと言ってくれ···
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