ありがとな・・・

ありがとな07 realReal







「まだそこにいるか?」








ビックリした。






「・・・いる。」
「・・・そっか。」






まさか、声が聞こえるとは思ってなかった。






---トン






背もたれたんだろう。
玄関が少し揺れた。






「お前さ、気付いてたのか?」
「!」






核心を突く、ストレートな質問。






「・・・ああ」
「・・・そっか。」






下に向かってズルズルと音がする。
座り込んだのか?





「おい、立て。とりあえず中に」
「開けるな。」
「え?」
「開けるなよ。このままでいい。」
「・・・。」






ドアを開けようとしたら止められた。

相当辛いのか。
相変わらず声が弱々しい。






「・・・分かった。」
「・・・ありがと。」






無理矢理開けることは出来る。

だが、やめた。

代わりに俺も座った。





玄関をはさんで背中合わせ。





なんとなく、背中が温かい。






「私さ。」
「ああ。」
「戻るみたいだ。」
「・・・ああ。」
「ビックリだよな。なんで今更って感じ。」
「・・・そうだな。」



「高校生も結構楽しかったんだけどな。」
「・・・。」
「勉強はやっぱり嫌だけど。」
「・・・なぁ。」
「なんだ?」



「・・・戻らないとダメなのか?」
「うーん・・・」
「・・・。」
「・・・ダメみたいだな。自分じゃどうこう出来そうにない。」
「・・・・・そうか。」






無意識に、ため息。






「迅。」
「ん?」





「色々ありがとな。」





「・・・別に。」
「お前がいて、助かった。」
「・・・。」
「マジでありがと。」
「・・・気にすんな。」




「黒田とアラタにも伝えててくれよ?」
「・・・ああ。」
「アラタは泣くかな。」
「泣くだろ。」
「そうか。」
「ああ。」






背中の向こうで、小さく笑う声が聞こえた。






「勉強がんばれよ?」
「ああ。」
「医者になれよ?」
「ああ。」
「応援してる。」
「・・・ああ。」








「はぁ・・・・・」

「?」








ため息・・・?








「なぁ、迅。」
「なに。」









「明日になったら・・・私のことは、忘れろ。」









「は?」








忘れる?








「何言ってんだ。忘れられるわけないだろ。」
「それでも忘れろ。忘れるように努力しろ。」
「・・・ふざけてんなら怒るぞ。」
「ふざけてなんかない。」






何を---






何を言ってんだこいつは。






「顔見せてみろよ彰。どんな顔してそんなこと---」
「開けるなよ。」
「だから---」
「頼むから・・・開けないでくれ。」
「---!」






弱々しくて

そして震える声







もしかして、泣いてる?








「・・・とにかく忘れろなんて言うな。また会えるかもしれないだろ。」
「もう、会えないと思う。」
「は?」
「もう二度と会えないと思う。だからさっさと忘れろ。」
「----っ!」







---二度と、会えない