「座れば?」
「うん。」
隣にやってきてそのまま地面に座った西本。
勧められるまま素直に座ると温かいお茶をくれた。
なかなか気が利くね。
「あったけー。」
「だろ。」
「当番、もう終わったのか?」
「・・・黒田に押し付けてきた。」
「なるほど。」
ドンマイ黒田。
「そうだ、今日の夜は何食いたい?」
「たこやき。」
「たこやき?それって今食べたいもんだろ。」
「そうかも。」
まぁ気持ちは分かる。
確かにそろそろ腹が減ってきた。
「いい天気になって良かったよな。ちょっと寒いけど。」
「そうだな。」
「売り上げNO.1も取れそうだな。プレゼントってなんだろ。ちょっと楽しみ。」
「取れるのか?」
「あれだけ客が来たんだぞ。取れるだろ。」
「ふーん。」
ぽかぽか太陽の光を浴びながら世間話。
うーん、お茶が美味い。
「なぁ。」
「なんだ?」
「さっき・・・」
「ん?」
「さっき、橘に呼ばれた。」
「橘?」
ふーん。
それで?
「大学、なんとかなりそうだって。」
「え---」
思わず西本を見上げた。
だって、だって大学---?
「お前と話してから橘に相談した。」
「・・・。」
「そしたら・・・すっげぇ喜んでた。絶対なんとかするって。」
「・・・。」
ま、まじかよ!
「黒田とアラタにも話した。」
「うんうん、それで?」
「アラタが泣いた。」
「ぷっ!」
さすがアラタ。
期待を裏切らない。
それにしてもビックリした。
いつのまに行動してたんだこいつは。
それに
いやその前に---
「良かったな!」
本当に、本当に良かった!
「これで心置きなく勉強できるな!」
「ああ。」
穏やかに微笑む西本。
うんうんいいよ。
ぶっ倒れそうなくらい美しい笑顔だ。
「いやぁめでたい!今夜は祝杯だな!」
「なぁ。」
「なんだ?」
(え---?)
じーっと見つめてくる西本。
そしてその顔が
真剣な表情に変わっていく。
「お前、まだ戻りたいと思ってるか?」
「え?」
「元の自分。」
「元の自分?」
そりゃ戻れるなら・・・まぁ・・・
「ていうか戻りたくても戻れな」
「そういう意味じゃねぇ。」
「へ?」
どういう意味?
「応援するんだろ?」
「え?」
「俺の夢、応援するんだろ?」
あ、ああ、そういうことか。
「当たり前だ。応援する。」
「本当か?」
「本当だ!」
「じゃあ、ずっと傍で応援しろ。」
「おぅ!任せろ!」
戻りたくても戻れない。
でもそれが理由じゃない。
友達として仲間として。
何があってもお前のことを応援するぞ。
(うぉ!)
思わず仰け反ってしまった。
なぜなら満足そうに笑ったこいつの顔が
気絶しそうなくらい綺麗だったから。
(い、いかんいかん・・・)
慌てて目を逸らした。
ちょっとドキッとした。
こいつのこれは心臓に悪い。
「さ、さてさて希望も見えたことだし!そろそろ行くか?」
キュッとお茶を飲み込み話題を変えた。
ま、動揺を隠すためだな。
ドキッとしましたなんて絶対悟られたくない。
「あ、そうだ、たこやき買いに行こう。腹も減ったしあいつら・・も・・・」
途中で言葉が失速した。
「えっ・・・」
なぜなら西本の手がゆっくり近づいてきて
包み込むように、頬に触れたから
(な、なに・・・?)
目を逸らせない。
だって、そんな真っ直ぐ見つめられたら・・・
まさかまさかの—?06 realReal
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