「いらっしゃいませぇ。ご注文は何にしましょうか。」
「あんた、佐野彰だよね?」
「へ?あ、はい。佐野彰です。」
「あんたさぁ。ちょっと調子に乗り過ぎなんじゃない?」
「え?」
次のお客様は3人組のキュートな女子高生。
名札の色から・・・君達は3年生だね。
(やめて。そんなに睨まないで。)
3人ともすっごく睨んでる。
今にも噛み付いてきそうな怖い顔してる。
(なんでだよ・・・)
気分を入れ替えたばかりだってのに・・・
周りもざわついてきたし
隣のアラタは震えてるし
助けてほしいが西本&黒田は女子に囲まれて見えないし
(くっそー)
仕方が無い。
がんばれ彰!
「ちょっと聞いてるのぉ?」
「えーと、調子に乗ってすみませんでした。それでご注文は」
「あんた西本クンの何なわけ?」
「友達です。で、ご注文は」
「友達ぃ?ただのクラスメイトでしょぉ?」
「クラスメイトで友達です。」
多分笑えてない。
でもがんばって笑顔を作る。
「図々しいのよあんた!」
「すみません、気をつけます。でもあのそろそろ注文」
「彼女でもないくせに西本クンにくっつかないで!」
「そうよそうよ!それに黒田君とアラタ君にもベタベタしてるんでしょー!?」
「えー!なにそれ!」
「「さいてー!!」」
「・・・・・。」
(助けろアラタ。)
見えないところで足を蹴ってみた。
全く反応なし。
どうやら完全にフリーズしている模様。
(あーもう、全く・・・)
「さっきも言ったけど気を付けます。」
「どぉだかー!」
「分かんないよねぇ!」
「あの、後もつかえてるんで注文」
「とにかく!これ以上西本クン達に近づかないでよね!」
「行こ!」
「うん!行こ行こ!」
「・・・。」
言うだけ言って満足したのか。
鋭い睨みを置き土産に女子達は背中を向けた。
そしてそのまま立ち去っ
「ちょっと待てコラー!!」
寒空を、私のビックボイスが貫いた。
きゃーきゃー言う声もヒソヒソ言う声もピタッと止まる。
しーんと静まる女子達。
せっかく楽しんでるところごめんね皆さん。
でもね!
「散々時間取らせておいて何も買わないとは何事だー!」
「「「え・・・」」」
「後を見ろ!この寒い中どんだけ皆さんが我慢して並んでたと思ってんだ!」
「「「・・・。」」」
「いいか!冷やかしならよそでやれ!」
「「「・・・。」」」
「とにかく君達!一本買って行きなさい!」
「「「・・・。」」」
(はっ---!)
正に(はっ---!)だ。
気付けば周りは水を打ったようにしーん、と静まり返ってた。
「え、えーと・・・ご注文は?」
3人の女子は消え入りそうな声で「ウ、ウーロン茶を・・・」とつぶやいた。
そして今の今までまとまりの無かった後列のお客さんが綺麗な直線に並んだ。
まるで軍隊のようだ。
「こ、これ、お釣り」
「「「ありがとーございましたー!」」」
そして女子3人はお釣りを引ったくり、なりふりかまわず走り去っていった。
(や、やってしまった---)
終わった。
私の平穏スクールライフが終わったー!
「コ、コーラをお願いします!」
「わわ、私はオレンジをください!」
なぜか緊張した顔で注文してくるお客さん。
さっきまで無遠慮にジロジロ見てきてたのに、今じゃ目も合わせてくれない。
「どど、どうぞー!ありがとうございましたっ!」
「・・・。」
なんとか復活を果たしたアラタがギクシャクしながらお客さんに対応。
私は---ショックでプチ放心。
(ウソだろ・・・)
高校生活はあと1年以上も続くんだぞ?
それなのになにこれ。
嫌われるだけならまだしも怖がられるなんて・・・
そんな学園生活ありえない。
ていうかイヤだ!
(くそ!あいつらのせいだ!)
半分八つ当たりでお向かいさんを睨む。
(・・・・・。)
西本、中笑い。
黒田、大爆笑。
かなり、むかつく。