とある女子への考察

とある女子への考察02 realReal





(ちょ、ちょっと・・・)





誰、あなたは誰。

こんなの俺の知ってる迅さんじゃない。

なんていうかその・・・







すっごくカワイイ。







じゃなくて!







(初めて見た・・・)







こんな穏やかな顔の迅さん、初めて見た。







そもそもなんでこんなことになってるかというと






「え!ちょっと!放せ西本!寝るって言ってるのが聞こえないのか!」






先ほどの豪快な抱擁事件の後、迅さんは寝ると言い張る彰ちゃんを自宅へ強制連行。

そのまま浴室へ押し込めドアを閉めて





「温まれ」





そう言い捨てた。





「出せ!開けろ!」としばらく暴れていた彰ちゃんだったけど

「上がったら帰るからな!」としぶしぶ言うことを聞いたみたい。




その後黙って家を出て行った迅さん。

そしてなんと女の子の服を持って帰ってきた。

それを浴室に置きドアを閉めて、やっと俺たちの待つリビングに戻ってきた。






「あー、いいお湯でした。ありがとうございました。それじゃ!」
「待て。」






ろくに髪も拭かずに浴室から出てきた彰ちゃん。

そんな色っぽい様子にちょっとドキッ・・・

じゃなくて。

そのまま玄関に向かう彰ちゃんを迅さんがとっ捕まえて---





そして今に至る。






「ところで佐野。あんなびしょ濡れになるまで何してたんだ?」






突然割り込んできた声にハッとする。

主は黒田。
そういえばコイツのことをすっかり忘れていた。



黒田とは幼稚園からの付き合い。
良く言えば幼なじみ、はっきり言えば腐れ縁。以上。





「あー、その、えっと・・・」





黒田の質問に言葉を濁す彰ちゃん。
そして彰ちゃんをジッと見つめる迅さん。

そういえばマジでどこに行ってたんだろう。






「あーもう、分かった。」
「・・・。」
「お前には心配掛けたもんな。明日話そうと思ってたんだけど今でもいっか。」
「・・・。」
「その前に飲み物もらっていい?お前らも用意してんだろ?喉乾いたし、いいか?」






黒田ではなくなぜか迅さんに許可を求める彰ちゃん。

迅さんはというと少し怪訝そうな顔をして俺と黒田を見る。

意味が分からない。
ていうか言ってる意味も分からない。





「ほらアラタ、ジュース出せ。」
「え!あ!はい!」





突然呼ばれてビクッとした。

どうやら放心してたらしい。
彰ちゃんに言われるままお菓子セットをテーブルに並べた。





「私のはそれじゃなくて。そっちの袋取って。」
「はい、どうぞ!」
「サンキュー。」
「いえいえ---ってダメー!それビールじゃないっすか!!」
「そうだぞ。」
「そうだぞって---あぁぁ!開けちゃったー!」
「うるさいな、叫ぶなよ。」





ガサゴソと袋から取り出したのは缶ビールだった。

そしてなんの躊躇も無くプシュッと開ける彰ちゃん。
慣れてるように見えるのは気のせいだろうか。





「お前らは飲むなよ?お酒は二十歳になってからだ。」
「彰ちゃんも同い年でしょ!」
「見た目はな。でも中身は立派な大人だ。」
「へ。」
「全国の皆さんいいですか!お酒は二十歳になってからですよ!!」
「だ、誰に言ってるんすか?」
「全国の皆さんって言っただろ。」
「・・・。」





缶ビールを高らかと上げて全国の皆さんに注意を呼びかける彰ちゃん。

そしてカンパーイ!と俺らのジュースに缶を当てて







「かーっ!やっぱ風呂上りの一杯は美味いわ!!」







350ml缶を一気飲みした。






「・・・。」
「・・・。」
「・・・。」






男子3人、声も出ず。








佐野彰ちゃん。






ほんの少し前に転校してきた女の子。

特別可愛いわけでも綺麗なわけでもない。
言葉遣いが男の子っぽい点を除けば普通の女の子。







だと思ってたのに







「アラタ、もう一本取って。あ、いいや。袋ごとちょうだい。」
「は、はい!どどどうぞ!」
「サンキュー。」








さすが女嫌いの迅さんが気にするだけある。








この人は普通の女の子なんかじゃない。









変人だ!