「だから惚れたとか興味があるとかそんなんじゃない。」
「ふーん。」
「それにあいつは・・・」
「あいつは?」
「・・・。」
「え・・・」
(ダメだ・・・)
なんかダメだ。
あいつのこと考えると
あいつはいなくなったんだって思うと
なんだか胸がズキズキする。
「・・・迅?」
「ごめんけど・・・あいつの話はもう」
「あー!!彰ちゃんいけないんだー!!これってアルコールじゃないっすか!」
「バカ!でかい声出すな!!」
一瞬、耳を疑った。
---あいつの話はもうやめてくれ
そう言いかけた時
アラタのでかい声と
あいつのでかい声が聞こえた。
「ていうかなんでびしょ濡れなんすか!風邪引いてんのにダメじゃないっすか!」
「ああ、急に降ってきたからな。その前に風邪ってなに。風邪なんか引いてないけど。」
「もー、彰ちゃんのウソツキ。俺は全部知ってるんすよ。」
「ワケ分からん。ていうか彰ちゃんて呼ぶなよ大崎。彰さんと呼べ。」
「えー!!イヤっす!」
どんどん近づいて来る声。
そして階段を上がってくる足音。
「おい・・・迅?」
体が動かない。
玄関を凝視したまま瞬きすら出来ない。
「そうだ。今から迅さんの家で歌番見るんすけど彰ちゃんも一緒にどうっすか?」
「歌番?あー、あれか。」
「ほら!お菓子も飲み物もあるんで!」
「へぇ、楽しそうだな。でも遠慮しとく。今から風呂入って晩酌して寝るんだよ。」
「あ、そっか。風邪引いてるんでしたね。」
「は?」
近づくにつれて鮮明に聞こえる声。
そしてそれらは隣の家の前で止まった。
「うぉ!なんだこれ!なんで家の前に椅子が!」
「え、自分でやったんじゃないんすか?」
「やるわけないだろ!うわ、重いなこれ。ちょっと手伝えよ大崎。」
「アラタでお願いします!」
「・・・早くしろアラタ。」
「がってん!!」
ガサガサとビニール袋を置く音。
そして
---ガタガタ
「-----っ!!」
何を躊躇してたのか分からない。
けどその音が聞こえるまで動けなかった。
「え、ちょ---迅!?」
今日、玄関に走るのは二度目だ。
思い切り開け放つのも二度目だ。
そして
「ど、どしたの西本。そんな激しく開けたらドアが壊れるぞ。」
あいつと、目が合った。
「あ、そうだ、今朝は悪かったな。少しは眠れたか?今日は早めに寝た方が---」
途中までしか聞こえなかった。
いや、途中までしか話せなかったのか。
「え、えっ・・・・迅さん?」
すぐそこで、戸惑いを含んだアラタの声。
でも、そんなの気にしてる余裕はない。
「ど、どうしたんだ?」
「・・・。」
「あれ、もしかして私がいなくて寂しかったのか?」
「・・・うるせぇ、黙ってろ。」
「・・・西本?」
「・・・。」
帰ってきて良かったとか
また一緒にいられるとか
どこ行ってたんだよとか
勝手にいなくなるなとか
嬉しいやらムカつくやら
頭の中が見事にぐちゃぐちゃだ。
でも雨に濡れたこいつの顔が
元気な声と裏腹に今にも泣き出しそうな顔してて
気付いたら、抱きしめてた。
「もしかして心配してくれたのか?」
「・・・。」
「なんか、ごめんな?」
「・・・別に。」
ポンポンと背中に響く振動。
妙に安心してしまって
抱きしめる腕に力を入れた。
なんか気になる14 realReal
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