「お邪魔しまーす。へぇ、片付いてんだな。」
部屋の中は極めてシンプル。
テーブルも棚もベッドも全て黒。
ベッド横のカーテンだけが唯一色のあるグレー。
簡単に言うと---全体的に黒い。
「お前、料理できるのか?」
「出来るに決まってんだろ。私を何歳だと思ってんだ。」
「・・・何歳なわけ?」
「それは内緒。自分では永遠の二十歳と思ってるけど。」
「・・・。」
「キッチン借りるぞ。」
「あぁ。」
がさごそと食材を取り出す。
包丁、まな板、フライパン・・・OK。
調理できるだけの道具は揃っているようだ。
「チャーハンでいいだろ?」
「あ、あぁ。」
「どうした?他のがいいのか?」
「・・・。」
ボーっと突っ立ってこっちを見ている西本。
まさか毒を盛られると思ってるんじゃ・・・
なんて失礼な。
「安心しろよ。毒なんて---」
「・・・手伝う。」
「は?」
「・・・何か手伝う。」
「え、あ、そう?」
プイッと目を逸らす。
そしてなぜだろう。
ちょっとだけ顔を赤らめやがった。
「もしかして・・・女子にご飯作ってもらうの初めて?」
「・・・。」
「ひょっとして照れてる?」
「・・・そんなんじゃねぇ。ほら、何すればいいんだよ。」
「あー、じゃぁこれ洗え。」
更に頬が紅く染まる西本。
どうやら照れているようだ。
「そんなに嬉しいなら彼女に作ってもらえばいいのに。」
「嬉しくない。それに彼女はいない。」
「え、あんなにモッテモテなのに?」
「・・・・・これ。」
「ああ、サンキュ。」
なぜこいつがモテるのを知ってるか。
それは学校で目の当たりにしたからだ。
とにかく見られる。
とにかく騒がれる。
とにかく、すごい。
ま、これだけのイケメンじゃ仕方ないか。
「お前ならどんな子でも好きになってくれるんじゃないか?選り取りみどりじゃん。」
「女は信用できない。体の関係だけで十分。」
「ふーん、そうなんだ。あ、それこっちにちょうだい。」
まぁ大人には色んな事情があるからな。
多くの経験を経て「愛なんて必要ない」という考えに至る奴もいるだろう。
きっとこいつも色んな経験を---
「ってお前!まだ高校生だろうが!」
「そうだけど。」
「更生しなさい!」
「はぁ?」
体の関係だけで十分なんて・・・
なんてデンジャラスな高校生だよ。
「さ、出来たぞ。」
喋ってる間に作り終わった。
さすが私、仕事が早い。
「じゃ、いただきまーす。」
「・・・いただきます。」
テーブルを囲んで手を合わせた。
「美味いか?」
「・・・。」
黙々とチャーハンを口に運ぶ西本。
そしてチラッとこっちを見て、頬を染めたまま黙って頷いた。
(・・・・・。)
なんだよお前。
ちょっとだけカワイイじゃないか。
「よーし。それじゃあ彼女がいない西本君の為に!お姉さんが毎日ご飯作ってあげよっか?」
そして私は調子に乗った。
「・・・食ったら帰れよ。」
「え、なんで。」
「帰れ。」
「嫌だ。」
素直じゃないな西本。
誰か、ウソだと言って02 realReal
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