そこからはほとんど覚えてない。
気付いたら瀬尾に止められて
男は地面に蹲ってた。
そして今
有希に見上げられてる。
(・・・あの時と同じなのか?)
停電の時、触れたら更に怯えられた。
簡単には触れられない。
「有希・・・・もう大丈夫だ。」
他に気の利いた言葉があればいいのに。
だが情けねぇ・・・
これしか思いつかない。
(どうすれば・・・・・いい?)
あの時の真樹のように踏み込むべきか?
でも----出来るのか・・・俺に・・
有希も動かない
俺も動けない
しばらく、沈黙が続いた。
「・・・・こ・・・う。」
「-----!」
沈黙を破ったのは有希。
(俺の・・・・名前・・・)
どうやらあの時のようにパニックに陥ってるわけではないようだ。
それなら・・・
(触れても・・・大丈夫か?)
そう思うのに手が動かない。
普段は好き勝手やってるくせに
こういう時に限って役に立たねぇ----
「------っ!!」
突然のことに息を呑む・・・
有希が近づいてきたのは分かった。
そして気付いたら・・・
有希が胸の中にいた。
有「----っ、---、--」
「有希・・・」
声を出さずに泣く有希。
その体は小さく震えていて・・・
「もう-----大丈夫だ。」
有「・・・・・っ・・・ん。」
恐る恐る抱きしめてみた。
震えが---大きく伝わってくる。
有「怖かっ、た・・・・・」
「-----!」
聞こえるか聞こえないかの小さな声。
だが今まで聞いたことのないこいつの弱音が
はっきりと聞こえた。
「お前は、俺が守る----!」
このまま消えてしまうんじゃねぇかと思った。
無意識に腕に力が篭る。
壊さないように
だが、強く抱きしめた。
「有希・・・・・」
胸がズキズキする。
痛くてたまんねぇ。
有「・・・・ごめん、もう大丈夫だ。」
「・・・・・・。」
どのくらいそうしてたのか。
もぞもぞと動き出したかと思えば---
大丈夫だと?
瀬「孝さん!迎え来ました!行きましょう!」
そんなわけあるか、と思いつつも
ちょうど同時に瀬尾から声を掛けられた。
「----あぁ、分かった。」
迎え頼んでくれたのか。
助かった。
「歩けるか?」
有「あぁ、大丈夫。」
「ほら。」
有「・・・・・。」
手を差し伸べると、なぜか躊躇する有希。
「どうした?」
有「・・・・・反対の手、貸してくれ。」
「なんで。」
有「・・・こっち、捻ってんだ。」
「・・・・・・・。」
弱々しく笑って見せる有希。
そして胸の前に重ねた手に視線をやると
右の手首に指の跡。
手を捻ったって・・・
締め上げられたってことか?
指の跡が残るほどに、強く----
『五十嵐!早く!』
「・・・あぁ。」
(あのヤロー、絶対許さねぇ・・・)
釈然としないまま反対の手を掴む。
そして迎えの車に乗り込んだ。