『あいつが持参した物には口を付けるな。』
孝に口を酸っぱくして念を押された。
え、食い物飲み物に何か入れる奴とかいるのか?
まぁ・・・言われなくても飲み食いするつもりは無いけれども。
「こ、こんばんはー。」
『よぉネネ、久しぶりだな。』
「うん。もう会うことはないと思ってたけど。」
『言うじゃねぇか。』
「まぁね。」
本性さらしちゃったんで。
もはや猫を被る必要はないかと。
ちなみに今日は連れが2人いる。
これまた悪そうな奴らだ。
「どうしたんだ?なんで私を指名したの。」
『俺の女にするって言っただろ?』
「・・・まだそんなこと言ってんのか?物好きなんだな。有り難いこって。」
『くっ・・・面白ぇ女。ますます気に入った。』
「へぇ。」
もはや可愛いフリをする必要は無い。
『お前が店に出る日を楽しみにしてたんだぜ?』
「へ?」
『ルミに頼んでさ。お前が来たら連絡入れるように言ってたんだ。』
「・・・・・・。」
なるほど。
度重なる偶然はそういうことだったのか。
「ルミちゃん、お前のこと気に入ってたのに。可愛そうな扱いするんだな。」
『しょうがねぇだろ?女は皆俺に惚れるんだよ。俺に頼られてあいつも喜んでると思うぜ?』
「おモテになられるようで。」
『お前以外にはな。』
心底楽しそうに笑いを漏らすガキ。
一体何考えてんのか・・・
なんか嫌な感じだな。
「あのさ、この際私のことは女として見るなよ。友人としてなら案外うまくいくかもよ?な!友達になろう!」
『今更無茶言うな。俺はお前が欲しくてたまらねぇんだよ。』
「あっそ。じゃぁ早く夢から覚めることだな。」
『はっ!口の減らねぇ女だ。だからこそ落とし甲斐がある。』
「さっさと目を覚ませ。女なら周りに腐るほどいるだろうが。」
『お前みたいな女はいねぇよ。』
・・・・・チッ
なにが楽しくて私なんぞに構うんだこいつは。
珍しい生物が欲しいならペットショップに行け。
『おいネネ。今日はいい酒を持ってきた。飲めよ。』
「あぁサンキュ。ゆっくり味わって飲ませてもらうよ。」
『今飲めよ。』
「強制する男は好きじゃない。」
『・・・・・まぁいい。ちゃんと飲めよ。』
「もちろん。酒には目がねぇんだ。」
ど派手なボトルに入った琥珀色の酒。
孝の睨んだ通りこいつは酒を持参してきた。
そして飲ませようとヤケに勧めてくる。
臭いで強いってのは分かるけど・・・
何か入れてんじゃねぇだろうな。
(簡単には飲みませんよー。)
この時代、何があるか分からんからな。
警戒警戒。
ス「ネネさん、お願いします。」
「!」
やった、ボーイさんが呼びに来てくれた。
ナイスだ君、いい仕事してる!
心の中で両手親指をカッ!!と立てた。
「ごめんね、今日も指名が被っててさ。」
『全然構わねぇよ。だが・・・俺はお前を逃す気はねぇってこと、ちゃんと理解しておけよ。』
「・・・・・・・怖いな。」
『あぁ、俺は怖いぜ?』
「・・・・・・・・・・・。」
不気味に口角を上げるガキを背に席を後にした。
得体のしれない不穏な空気・・・
なんか-----嫌な感じがする。
「・・・・・・ただいまー。」
孝「あぁ。」
孝がいる席に戻ってきた。
なんか疲れた・・・
もうこのまま帰りてぇよー。
「・・・・なぁ。」
孝「?」
「あのさ・・・今日、終わるまでいてくれねぇ?」
孝「・・・・・・。」
安心しろ。
料金は私が持つ。
・・・半分くらいなら!
孝「そのつもりだ。」
「・・・・・ありがと。」
孝「・・・何かされたか?」
「いや別に。そういうわけじゃない。」
何かされたわけじゃない。
何かされたわけじゃない、けど・・・
なんか、ね。
「心配するな。ただお前と飲みたいだけだ。」
孝「・・・・・・。」
「本当だって。」
孝「・・・・・・。」
すっげぇ不審そうな目を向けられる。
(あーあ・・・)
孝にはあまり心配かけたくなかったんだけどな。
最近不機嫌オーラが強いし
もしかしたら悩みを抱えてるのかもしれないし
刺激したくないってのが正直なところだ。
それにしても・・・
「なーんでかなぁ・・・やっぱ年下とは相性悪いんだろうなぁ。」
思わず独り言。
年下の男子は基本苦手だ。
何かとトラブルが発生してしまう。
何故だ。
私が悪いのか?
年上だの年下だの、年を取る毎にそんなこと言ってられなくなるんだろうが・・・
どうしても苦手意識が消えない。
そして今回のことで更に嫌になった。
孝「年下・・・・ダメなのか?」
「基本な。」
孝「そう・・・・か。」
「でも純君とか累たんは好きだぞ。可愛いと思う。」
孝「・・・・・・俺は?」
「お前は・・・・・あれ、お前って年下だったっけ?」
「・・・あぁ。」
そうだったっけ。
「年下って感覚が全然なかった。・・・なーんかごめんな。私がもっとしっかりしないといけなかったんだな。」
孝「は?」
最近こいつが不機嫌な件に関してね。
私って一応管理人だし
改めて年上だし
もっと気に掛けてあげられるようにしよう。
管理人の仕事なんて無いに等しいんだ。
ちょっとくらい皆様のお役に立つことをせんといかんでしょう、うん。
孝「なに言ってんだ?」
「分かんなくていいよ。」
いやいやちょっと待て。
違う違う。
そのことは家に帰ってから考えよう。
とにかく今は
今日のこの状況をなんとか切り抜けたい!