「お久しぶりだね!」
「え・・・・・?」
隣の男性に声を掛けられてちょっとビックリ。
ていうか・・・誰だっけ、この人。
「あれ。忘れちゃったかな。ほら、パーティーの時に散々失礼なこと言っちゃった・・・」
「パーティー?えーえーぇぇぇああぁ!」
驚きのあまり変な相槌が出た。
こいつ、あの時の孝の同期じゃん!
びっくりー。
「お久しぶりですね!」
「本と!あの時は本当にゴメンね?失礼なことばっか言って。」
「え?何か言いましたっけ・・・」
「懐深いなぁ。」
同期のこの男。
瀬尾君というらしい。
あれだけ話しといて名前も聞いてなかった。
「そりゃそうだよ。なんせ五十嵐と付き合ってんだから。懐くらい深いに決まってる。」
連れは2人いた。
瀬尾君に見覚えがあったんだ。
恐らくこちらの方もパーティーでお目にかかってるはず、です・・・・がぁぁぁ!!??
「てってめ!!くど----!」
思わずでかい声が出そうになった。
予想していたのか、すかさず孝が口を塞いでくれた。
ひとまずサンキュー。
『く、工藤・・・・てめぇ、よくもそんな爽やかな顔で私の前にのこのこ出て来れたもんだなぁ・・・・・』
瀬「え。」
サ「ネネさん!?」
「・・・・・・・2人とも違うよ。今のは私じゃなくて孝が言ったんだよ。」
瀬・サ「そ、そうですよねー。」
苦しすぎるノリに合わせてくれた。
サンキュー君達。
「それにしても・・・・・工藤てめぇ---」
せっかく合わせてもらってなんですが。
もはや落ち着いてはいられない。
工「俺は改心したんだ!」
「・・・は?」
拳を硬く握り熱弁体勢に入る工藤。
なんだ、手短に頼む。
工「五十嵐は確かにいい男だ。技術もある。仕事も出来る。」
孝「良く分かってるじゃねぇか。」
工「だが俺も負けてないと思ってた!」
瀬「ふんふん。それで?」
工「だが・・・・この前のパーティーで思い知らされた。」
サ「何をですか!?」
「・・・・・・。」
なんですかこのやり取りは。
なんかの会合ですか。
てかサオリちゃん、いつもすみませんね。
工「有・・・いや、ネネさんのような女性を手に入れてこそ初めて!そしてそんな女性を扱える度量を持ってこそ初めて!男として一人前に成れるんだってことが!」
瀬・サ「おぉぉぉ!」
工藤・・・・・キャラ変更したんすか?
「孝、なんだこれは。」
孝「面白ぇだろ?」
「・・・・・。」
ドS様にとってはさぞ面白い光景に違いない。
今まで自分に逆らってきた存在が今や自分を崇める存在に転向。
上から見下すだけ見下せる地位を獲得できたわけだ。
それよりも最後のはどう解釈すればいいんでしょうか。
工藤の奴、偉そうに熱弁したが大変失礼な発言連発だったと思います。
孝「まぁ、今日は瀬尾と2人で来ようと思ってたんだけどよ。工藤が着いてきちまった。」
「着いてきちまったって・・・別にお前も無理して来る必要はなかったんだぞ。」
孝「・・・一回くらいお前のドレス姿見てもいいだろ?」
「え?」
それはそれは自然に
肩を引き寄せられた。
そして-----額に、キス
「どっ-----どうしちゃったのお前!」
そりゃ叫ぶだろ。
焦る、普通に焦る。
今日も初っ端から爆弾攻撃だ。
孝「お前よぉ・・・」
「な、なに---」
周りに聞かれたくないのか
首元に顔を埋めてきた---
孝「その格好・・・・可愛すぎ。」
「え。」
え。
「えっ!?」
なななななんだ!?
コノヤローもう酔ったのか!?
事実、今日も強めの酒をを入れてくれている。
い、いやいやでもお前そんな簡単に酔わないだろ。
焦りからか、孝の手から伝わる熱が余計に熱く感じる。
「---------そ、そりゃ・・・どうも・・・」
孝「・・・・マジで。」
「や、止めろよ。なんか・・・・緊張すっから。」
孝「へぇ。」
やっぱ変だ、こいつ。
態度はいつも通りだが・・・
なんだか行動が熱っぽい。
(風邪か?最近めっぽう寒くなったから・・・)
そういうことにしておこう。
帰ってから薬を飲ませてやらねばなるまい。
工「だから俺は、ネネさんに会えたのは運命だと思ってるんだ!」
「・・・は?」
孝「・・・おい、なんのつもりだ工藤。」
どうやら演説はまだ続いていたらしい。
急に耳に入ってきた工藤の言葉。
お前も酔っちまったのか?
工「だから運命を感じたんだって!最近はめっきり遊ぶの止めてるみたいだが・・・ネネさん!」
「な、なんすか!?」
工「絶対泣かされる日が来るから!」
「は・・・」
孝「・・・・・・。」
瀬「ちょ---工藤さん!酔ってますよ!お酒控えて!!!」
工「その時までに俺、立派な奴になるって誓ったんだ!だからその時が来たら-----俺と付き合ってくれよな!」
「・・・・・・・・・・。」
く、工藤くーん。
もしかして・・・・
君ってお酒弱かったんだね。
孝の表情は無に。
瀬尾君とサオリちゃんは青ざめてしまった。
(ったく、仕方ねぇなぁ・・・)
瀬尾は分かんねぇけど、工藤は『私=孝の女』だと思ってんだもんな。
まぁ、仕方ねぇ。
アフターフォローも仕事の一つってね。
「おい工藤。」
工「はい!」
「私は医療のことは分かんねぇけどな。」
工「はい!」
「例えお前が技術や人望で孝を上回ったとしてもな。」
工「はい!」
「もしそんな天変地異が起こっても。私は孝を選ぶ。」
工「・・・・・・・・・・・・・。」
「だからお前も自分に合ったプリチーな女を探せ。私を追っかけるのは無駄な労力だ。」
工「・・・・・有・・・ネネさん・・・」
「分かったか。」
工「・・・・・・・。」
「返事しろ!」
工「・・・・・・は、はい!」
「ん!」
なんだかんだ言ってお前も立派なお医者様なんだろが。
しっかり身の回りを世話してくれる可愛い彼女を早く見つけやがれ。
「おい瀬尾。」
瀬「はっはい!」
「工藤のシャンパン、お前が飲め。」
瀬「は、はいぃっ!!」
もはやプリチー言語なんてどこへやら。
サオリちゃんまで怯える始末。
あ、ちなみに工藤にはアオイちゃんがついてくれてます。
「あいつはやっぱり馬鹿なんだな。お前と張り合おうなんて・・・あと5回は生まれ変わらねぇと無理だな。」
孝「・・・・・・・。」
孝は何も言わなかったが、肩に回された手に力が篭ったのが分かった。
お前も酔ったのか?
あぁ、風邪だったな。
もはや夢を売る色恋の世界とは程遠い。
任侠の匂いが漂ってきそうな4番テーブル。
まぁこういう日があってもいいだろう、多分。
ひとまず場が治まったかと思ったその時
孝が眉をひそめる。
「どうした?」
孝「・・・すっげぇ睨んでくる奴がいる。」
「え?」
孝「あいつ、今来た奴。」
「?」
なんだなんだと目をやると・・・
「あー・・・」
視線の先にいたのは、あのガキだった。
もうこっちから目を反らしてるけど・・・
睨んでたってのも私のことだな絶対。
ま、気持ちは分からんでもない。
それにしても、あんなことがあったってのにまだ店に来てくれているらしい。
よっぽどこの店が好きなんだなあいつ。
「え、と・・・要から聞いてないか?この前要が来た時、帰りにちょっとトラブルがあってさ。」
孝「少しだけ聞いた。」
「そっか。まぁ、あれだ、何度か指名もらったんだけど軽くやらかしちゃってよ。やっぱ怒ってんのかな。」
孝「怒ってる?どう見てもお前のこと狙ってるようにしか見えねぇけど。」
「いやいやそれはないない。」
あんなことされて私を狙っちゃう?
そんなヤツがいたらそいつは間違いなく変人だ。
ス「ネネさん、お願いします。」
「え・・・?」
孝「・・・・・・・。」
えー。
なんで?
「ちょっと待ってくれよ・・・すっげぇ行きたくない。」
どんな顔して隣に座ればいいの。
マジで嫌なんですけど。