ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part3

ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part3—–11 SAKURA∞SAKU second

「・・・・・・よし!」

 

鏡の前で顔を軽く叩く。
そしてグイっと口角を上げてみた。

 

嫌な感覚はひとまずシャワーで洗い流した。

もう大丈夫だ。
大分落ち着いたと思う。

 

「すーー、はーー。」

 

そもそもパニックにならなかったのが奇跡だったんだ。

 

まぁ、それは多分----

 

パニックになる寸前、孝の姿が見えたからだと思う。

 

孝が来てくれたと分かって、すっげぇ安心した。

いや、そんな言葉じゃ全然足りないくらいだ。

 

(ちゃんとお礼言わなきゃな。)

 

改めて鏡に向かって笑顔を作る。

そしてもう一度頬をパチリと叩き、風呂場を出た。

 

「いいお湯でしたぁ・・・・って、電話中ですか。」

 

部屋に戻ると、孝はソファーに座って誰かと話していた。

 

孝「聞こえたか?今風呂から出てきた。」
「へ?」
孝「有希。」
「?」

 

ほら、と携帯を差し出される。

 

「な、なんだ?」
孝「声聞きたいんだと。」
「え?」

 

ワケが分からないまま携帯を耳に当てる。

 

「あの・・・・もしもし?」
『有希!?』
「え、あ・・・・・要?」
『良かった・・・ちゃんとそこにいたんだな。マジで焦った。』
「・・・・ゴメン。」
『お前が謝ることじゃないでしょ。』
「でも・・・・・ごめん。」

 

いつになく余裕の無い声色。

そりゃ心配の一つや二つしたくなるよな。

現在午前2時。
真夜中だもんな。

 

『孝から大体聞いたから。』
「そ、そうか。」
『今日はゆっくり休めよ?』
「・・・・・心配かけてごめん。でも明日は元気になってっから!」
『無理して元気になるな。』
「・・・・・。」

 

なんだよお前・・・

せっかく気合入れ直したのにそんな優しいこと言うなよ。
また気持ちがぐちゃぐちゃになっちまうじゃねーの。

 

『有希?』
「え、あれ・・・真樹?」

 

相手が変わった。

 

『・・・・意外に元気な声してんだな。』
「うん。孝が・・・・すぐ来てくれたから。」
『・・・・・そうか。』
「ごめんな、心配掛けて。」
『いいから。それよりお前、今日くらい大人しくしてろよ?一人になるのだけは許さねぇからな。』
「・・・やっぱりお前と孝は考えることが同じだ。」
『ちゃんと返事しろ。』
「うん、約束する。」
『よし。それと--』

孝「貸せ。」
「あ・・・」

 

ひょいと奪われる携帯。
真樹がなんか言ってたが聞き取れなかった。

 

孝「煩ぇな、ちゃんと明日帰るからよ。・・・・あぁ、分かってる。」

 

何やら深刻な面持ちで言葉を交わす孝。
そしてじゃあな、と言って通話を切った。

 

「・・・皆に心配かけちゃったな。悪いことした。」
孝「落ち着いたら説明すればいい。」
「・・・そうだな。って、あれ・・・」
孝「?」

 

気付くのが遅れたが、テーブルの上には酒が並んでた。

孝が用意してくたんだろう。
なんとも気が利くヤツだ。

 

飲んだら・・・・・寝れるかね。

 

いやいや寝れないよな。
寝れる気がしねぇもんな。

でも意外に平気・・・・なような気もする。

 

孝「有希。こっちに来い。」
「えっ?あ、あぁ・・・」

 

ぽんぽんと自分の隣を叩く孝。

 

「失礼しますよー。」
孝「・・・・店じゃねぇよ。」
「はは、そうだな。」

 

素直に孝の隣に座った。

 

「うわ、なにこのソファー。すっげーふわふわ。持って帰りてぇ。」

 

さすが高級ホテル。
家具から違う。

 

「なぁなぁ、一緒に持って帰らねぇ?」

 

孝に振ってみる。

 

 

「有希。」

 

 

「・・・・・・・ゴメン。」

 

 

冗談言ってる場合じゃねぇよな。

うん、分かってる。

 

 

「孝。」

 

 

真っ直ぐ孝の目を見る。

 

「さっきは・・・・マジでありがとう。お前が来てくれなかったら----」
孝「そんなの・・・当たり前だろ。礼を言われることじゃねぇよ。」
「それでも・・・・・ありがと。」

 

礼を言ったら一瞬驚いた顔をした。

 

でもその後すっげぇ優しい顔になって・・・

 

なんだか戸惑ってしまった。