「か、要!」
『んー?出たのか?』
「出た出た!どこだ!?」
『えーと。あ、有希発見。』
「マジ!?----あ!」
携帯を耳に当てながら歩いてくる要。
またしても周りの女子の視線は要に集中しているわけだが・・・
今はそれを観察している余裕はない!
「か、要っ!早く帰ろう!」
要「どうしたんだよ。」
「いいから!」
どこにあのガキがいるか分かんねぇからな。
早くこの場を立ち去りたい。
要「何があったんだよ。」
「何もねぇよ!ほら、早く・・・!」
要「・・・・・。」
疑われている。
とっても疑われている。
私でも疑う。
だってめちゃくちゃ挙動不振だもーん。
「あ、後で言うから!とにかく動いてくれよ!」
背中を精一杯押す。
が、ビクともしねぇ!
要「約束だからな。」
「分かったから!」
要「よし。」
なんとか動いてくれました。
「タクシーで帰ろう!」
要「ダメ。話せねぇじゃん。」
「え、家で話せば・・・」
要「あいつらに聞かれていいならいいけど」
「あ、あー。まずいことはないけど。別に話さなきゃいけないことでは・・・」
要「俺の部屋ででもいいけど?」
「・・・・・・。」
身の危険を感じます。
「歩いて帰ろう!」
要「あっそ。」
ゆっくり歩くもんだから手を引っ張って急がせた。
出来れば・・・いや、絶対遭遇したくない。
そして更に出来ればもう店に行きたくない。
(あっ子ちゃんごめんよー!)
あぁごめんなさい。
やらかしましたぁ!
文句ならあいつに言ってくれよー!
要「で?」
「は?」
掴んでいた手を逆に掴まれる。
考え事してたら店と家の中間地点辺りにある公園まで来てた。
いつの間にこんなところまで・・・
(ここまで来ればもう会うこともねぇな。)
思わず安堵のため息が一つ。
要「何があった。おかしいぞお前。」
「え、あー。えっと・・・」
要「約束だろ。」
「あ、あぁ。そうだよな・・・」
さっきは勢いで『後で!』って言っちまったけど。
これって結構恥ずかしい失態内容だよな。
非常に言いにくい。
要「早く言え。」
「ぅ・・・・・え、えーと。笑うなよ?」
要「それは話の内容次第。」
「・・・・・そりゃそーだ。」
確実に笑われる。
まぁ仕方あるまい。
「ガキが店に来ただろ?あいつの席にいる時すっごく迫られてな。ずっと断ってたんだけど聞く耳持ってくれなくてさ。で、さっき見送る時ドアの裏に引っ張られて、強引にちゅーしてこようとしたんだ。」
要「・・・・・んだと?」
「代わりとは言え仕事として入ってるからさ、我慢はしようと思ってたんだけど出来なくてよ。素に戻っちまったんだよ。」
要「・・・・・。」
「そしたら・・・まぁ予想通り固まりやがってさ。付き合う気はねぇよって言って置いてきちまったんだ。」
要「・・・・・。」
「・・・以上です。」
要「・・・・・・。」
要さん。
何も言えないくらい笑いを堪えてるんですか。
確かに笑うなと言いましたけどね、『お前ならやると思ってたぜー』とか言って笑ってくれた方が楽なんですが。
「日頃お前らの激しいスキンシップで慣れてるはずなんだけどな。やっぱり夜のお姉さんは私には向いてなかったらしい。お前と真樹の言うとおりだったよ。」
要「・・・・・・・。」
「そんなこんなでガキに会いたくなくてさ、だから急いで帰ろうとしたんだ。つまんねぇことだろ?笑いたいなら笑えー。」
やはり何も言わない要。
一体どうしたんだ。
飲み過ぎて気分でも悪くなったか?
それともまさか無表情で笑ってるんすか。
「・・・・・要?」
マジでどうしたんだ?
要の顔を覗き込んでみ
「-------っ!?」
一瞬、何が起きたか分からなかった。
(なっなんだ!?)
頭が状況に着いて行かない。
だって------なんで?
唇に
柔らかい感触。