『もう時間なんだろ?』
「うん。」
『もっと早く来れたらいいんだけどな。』
「そ、そう?」
(もっと早く?頼むから止めろ。無理です。)
席に戻るとヘルプの女の子の肩を抱いていたガキ。
その子が気に入ったなら是非どうぞ。
喜んで身を引きますぞ。
『なぁ、今から付き合えよ。』
「ごめんけど無理だよ。明日仕事もあるし。」
『休めよ。』
「・・・は?それは出来ない。」
仕事休めだなんて・・・
なんてこと言うんだ。
冗談でもそんなこと言うな。
私は仕事Loveなんで!!
男ならそこんとこ分かれ!!
『俺も明日仕事だぜ?』
(だからなんだぁ?関係ねぇーよー!!)
「だったら尚更ダメでしょーが。早寝早起きしてしっかり仕事に集中してください。」
『つまんねぇの。まぁ今日は許してやるよ。』
「ど、どうも・・・」
初めに着いた時から感じていたのだが・・・
こいつの前でだんだん女の子でいられなくなってきている私。
もうダメだ。
無理だ。
『でもよ、お前は絶対俺の女にするからな。それは忘れんなよ。』
「だからそれもゴメンって・・・・」
『ま、ゆっくり受け入れろ。』
「・・・・・。」
ダメだこいつ。
耳が聞こえないらしい。
ササッと会計を済ませ、出口へ向かった。
要達の時とは比べ物にならないがミーハー女子達がざわざわしている。
全く・・・女子達よ中身を見ろ。
ビックリすんぞ。
「ありがとうございました。」
(や、やっと終わった・・・)
今日は本当に頑張った。
お疲れさん、私!
『ネネ・・・・ちょっと来い。』
「は?なに----」
『いいから!』
「え、ちょっと!」
それではさようならとドアノブに伸ばした手を掴まれる。
更に扉の死角に引っ張られて---
(ま、まずい!)
「------っぅ!」
背中は壁。
両手とも壁に押し付けられて---
もがいてみるが動けねぇ。
そして
スローモーションで近づいてくる奴の顔。
(ちょ・・・・・・ちょっと・・・・!!)
表現するとしたらゾワゾワ。
奴との距離と比例するように嫌悪感のバロメーターが上昇していく。
おいおい待て。
待て---
(---------っ!!!!!!!)
「・・・・・いい加減にしろよてめぇ。」
『---------は?』
もう・・・・・無理でーす。
唇と唇が0距離になる寸前
奴が止まった。
「離れろよ。マジで勘弁してくれ。」
『・・・・ネネ?』
驚いたんだろう。
思い切り力が緩んだ。
すぐにガキと距離をとる。
「悪ぃんだけど君と付き合う気はないんだ。他当たってくれよ。今日は指名してくれてサンキュー。今度からまたルミちゃんと仲良くやれよ。」
『・・・・・・・。』
「じゃぁな。」
そう捨て言って店の中に戻った。
(や、やばかったか?・・・やっぱり?)
どんなに嫌でも相手はお客様だ。
だが仕方ない。
我慢できませんでした。
スミマセンデシタ!
一応心の中で謝ってみる。
そして足早に更衣室へ戻った。
「急げ!急げ!!急げ!!!」
早く店から出たかったのでフルスピードで着替えた。
もしかしたら正気に戻ったあのガキが店に乗り込んで来ないとも言い切れん。
『なんだあの男女は!?ここはそういう店だったのか!?』
なんて騒がれたら・・・
間違いなくあっ子様に殺される。
くれぐれも女だけは捨てるなと口を酸っぱくして言われてたのに・・・
とりあえず念には念を、だ。
裏口から外へ出た。
(か、要ちゃーん。助けておくれー。)
そしてすぐ要に電話を掛けた。