ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part2

ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part2—–6 SAKURA∞SAKU second

そういえば、あいつが泣いたのを見てからだったのかもな。

自分の気持ちが急速に落下してったのは。

 

あの日の有希は、放っておいたら壊れてしまいそうだった。

腕の中に包みこんで、怯える何かから隠してあげたかった。

 

情けないことに涙にショックを受けて動けなかったんだけどね。
あの時動けたのは真樹だけだった。

 

多分

・・・・いや確実に

 

 

桜館のヤロー共は、全員有希に惚れてる。

 

 

(はぁ・・・)

 

なーんで全員なんだよ。
寄りによって皆マジだし。

まぁ仕方ないか。
惚れちまったもんは仕方がない。

俺もその中の一人だし。
あいつらに譲ってやるつもりもない。

 

有「た・・・ただ今ー。」
「うぉっ!」
有「なにその反応。帰ってこない方が良かった?」
「い、いや。」

 

考え事してる最中に急に本人の声がしたんだ。
ビックリするに決まってんだろ。

ていうか・・・そんなに長い時間考え事してたのかよ俺は。

 

有「アオイちゃんありがとうございました。」
ア「い、いえ。」

 

結局アオイちゃんとはほとんど会話をすることなく終わってしまった。

 

「お疲れだなー。」
有「お疲れだよー。もう、本当に面倒くさい。あ、要ちゃんは疲れてない?」
「俺?俺は淋しかったよー。お前がいなくて。」
有「はいはい。心が篭ってないセリフをありがとう。」
「あれ。篭ってなかった?」
有「全然。」

 

はぁ、とため息をつきながら酒を流し込む有希。
随分お疲れの様子だ。

 

「大変だったのか?」
有「大変だったよ。"俺の女になれ"。"終わってから会え"。これしか言わないし。」
「へぇ。で、なんて答えたんだ?」
有「モウシワケアリマセン全部無理デスって。」
「・・・・・・・・・・・ぷっ!」
有「えっ!な、なんで笑うんだ!?」
「い、いや悪ぃ。なんでもねぇ。」
有「?」

 

真樹が嬉しそうな顔してた理由、なんとなく分かった気がする。

他の男と自分を比べて自分の方が有希に近いって感じたんだろうな。

今の俺もそう。
少なくともこんな嫌そうな顔を向けられた記憶はない。

 

有「それにあいつ、お前らのこと悪く言うんだ。累も純君も笑顔に裏があるとか、真樹も要も見掛け倒しだとか。お前らのこと言われるとなーんかムカつくな。くそ、イライラが治まらねぇ。」
サ「・・・・・ネネさん?」
「あ、あれ?なんか聞こえたね。心の声かなぁ?」

 

喋り方元に戻ってやがる。

松田は変人のため気にしていないが、サオリちゃんは果たして有希から出た言葉なのかと信じかねている。

 

『よっぽど嫌だったらしいぞ』

 

真樹のセリフが脳内でリピートする。

そして真樹と同じように、今の俺も嬉しそうな顔してんだろうな。

 

有「こ、こら要ちゃん!」

 

とりあえず、腕の中に閉じ込めた。

さっきはいいとこでいなくなっちまったからな。
続きだ続き。

嫌な顔をして強張った頬を軽く抓ってやった。

 

「もうあいつのとこには行かせねぇ。」
有「ちょ---抓らないでくださーい!」
松「お前もそんなセリフを吐くのか。驚きだ。」
「黙ってろ。こっち見るな。」
有「・・・・私も行きたくないよ。」
「え?」

 

松田の野次なんて一瞬に吹っ飛んだ。

 

(こ、これって営業ですか・・・?)

 

ちょ、ちょっと、俺に営業する必要ねぇじゃん。
不覚にもドキッとしてしまったんですが。

 

有「・・・本当にきつい。」
「・・・・・。」

 

前の二人に聞こえないように呟く有希。
目線を下に向けて俯いてる。

どうやら本当に嫌らしい。
そんな顔見ちゃったらマジで行かせたくないんだけど。

 

「有希----」
有「・・・なぁ、ちょっといいか?」
「ん?」

 

どうした?と聞く間もなく

なぜか接近してきた・・・・

 

 

「--------っ!!」

 

 

くそ・・・

 

 

また・・・・・・やられた。

 

 

「ちょ、ちょっと有希ちゃん。急にやるとビックリするでしょ。」
有「ごめん。でも、ちょっと落ち着いた。」

 

なんとか笑顔を作り出してニッコリ笑いやがった。

 

ていうかお前、なんか変だぞ。

なんか・・・・なんか・・・・・・・・

 

「お前さ・・・あいつになんかされただろ。」
有「え・・・べ、別に何もされてないよ。」

 

はいなんかされたの確定。

明らかに挙動がおかしい。
元々嘘も下手だし隠し事も上手い方じゃない。

 

「何があった?」
有「何もないってば。心配かけたかな。ごめんね。」
「・・・・・。」

 

言わなきゃ分かんねぇのに。
さっきまでの不機嫌オーラを回収し女の子へと変身しなおした。

 

有「終わったらすぐ帰ろう。」
「・・・・あぁ。」

 

そういや後少しで時間だな。

 

家に帰ったらまた自粛の日々かぁ。

せっかくだ。
時間いっぱい密着しておこう。

 

(柔らけぇー。)

 

頬に、髪に、ゆるゆると触れてみる。

家でこんなことしたら殺されかねない。

でも今は抵抗もしない。
仕事の力は偉大だ。

 

もし有希がマジでホステスさんになったら・・・
俺ら5人、全員揃って皆勤賞なんじゃね?

 

なぁんて

 

くだらないことを考えていたら時間がきた。