-----要-----
(・・・・・・・・参ったな。)
ペラペラと俺を語り出す松田。
こいつを連れてきたのは失敗だったか?
でもまぁ、こういう奴だから仕方ないんだけど。
それに有希のヤツ、急に「今日バイトに行くからな。」なんて言い出すから他に連れが捕まらなかったんだよ。
---夜のバイト、つまりホステスさん
知り合いに頼まれたかなんだか知らねぇが、最近有希がバイトを始めた。
家に帰ると不定期に『今日はバイト行くんで』との書き置きが置いてある。
俺たち住人にとってはちょっとした事件だった。
当然変な虫がついたら困る、と有希がバイトに行く時は誰かが行くという暗黙のルールができたんだが・・・
仕事が忙しかったりでタイミングが合わなくってさ。
俺は今日が初めての出勤なんだよー。
でも、たまたま家に俺だけしかいなくてラッキーだった。
あいつら今頃泣いてるはず。
孝なんて怒り沸騰かもしれねぇなぁ。
まだ一回も行ってねぇってのが最近のあいつの口癖だ。
それにしても
こいつのドレス姿・・・ヤバイ。
ブラック系のロングドレス。
白い肌が良く映えて、すっげー女らしい・・・
いやいや。
そんなこと考えてる場合じゃねぇ。
(松田め、余計なことを・・・)
有希は軽ノリが嫌いなんだぞー。
実際、修羅場に巻き込んだこともあるし。
隠してるつもりはねぇが・・・・
細かく知る必要もねぇじゃん。
「嫌だったか?」
有「え?何が?」
「女遊びのこと。軽蔑した?」
有「しないよ。今はしてないでしょう?見たことないし・・・・これからもしない方がいいのかなーとは思うけど。」
「しねぇよ。」
『そっか』と言ってニッコリ笑いかけてくる。
有「本当に好きな人と結ばれるのが一番だと思うよ。」
「・・・・・・。」
(好きな人、ねぇ・・・)
ま、予想はしてたけど・・・
俺のことなんかさっぱり意識してもらえてないんですねー。
PC直してもらった時、一応それらしいことは伝えたつもりだったんだけど。
まぁ、最後がいけなかったんだろ。
変態呼ばわりされて終了だったからな。
良くて『友達として好きでいてくれてんのかなぁ・・・』くらいの認識か?
多分、元々恋愛感情には鈍い方なんだろうとは思う。
それに加えて何らかのトラウマ持ちみたいだし。
今は恋愛したくないって言ってるらしいし。
こっちも慎重にいかないと平行線のままだな。
んー難しい。
「・・・・・そうだな。」
有「うん。あ、それと飲み物ありがとう。」
「ん?あー全然いいよ。いっぱい飲んどけよ。」
有「うん。ありがと。」
バイトに行く日は帰ってからの飲む量が少ない。
というのもバイト中に住人達と一緒に強めの酒を飲んでるらしい。
飲むこと自体いいことではないが・・・・
早く眠れるのはいいこと・・・・だろう。
「そういえば大変なヤツがいるって聞いたけど。」
有「大変なヤツ?」
「有希ちゃんを狙う男がいるって。」
有「あー・・・珍しい生き物が好きな人はいるね。」
なんだそりゃ。
「指名貰ってんのか?」
有「・・・・うん。店に出る日とか連絡してないのに何故か来るんだよね。なんで分かるんだろ。」
「どんなヤツ?」
有「うーん。強引な俺様で、しつこくて・・・」
「へぇ。真樹とか孝みたいな奴?」
有「え?なんで?」
「俺様だったんでしょ?」
『俺様=真樹&孝』
これが公式でしょう。
『俺様のススメ』とか本書いたらベストセラーになるんじゃね?
有「うーん。・・・2人とは全然違う。」
「・・・・・・どんな風に?」
あれあれ。
雲行きが怪しい。
有「んー。あの人はなんだか嫌だった。気分が悪かったっていうか・・・」
「そう。じゃーあの2人は嫌じゃないんだ?」
有「・・・・・そういう返しはズルイと思う。」
「ははっ。そうだな。」
ごめん、意地悪してしまいました。
最近の俺は嫉妬深くて困る。
というのも家には有希を狙う野獣がたくさん住んでるし
奴らが有希にちょっかい出すのを見て毎日イラッイラするし
有希のことが大切で、落ちていく、好きになっていくと宣言したはいいが・・・
進行速度の速いことといったら・・・・
予想外だった。
いつの間にこんなにハマってたんだろうな。
好きで、気になって・・・
独り占めしたくてたまんねぇ。
抑えるのが大変だよ全く。
(暴走しないように気をつけよー。)
思わず苦笑い。
ため息と一緒に紫煙を吐いた。