「な、なぁ、そろそろ放して----」
要「だぁめ。」
帰るぞ、と手を掴んで歩き出した要。
そしてこの男、私の可哀想な心臓なんかお構いなし。
なかなか手を放してくれない。
まぁちゅーされるよりは全然いいので良しとする。
要「お前さ、男のこと好きになりたくねぇの?」
「ん?」
好きになりたくない?
好きになりたくないっていうか・・・
「好きになりたく無いんじゃねぇよ。・・・・・怖いんだよ。」
要「・・・・・怖い、ねぇ。」
「だ、だから・・・他に・・・・」
要「他に好きな女作れって?それは無理。それに、お前にそんなこと言われたくねぇよ。」
「え?」
要「好きな奴にそんなこと言われるのってショックだろうが。」
「そ、そうか。」
ショックか。
そうか。
要「まぁ、俺は諦め悪いんで。お前が恋愛しても怖くなくなって。そんで俺を好きになるまで待つ。」
「え・・・・えぇ?」
要「なんだよ。」
「待つなんて。高野君らしくないっすね。」
要「んだよ高野君って。バカにしてんのかぁ?」
「い、いえ!とんでもない!」
悪ふざけはよせ!
変態の取り扱いには十分気を付けましょう!
「要もそうだけど・・・家の奴らも一人の女子を追っかけるタイプじゃねぇじゃん。今までずっと多数の女の子相手にしてきたんだろう?だったら----」
要「お前がそれを変えたんだろうが。」
「か、変えた?」
要「そう。俺もビックリ。あいつらもビックリしてる、絶対。」
「そんなつもりは・・・・」
要「だろうな。」
くすくす笑う要。
意味が分からない。
「君達と私の恋愛グラフに接点は有り得ないと思ってたんですが・・・」
要「俺も思ってたよ。てかお前を好きになるなんて考えてもなかった。」
「そうでしょうな・・・」
要「でも仕方ねぇじゃん。好きになっちまったんだからよ。」
「・・・・そんなもん?」
要「そんなもんだ。」
(・・・ったく、物好きな奴・・・・・)
累、純君、真樹、要・・・・
なんでだか知らねぇが、少なからず好意を持ってくれているらしい。
そりゃ、素直に『嬉しい』と思う。
恋愛感情じゃないにしても、同じ屋根の下に住む一員としてあいつらのことは大切だと思ってる。
だからこそ・・・
ちゃんと向き合いたい、とも思う。
でも私は・・・・
あいつらの気持ちに応えることは出来ない。
簡単には変われない。