<真樹>
河「打ち合わせは明後日だったよな?」
「あぁ。」
河「それにしても、今日は面白かった。」
「・・・何が。」
河「お前がだよ。」
「・・・・・・・。」
今日、突然・・・
有希が夜のバイトをするなんて言い出しやがった。
(夜のバイトだと・・・?)
ふざけんな。
そんなバイトに行かせられるか。
有「・・・え、お父さん?」
やっぱりバカだ、この女は。
夜を舐めんな。
お前なんかがデビューしていい世界じゃねぇ。
有「とにかく、週に2日くらい行くからな。ヨロシク。」
しかしさすが有希。
せっかく心配してやってるってのに言うこと聞きやしない。
仕方ねぇ・・・
ここは一つ、監視が必要だな。
というわけで---
急遽、桜館会議が開かれた。
要「俺も行きたかったぁ。」
孝「・・・なんで今日なんだよ。」
純「姫がドレス着てるの!?えー、ミーティング休もうかな。」
累「ダメだぞ純。気持ちはとーっても分かるけど。」
「お前ら、残念だったな。」
「「「「-----------。」」」」
なんとラッキーなことに
男共は今日に限って全員用事持ちだった。
孝「チッ・・・変な虫が着かないようにしっかり見とけよ。」
「はいはい、了解。」
孝「変なマネすんなよ。」
「さぁな。」
孝「てめぇ・・・」
「さっさと行けよ。」
俺はついてる。
なぜなら仕事とはいえ有希が隣に座り
時間限定だがあいつを独り占めできる。
そんな夢のような権利を手に入れたからだ。
桜館に来て大分時間が経ったからだろうか。
学習能力が少しは備わっていたようで、最近の有希は見事な警戒網を張るようになった。
はっきり言って面白くない。
だが---
(今日は楽しめそうだ。)
早速、ふと思いついた河野を呼び出した。
河「へぇ、噂の彼女ねー。」
「噂?なんの噂だ。」
河「お前が遊ばなくなったからさ。決まった女が出来たんじゃないかって女達が大騒ぎしてる。」
「そうかよ。」
河「楽しみだなぁ。」
「おい、余計なことは言うなよ。」
河「努力します。」
何を想像してるのか。
俺を見ながらニヤニヤしている河野。
大丈夫かこいつ。
もしや人選を間違えたか?
河「その店なら知ってる。結構いい女が揃ってるって聞いてるぞ。」
「他の女はどうでもいいんだよ。」
河「ほー、信じられない発言だ。」
「・・・うるせぇな。」
時刻は午後8時半。
店に着いたら結構な客入り。
なかなか繁盛しているようだ。
ちなみに確認の為店員に聞くと本日入店の『ネネ』はちゃんと来ているらしい。
思わず口角が上がった。
河「へぇ、いい店だな。」
席に通されると河野が満足そうに呟く。
まあ、確かにいい店だと思う。
落ち着いた雰囲気がまずまず好みだ。
だがそんなことはどうだっていい。
(さて・・・)
目だけで店内を見回す。
結構広いフロアだな。
これだけ広けりゃさすがに見つからないか・・・
「・・・・・。」
偶然、ちょうど見えるところにあいつがいた。
紫ベースのロングドレスを着ている。
(おいおい・・・)
あいつもやっぱり女なんだな。
かなり---綺麗だと思う。
それに、いつもはカジュアルな露出の少ない服を好んで着てるからな。
こんなに肌を晒している有希を見るのは初めてだ。
まあ、悪い気はしない。
それにしても
(しつこいヤローだな・・・)
どうやら口説かれているようだ。
肩を抱かれ、一見いい雰囲気のカップルのようだがそうじゃない。
有希のヤツ、どう見ても不愉快らしい。
顔にそう書いてある。
全く・・・だから言っただろうが、お前にこの仕事は無理だ。
ボーイが有希の席へ向かった。
そして自分が呼ばれたのだと気付くとホッとした表情になった。
(あ・・・)
席を立とうとする有希の頬に
男がキスした。
(・・・・・・・。)
まぁ、仕事だからな。
そのくらい普通だろ。
キスくらいで弱音を吐くならさっさと辞めちまった方がいい。
(---------。)
ダメだやっぱりムカつく。
あのガキ、後でやっとくか?
そうだそれがいいそうしよう。
河「なに怖い顔してるんだよ。」
「・・・別に。」
河「変なヤツ。」
「・・・・・。」
それにしても
有希のヤツ、いつもあんな顔するか?
たまに無理矢理抱き寄せる。
捻じ伏せてキスをすることもある。
もちろん嬉しそうな顔はしない。
だがさっきのような嫌そうな顔を向けられたことも無い。
河「・・・なんで嬉しそうな顔してんの。」
「・・・別に。」
なんとなく
悪い気はしねぇな。