ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part1

ナ・イ・ト・ワ・-・ク Part1—–6 SAKURA∞SAKU second

結局、真樹は私の勤務時間いっぱい滞在。

これも親切心なのか。
こいつの優しさははっきり見えないので良く分からない。

 

「チェックお願いします。」

 

0時少し前。
現在センターで精算中。

 

「ふぅ・・・」

 

初めはどうなることかと思ったが、真樹様のご好意でアルコールも蓄積できたし

お店はというと、お客さんの数も落ち着いてぱらぱらと空きの女の子もいる。

 

『ねぇねぇ!ネネさん指名のお客さん、すっごいカッコいいですね!』
「へ?」
『連れの人もかなりヤバイよぉ!』

 

きゃぁきゃぁと色めき立つ女子。

男慣れしているこの女子達が騒ぐほどだ。
あいつら相当レベルが高いに違いない。

でもね・・・
見せ掛けに騙されんな君達!

 

『どこで捕まえたのー?』
『それ聞きたぁい!』

 

(捕まえた・・・?)

 

何を言うか。
あんな帝王、好き好んで捕まえるワケがないだろ。

まぁ・・・
我が家の一員ですなんて口が裂けても言えないのだけれども。

 

『ネネさん?』
「え!あ、あぁ、えっと・・・あの人は捕まえたんじゃなくてその---知り合いなんだ!」
『知り合い?』
『えーそうなんだー!いいなぁ!』

 

(え、いいの?)

 

顔がいい男と知り合いっていいモンなのか?
そんなもん?

 

ス「はい、お願いします。」
「あ、はい。」

 

(----って、高っっ!!)

 

あわわわどうしよう!

明細の金額を見ると---ヤバイ。

やはり夜の世界は奥が深い。
あまりの高額にドン引きです!

 

「ちょ、ちょっと真樹耳貸せ!」

 

とりあえずヒソヒソ相談。

取り乱すなよ帝王。
落ち着いて話を聞いてくれ!

 

真「カードでいいだろ?」
「う、うん。いやいやそうじゃなくてだな---!」
真「これで頼む。」

 

ピッとカードを渡された。

 

(う、うお!これは---!)

 

ブラッキーカードじゃありませんかっ!
あゎゎゎ手が震えるっ!!

 

河「次回は俺ね。」
真「どっちでも構わねぇよ。」
「・・・・・・。」

 

おいおいなんだその会話は。

それよりお前、金額確認したか?
見てもねぇような気がするのは気のせいか?

 

(はぁぁぁ・・・)

 

なんだかどーっと疲れた。
色んな意味で。

とりあえず支払いを済ませ、席に戻ると皆さんは既に通路に出ていた。

 

(ん・・・?)

 

「・・・・・・・。」
真「なんだ?」
「真樹って、身長高いんだね。」
真「何を今更。」
「いや、なんとなく・・・」

 

今日はドレスに合わせてヒールを履いている。

なのに目前の帝王は私より遥かにでかい。
どうでもいいが結構な長身ヤローだったらしい。

 

『やだぁ、やっぱりカッコいい・・・』
『ほんとだぁ!素敵・・・』

 

遠くから女子達の黄色い声が聞こえた。

どうやら先に出口へ向かった河野さんが騒がれているらしい。
いいねぇ、モテモテですなぁ。

 

真「おい。」
「ん?」

 

上から声が降ってきた。

 

真「もう上がるんだろ?」
「うん。」
真「店を出たらすぐに電話しろ。」
「ああ、了解----うわ!」

 

急に肩を引き寄せられてよろめいた。

なにすんだてめぇ!

なんてとっちめてやりたいところだが今は仕事中。
我慢だ有希、耐え抜け有希。

いやいやそうじゃなくて

 

「ちょっとあの!歩きにくいです!こけそう!」
真「我慢しろ。」
「いやいやそういう問題じゃなくて--」
真「お前は俺のモンだって見せ付けてんだよ。」
「は?誰に。」
真「あいつに決まってんだろ。」
「あいつ?あぁ・・・」

 

あいつとは----あのガキのことだ。

ルミちゃんと話が弾んだらしいあのガキは延々と延長を繰り返し、今現在も2人仲良く酒を酌み交わしている。

しかしどういうつもりなのか、なぜか真樹に向かって度々睨みをきかせていたらしい。

 

「へっ、くだらねぇ。」
真「おいおい。カワイイ振りはもう終わりかよ。」
「誰も聞いてねぇからな。---っと、気をつけて帰ってくださいねぇ。」
真「・・・・・・。」

 

二人三脚で歩くこと数秒。
ようやく出口に到着。

色めく女子の中に突入すると、恥じらいも無く真樹に送られる憧れの眼差し。

こいつの場合中性的な顔立ちの為、お客さんやスタッフの目も釘付けだ。

 

(うわ!なな、なんだそりゃ・・・!)

 

きゃぁきゃぁと騒ぐ女子。

そしてなんと、彼女らに向かってにっこり爽やかな笑顔を向ける真樹。

そんな顔も作れるのか・・・
ちょっとびっくり。

 

真「じゃぁな。」
「あ、うん、ありがとう。」

 

ここは私も一つ。
負けじとニッコリをくれてやった。

 

「?」

 

するとなにを思ったのか。
小さく笑って耳を貸せと言う。

なんだよ、内緒話か?

 

「どうした?」
真「・・・早く着替えて出て来いよ。」
「うん。分かって--」

 

 

チュッ・・

 

 

(え・・・)

 

頬に柔らかな感触。

それと同時に後ろから凄まじい声が上がった。

あれだよ、きゃぁぁ!ってやつだ。

 

「・・・おいコラなにしやがる。」
真「消毒だ。」
「は?」
真「あいつにされただろ。」
「え・・・」
真「じゃあ、後でな。」

 

軽く手を振り、真樹は河野さんの方へ歩いて行った。

 

(おいおい勘弁してくれよ・・・)

 

見てたのかよお前・・・

しかもなんでお前のチューが消毒なんだ。
ワケ分かんねぇ。

 

『ネネさん、上がっていいですよ。』
「あ、はい、お疲れ様です。」

 

未だ興奮中の女子の波をかいくぐる。
そしてやっと更衣室に戻ってきた。

 

「だはぁぁ・・・しんどかったぁ!」

 

更衣室に入るなり思い切り脱力。

 

すっげぇ疲れた辛かった。

これを毎日こなすなんて・・・
夜のお姉さん達ってマジすげぇ。

でもやっぱ私には無理だわ。
荷が重すぎる。

 

「おーいあっ子ちゃん・・・早く代わってくれぇ。」

 

とりあえず

 

さっさと帰って酒盛りしよう。