---お前が好きだ
突然、真樹の口から出てきた言葉。
それがスルッと心に入り込んだと同時に
心臓が全力爆走し始めた。
(すす、好きだと?私を?真樹が?なな、なんで?)
好きってなんだったっけ
どんな時に遣う言葉だったっけ
お菓子が好き
パソコンが好き
好き、スキ、すき、SUKI ・・・
ダ、ダメだ。
パニック過ぎて答えが見えない。
しかしそんな私に構うことなく
空気を読めない心臓はガンガンドコドコ加速していく。
(げ、減速しろー!!!)
ていうか真面目に好きだなんて言われたら誰だってこうなるだろ?
大体こいつは私で遊んでるだけじゃなかったのか?
そんなオモチャな私に恋愛感情なんて生まれるはずがな・・・
『恋愛対象』として見られてるわけが無いって思い込んでること。
すっごい自分勝手。
なぜか、前にあっ子に言われた言葉を思い出した。
(--------。)
真樹の態度にからかいや嘘は感じない。
少なくとも・・・そう感じる。
それじゃなんだ。
本当に好きでいてくれてるって事か?
私を-----『女』として?
(・・・・・・。)
ちょっ、ちょっと待てやめろやめろ。
変なこと考えるな。
心臓が吹っ飛んじまう!
真「有希。」
「な、なんすかっっ!?」
声裏返った!
しかもでけぇ!
「-----!------!?」
腕の力が緩んだ。
助かった!と思ったら真樹の方を向かされた。
そしてすかさず大きな手に頬を包まれた。
「まま、真樹?」
ヤバイくらいヤバイ。
もはや日本語もヤバイ。
もう・・・マジで頭が沸いてしまう!!
(ぅ、わ・・・・)
頬を伝う手
こっちを見下ろす切れ長の目
そして、なんだこれ・・・
(色っぽい・・・)
薄暗い路地も
頼りなく灯る街灯も
少し冷たい空気も
軽く流れる風も
全部が真樹に味方しているような・・・
そんな気がする。
男にもこんな『色気』があるんだな。
上から見下ろすこいつに
うっかり目を奪われてしまう。
(俺様の・・・くせ、に・・・)
心の中の悪態も失速していく。
反らしたいのに・・・
真樹から目が離せない。
「お前の心も体も、俺のモノにしたい。」
まるで活字を読んでいるように
真樹の言葉がスルリと頭に入ってくる。
「有希。」
「------。」
「俺に、惚れろよ?」
もう一度
心臓がドカンと鳴った。
そして
真樹の唇が
軽く触れた。
もう、無理だ。
この心臓の暴走を
どう処理したらいいのか、分からない。