有「えっ ・・・ 」
気付いたら、抱きしめてた。
(香水・・・?)
首筋に顔を埋めると微かに香ってくる甘い匂い。
店の中では気付かなかったが・・・
いつもと違う甘い香にくらくらする。
『そんなもんなのかなぁと思って。』
こいつが言いたいことはなんとなく分かる。
まぁ、普通はそんなもんだろ。
外見に一切反応しないお前の方が珍しい。
その点だけ取り上げると希少な存在だろ。
だからこそ『イイ奴』だと言われたのが嬉しかった。
こいつの目にそう映っているのならそれでいいと思った。
有「あぁぁあのぉ・・・よ、酔ってらっしゃるんすか?」
どうやら動揺してるらしい。
さっきまで近くに座って接客してたってのに見事に固まってやがる。
有「・・・っ!」
腕の力を緩め唇を耳に寄せる。
するとピクッと体が跳ねた。
(・・・・・・・可愛い奴。)
停電の時
こいつが怯えて、震えて、涙を流したのを見て
そして正気に戻って強がる姿を見て
飲んだ時に見せた綺麗な笑顔を見て
多分あの日、気付いたんだろうな。
いや、気付かされたってのが正しいのか・・・
「世の中見てくれで寄って来る奴ばっかりだ。」
有「ん?」
「そんな奴らと遊んで、それで満たされればそれでいいと思ってた。」
有「・・・ディープですな。」
なんだその感想は。
「だが・・・」
有「・・・・?」
「お前は口は悪いし暴力は振るうし色気はねぇし」
有「・・・いいところが見当たらなかったんですが。」
確かに。
いやいや今はそんなことはどうでもいい。
俺が言いたいのは・・・
「俺は・・・そんなお前に惚れてる。」
有「・・・・・えっ?」
もう一度、体が跳ねた。
こんなに固まるのは初めてじゃねぇか。
それくらい固まった。
「お前が好きだ。」
そう、俺は・・・
こいつが好きだ。
(だっせーな。結局俺が先に落ちるなんてよ。)
でも
これ以上自分の気持ちは
無視できない。