名付けるとすれば

名づけるとすればーーー9 SAKURA∞SAKU first

有「あ、あの・・・離れてください。」
「却下。」

 

この感情はなんなんだ?
ウイルス・・・じゃねぇよな。

 

有「却下ってお前・・・意味分かんねぇ。」
「恋人だろ。今日一日。」
有「・・・それはパーティーの間だけだろうが。」
「0時まで約3時間。お前は俺の女だ。」
有「・・・・・・。」

 

じゃぁ一体なんだ?

 

有「と、とにかく離れろ。」
「このままがいい。」
有「い、いやいや何言って--」
「有希。」
有「な、なんだ?」
「お前が言ったこと。なかなか嬉しかった。」
有「・・・・・そうかよ。」

 

(・・・・・・・・・まただ。)

 

俺の言葉にピクリと反応を示す有希。
そして少し照れたような、バツの悪そう声色で返事を返す。

そんなこいつを可愛いと思う自分がいる。
出来ればもっと見たいと思ってしまう。

 

「お前、なんでこんなに細ぇんだ?」
有「は?え、そうっすか?」

 

---触れていたい

欲求に任せて腕に少し力を入れると余計に華奢な線が顕わになる。
どんなに男らしくても、やっぱりこいつは『女』だ。

 

「お前、女なんだな。」
有「-----そうですけど。」

 

口も悪い、色気も無い、暴力も振るう…
そんな男勝りなこいつに「女」を意識してる自分。

正直言ってそんな自分は認めたくねぇ。
出来ることなら目を覚ませと喝を入れてやりたい。

 

だがどんなに理屈を並べても---

 

本能は従順だ。

 

有「そんなことよりいい加減--」
「放さねぇ。」
有「・・・・・・・。」

 

なぜなら-----口が勝手に動きやがる。

 

有「孝、頼むから---」

 

俺はこいつを女として見ていて

 

そしてこいつが欲しい

 

そう認識してるのは間違いない。

「放したくねぇんだ。」
有「・・・・・え?」

 

(・・・・・・・バッカじゃねぇの。)

 

自分から求めるなんて有り得ない。
こんなこと、今まで一度も無かったってのに--

 

有「こ、孝様・・・?」
「・・・どうなってんだよ、俺は。」
有「へ?」

 

でももう

 

この気持ちを抑えるのは

 

無理だ。

 

 

「お前が欲しくてたまんねぇ・・・」

 

 

腕の中にいる有希の体が

少し跳ねた。

 

(マジで・・・・・・有り得ねぇ。)

 

この感情をなんと呼べばいいのか

それは分かんねぇ。

だが

欲しくて欲しくてたまんねぇのだけは

痛い程理解できる。

 

有「ここっ孝様!!そろそろお時間では!?院長も工藤も心配してるかと!!」
「なぁ・・・」
有「なな、なんすかっ!!?」

「このドレス。帰ってから脱がせていいか?」

有「・・・・・・・・・・。」

 

 

(------------しまった。)

 

 

有「・・・死ね。」
「---っ!」

 

見事な一撃が腹に決まった。
なかなか辛い。

 

(この求め方はアウトだったな・・・)

 

腕からすり抜けた有希。
怒りのオーラを垂れ流しながら会場へ向かって歩いていく。

 

「怒るなよ。」
有「けっ!ふざけんな!」

 

ビームでも飛ばすつもりか。
凄まじく鋭い目付きで睨んできやがった。

ま、そんな格好で睨まれても怖くもなんともないけどな。

 

(・・・はぁ。)

 

なんか------疲れた。

 

 

『有希さん!』

 

会場に戻ると院長のおっさんが近づいてきた。

誰に何を聞いたのか知らないが有希をいたく気に入った様子。

裏腹にバシバシ背中を叩かれて迷惑そうな顔をする有希。
どうでもいいが有希に白々しく触るのは止めろ。

 

『じゃあ有希さん!今度ゆっくり食事でも--』
「こいつはダメだ。別の女を誘え。」
『え!ちょ---孝くーん!』
「行くぞ。」
有「あ、あぁ・・・」

 

一人盛り上がる院長を置いて
げっそりする有希の手を掴み会場を出た。

 

それにしても

この不可思議な感情は、一体なんだ?

車に乗っている間考えてはみたが思いつかなかった。

 

---恋愛感情

 

ふと頭を過ぎる。

 

(恋愛ってお前・・・)

 

「好き」とか「惚れる」ってことか?

 

(いやいや、さすがにそれはねぇよ。)

 

有「お前のせいだからな。」
「・・・・・。」
有「おい、聞いてんのか?」
「・・・・・。」

 

考えはまとまることなく

 

桜館へ帰宅した。

 

 

 

 

 

・・・・・名付けるとすれば(完)