千「なぁ遼。」
「んー?」
あれから色々準備して、現在千秋の家に向かって運転中。
千「有希、なんかあっただろ。」
「・・・・・・・・・。」
千「言えない・・・・ってわけか。」
「悪い。」
たった数日でもあんなに酒を浴びる姿を見たら気付くよな。
千「お前が・・・・ずっと傍にいたんだな。」
「え?」
千「新名って奴がいなかったから・・・・」
「・・・あぁ。」
新名、ね。
久々に聞いたな。
千「有希って・・・弱いとこ見せるの苦手だから。」
「分かってるよ。」
千「・・・・・迷惑な姉貴。」
「そりゃお互い様だろ。」
千「・・・・・そうか。」
性格も似てます。
千「で。あのスペシャルイケメンズはなんだ?有希を狙ってるように見えたんだが。」
「あ、あぁー。」
スペシャルイケメンズ。
そうです。
スペシャルなんです。
「狙ってるみたいだなぁ。」
千「あっそ。相変わらず鈍いようで。」
クスクス笑い出す。
笑い事じゃないんだよー。
千「遼もあいつが好きなんだろ?」
「え!お、俺ってそんなにばればれなのか?」
千「まぁ・・・・分かるな。」
「・・・そ。」
自分では良く分からないんですが・・・
第三者から見たら分かるようです。
千「罪な女だな。いや、男か?」
「お前が言うなよ。」
千「私は女だ。」
「・・・お前ら2人とも男前だぞ。」
千「そりゃどーも。」
マジで。
千「まぁとにかく。初めに家に入った時はイケメンハーレムにビビッたけど----」
え、ビビってたの?
うそ。このうそつきめ。
千「あいつら、いい奴らなんだな。ちょっとだけ安心した。」
そう・・・
「そうなんだよねー。悪い奴でも困るんだけどよ。これがまたいい奴ら過ぎても困る。」
千「そうだなぁ。」
「そうなんだよ。俺ってば、一体どうすればいいんだろ。」
千「遼はそのままでいいよ。」
「へ?」
そのまま・・・・
そのままでいいって。
どういう意味?
千「お前は十分いい奴だよ。変わらないといけないのは有希の方だろ。」
あぁそういう意味か。
------って。
え。
「千秋。お前もいい奴だな。俺、元気出てきた。」
千「有り難く思え。」
「---------アリガトウゴザイマス。」
千「心が篭ってねぇなー。」
反応が有希そっくり。
やはり姉妹。
血のつながりを深く感じる。
千「でも安心した。お前も含めてあいつを守ってくれそうな奴らがたくさんいて。」
「ん?」
千「一応心配なんだ。妹として。」
「お前のこともちゃんと守ってやるぞ。兄ちゃんとして。」
千「有希より強くなってから言え。」
「・・・ごもっとも。」
再びクスクス笑う。
今の一言は非常に痛い。
千「ま、一月に一回顔出せとか言われたし。また近いうちに遊びに行く。」
「あぁ来い来い。そんでもってスペシャルイケメンズの誰か一人でも引き取ってよ。そしたらライバル減るし。」
千「はぁ?私には無理。」
「なんで。」
千「なんでって・・・私が有希に勝てるわけないじゃん。」
こ--
(こいつぅ・・・!)
男前のくせに・・・
なぜか時々可愛らしいことを言うんだよな。
有希が聞いたら泣いて喜ぶと思う。
「そんなことないぞ。頑張ってくれよ。」
千「無理。大体あいつらの有希を見る目、好きかもーじゃなくて惚れてんじゃん。気付かない有希がおかしいんだよ。」
「そ、そうですよね。」
千「まぁ、イケメンズの中にも気付いてない奴らがいるみたいだけど・・・顔が良いのに鈍けりゃどうしようもねぇな。同情する。」
あはははと豪快に笑う。
だから笑い事じゃない。
ていうかお前が言うな。
千「まぁ、有希は元々そっちの方は鈍い奴だったからな。遼センパイも苦労しますね。」
「うわ・・・・やめてその呼び方。」
千「なんで。」
「なんか・・・・・なんか変な感じ。」
千「ふん。」
そういえばそんな風に呼ばれてたっけ・・・
なんて考えながら走らせていたらあっという間に千秋宅に着いた。
「マジでまた会いに来い。」
千「あぁ、来月行く。」
「毎週でもいいんだぞ。」
千「バーカ、そんなに暇じゃねぇよ。」
千秋はクスクス笑いながら車からおりた。
千「ありがとな、送ってくれて。」
「気にすんな。」
千「それと--」
「ん?」
千「あいつのこと。宜しく。」
「---------あぁ。任せろ。」
イラッとするくらいカッコよく口角を上げて
ヒラヒラ手を振りながら家に入っていった。
「大丈夫。ちゃんと守るから。」
そんな千秋に独り言をぶつけて
車を出した。
俺は今までもこれからも変わらずあいつを守って
そして、あいつが好き。
それだけ。
-------間違いない。(完)