--孝--
千「ま、待てよ!!誰か!!有希を止めてくれ!!」
千秋が来て4日目の夜。
なんらかの事件発生。
要「は?」
累「え・・・何?」
真「なんだぁ?」
純「なに?」
バーンと音を鳴らし勢い良くドアが開いた。
かと思えば更なる勢いで飛び出してきた有希。
おいおい、そんなに慌てると転ぶぞ。
累「ど、どうしたの有希!?」
累の問いかけに答えもせず階段を駆け下りていく。
正に猪突猛進。
千「おい!誰かそいつを止めてくれ!!」
珍しく---
ていうかこいつも焦ることがあるのか。
千秋が声を張り上げる。
「おい、有希---」
止めてくれと言われたので。
あいつが向かっているんだろう玄関の近くにいた俺。
とりあえず止めてみようと声をかける。
有「退け。」
「--------!」
走る速度も変えもせず
一瞬だけ俺を睨み、それだけ言い落として玄関に突っ込んで行きやがった。
そして玄関が開き、閉まる音が響いた。
----怒ってた。
あまりの迫力に止められなかった。
アレはマジで・・・
切れてた?
遼「な、何があったんだ!?」
有希を追いかけてきた千秋は階段下に座り込み軽く放心状態。
千「・・・遼。」
近づいてきた遼を弱々しく見上げる千秋。
そして--
弱々しく光る目から
涙が零れ落ちた。
遼「-----っ、どうしたんだよ!」
マジで・・・
一体何が起こったんだ?
累「-----。」
純「-----。」
千秋と仲のいい二人に視線を送ると揃って首を横に振る。
どうやら何も知らないらしい。
結局誰も状況を把握できないままキッチンテーブルに全員集まった。
しばらく沈黙が続く中、やっと落ち着いたか千秋がタオルを口に当ててゆっくり顔を上げた。
真っ赤な目が痛々しい。
千「・・・ごめん。」
累「・・・なんで謝るの。何があったか言えない?」
千「・・・・・・。」
眉間にシワを寄せて目を泳がせる千秋。
恐らく言い辛いことなんだろう。
だが・・・
「あいつ・・・・マジで怒ってたぞ。」
千秋がビクッと肩を揺らす。
真「あいつは元々乱暴者だが···マジ切れしてるのは初めて見た。よっぽどなことがあったんじゃねぇのか?」
「俺も・・・・・そう思う」
さっき目を向けられた時
あまりの迫力に固まってしまったくらいだ。
要「・・・なぁ千秋。お前何か悩みがあったんだろ?」
千「・・・・・・・・・。」
要「有希が言ってたぞ。何かあったから来たんだろうって。」
千「・・・・・・・・。」
要「まぁ、言えないことならムリにとは言わないけどさ。」
遼に背中をさすられながら再び俯く千秋。
こいつとは会って数日しか経ってねぇが···
こんな奴なんだろうなってのも分かったし、なによりあの有希の妹。
その千秋が取り乱すくらいだ。
よっぽどなことがあったんだろうと思う。
千「---お前らに···言うべきことじゃないんだけど···」
「「「----------。」」」
千「私-----子供を・・・・・おろしたんだ。」
「「「 --------------。」」」
遼「・・・な、なんだと?」
千「2年くらい付き合ってる奴がいて。結婚しようって言ってたんだけどさ···子供が出来たって分かったらおろせって言われて。」
遼「・・・・・それで。」
千「私は生みたかったから。一人で育てるって言って、もちろんそのつもりだった。でも・・・ 相手が親を連れて来て・・・病院まで引っ張っていかれた。」
遼「・・・・・・・・・。」
そりゃ
そりゃぁお前・・・
「・・・・・怒って当然だ。」
あいつの怒りは間違ってない。