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---孝---
真「・・・・・・順番間違ってんじゃねぇ?」
要「やっぱり?」
(・・・まぁ、同感だな。)
ライブ本番。
すごい熱気だ。
なんといってもファンの数がすごい。
そして男のファンが多いってとこがあいつらしい気がする。
『RYOさーーーーん!』
『SYOTAぁぁーーーーー!』
『YUUKIーーー!』
『KAEDEーーー!可愛いーーー!』
それにしても・・・この席を用意してもらって良かった。
あの熱気のど真ん中でステージを見るなんてとんでもない。
それにミーハーの累と純はともかく、要と真樹があの中でファンと一緒に・・・・なんて考えてみろ。
「・・・・・・・・・・・。」
真「・・・なんだよ。」
要「?」
「いや別に・・・」
寒気がする。
想像すらしたくない。
(あ・・・)
音楽には興味は無い。
だが聞いたことのある曲もあった。
それだけRYOの認知度が高いということだろう。
普段はふわふわぼんやり気の抜けた奴なんだけどな。
遼の奴、やる時はやる男だったらしい。
終わったらお疲れくらいは言ってやろうと思う。
いやいや、今はそんなことはどうでもいい。
『うそでしょ!FORM!?』
『晴樹!?晴樹なの!?』
『きゃぁーーー!拓海ぃぃ!!』
「なんで有希の前にあいつらなんだ?」
要「だよねぇ・・・」
音楽のことは良く分からない。
だが出演の順番を間違ったのではないかということくらい俺にも分かる。
「あいつら、有名なグループなんだろ?」
要「超有名。今を時めく、みたいな感じ。」
真「・・・・・・。」
要「遼くーん、とんでもないところで天然トラブル発揮しちゃってんじゃねぇよー。」
「・・・有希の奴、裏で焦りまくってんじゃねぇか?」
真「・・・・絶対そうだ。」
要「うわぁ・・・」
------カワイソウ
間違いなく、三人とも同じことを考えていると思う。
『きゃぁぁーーー!晴樹ぃぃ!』
『拓海ーーー!』
遼が出てきた時も凄かったがこいつらが出てからのヒートっぷりも凄まじい。
もはや盛り上がりも最高潮。
この後に有希の出番?
絶対白けるだろ・・・
考えるだけで居たたまれない。
要「・・・・・・。」
真「・・・・・・。」
要も真樹もだんだん顔色が悪くなってきた。
そういや前にもあったなこんなこと・・・
あぁ、あれは初めて有希の練習に着いて行った時だ。
いやいや今日はあの時と比べ物にならない。
なんせ規模が違いすぎる。
要「-----------」
真「-----------」
「-----------」
客の熱がぐんぐん上がっていくのと反比例して俺らの空気は落ちる一方。
そして時間は無情にも進んでいく。
いずれ有希の出番が来ることは避けられない。
要「やややばい---俺、心配しすぎで吐きそう・・・」
「体調が悪いのか?それは医者として放っておけねぇな。仕方ねぇ診てやる。よし、ひとまずここから出るぞ。」
要「ごほごほ。た、頼もっかなぁ。」
真「・・・・・・。」
「真樹、お前も顔色が悪い。診てやってもいいぞ。」
真「・・・・・頼む。」
------救われた
言葉には出さないが二人共顔にそう書いてある。
医者になって良かった、と心から思った。
これからも頑張って勉強しようと思う。
「急げ、出るぞ。」
要「了解。」
真「は、早く行け。」
我先にと立ち上がり、会場のドアへ視線を向けた。
遼「そうそう、実はね、今日はもう一人来てもらってるんだぜー。」
聞きなれた気の抜けた声。
そして見事に、俺らは三人揃って足が止まってしまった。
遼「誰だか分かるかなー?」
『え、誰?』
『分かんない、デビュー前の新人とか??』
客がざわめく。
ていうかやめろ。
そんな期待させるようなことするな。
遼「皆がすっげー待ってた奴だよー」
おいコラいい加減にしろ。
てめぇ・・・そういう趣味か?
恥辱プレイってやつか?
要「も、もうダメだ・・・!」
真「・・・・・・・。」
意外にも鬼畜な一面を見せる遼。
そんな容赦ない攻めに要は天を仰ぎ、真樹なんか声も出ない。
もちろん俺も・・・
(も、もう・・・終わりだ・・・・・)
『まさか-----YUKI!?』
『えっ、えぇぇー!!??』
『うそー!ほんとに!!??』
答えを言わない遼へ観客の一部から起きたYUKI疑惑。
そしてそれは-----
凄まじいスピードで伝染していった。
遼「皆が思ってる奴で間違いないと思うぞー!」
遼がそう言った瞬間。
会場が、凄まじく沸いた。
「「「・・・・・・・・・・・は?」」」
正に『・・・・・は?』だ。
お前ら・・・誰か別のヤツと勘違いしてるんじゃねぇか?
いや、絶対勘違いしてる。
だって今から出てくるのは有希だぞ。
遼「おい有希、出て来いよ。」
「「「---------!!」」」
俺らの緊張は頂点に達した。
心臓がヤバイくらい爆音を鳴らしている。
いつ止まってもおかしくない。
「えーと・・・・・あー、どうもー。」
こんな登場の仕方があるもんなのか。
ステージの隅から恐る恐る出てきた有希。
やはり出にくかったんだろう。
そろりそろりと忍者のように足音を潜めて歩いている。
いやいやそんなことはどうでもいい。
怖い。
この後の客の反応が恐ろしくて堪らな---
『きゃぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!』
『リアルYUKIーーーーー!!!!!?』
『うそぉーーーーー!!!!!』
「「「・・・・・・・・・え。」」」
もしかしたら本日一番の歓声。
なぜだ、意味が分からない。
要「へ・・・なに?」
真「・・・?」
「・・・・・・。」
有希=YUKI。
YUKI=この歓声。
これでいいのか?
これで合ってるのか?
要「な、なんか・・・体調良くなったかも。」
真「・・・俺も。」
「・・・そうか。」
こいつらも安心したんだろう。
どうやら症状が治まったらしいのでひとまず座りなおした。
(・・・分かる気がする。)
何がって、有希に対する客の評価のことだ。
遼の横に並んで何やら話しているあいつは、正に---
(・・・・・・・・男だ。)
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