Lesson

Lesson001~Loveholic







『俺ら、別れようぜ。』

『え、なんで?』

『だってよ、お前とは---』











-------Lesson1










「体の相性が合わないって言われたんだって。」

「ん---んぐっ!!」







まさかの暴露事件が勃発。

あまりの衝撃にビールを喉に詰まらせた。






「ゲホッ!ゲホゲホ!」

「ちょっと、大丈夫?」

「あ、あんたが変なこと言うからでしょ!」

「えー。」






本日、意味なく浮かれたくなる金曜日

現在地は週末で込み合ってる居酒屋の一角



目の前にはとんでも発言を投下した友達、亜美。

自分が原因のくせにむせる私をきょとんと見てる。

そしてその隣には





「大丈夫ですか?」

「な、なんとか!」





心配そうにハンカチを差し出してくるイケメン男子。

こいつは浩人。

可愛がってる会社の後輩だ。






「ていうか亜美!浩人の前でなに言ってんの!」

「だって本当のことでしょ。」

「う・・」






ちなみに何を話してるかというと、この前別れた彼のこと。

もっと詳しく言うとフられた原因について。






(あーもう・・・)






そうです。

2週間前、私は見事にフられたのです。

原因は「体の相性が合わないから」とのこと。

厳密に言うと、多分・・・






「翔子って不感症かもしれないんだって。」

「ぶーっ!!」

「・・・・・。」

「ちょっと、汚い。」






噴いた。
思い切りビール噴いた。






「な、な、なにばらしちゃってんのあんたは!浩人の前で!」

「だってそう言われたんでしょ。」

「そ、そうだけれども!」

「・・・・・。」






パチッと浩人と目が合う。

うん、めちゃくちゃ恥ずかしい。



ちなみに私は不感症ではないと思う。

触られたら普通に気持ちいいと感じます。

ただ悩みがあるかと言えば・・・

なかなかイけないって問題はあるけれども。






「とと、とにかくこの話は終わり!ほら、飲も飲も!」

「もー翔子ってば・・・そんな体目当ての男じゃなくてもっと大切にしてくれる人と付き合ってよ。」

「えっ・・・もしかして心配してくれてんの?」

「まぁ・・・」

「うそ・・・亜美ありがとう!好きだー!」

「ちょ、ちょっとー!」






つい2秒前まで私を虐めてたくせに急に優しくなる親友。

嬉しさのあまり抱きついた。
持つべきものは友達だね!






「あれ、電話・・・彼氏からだ。」

「彼氏?」

「それじゃ私、そろそろ帰るね。」

「へ?」





帰るの?





「じゃあね、また来週!」

「え、ちょっと亜美・・・今日はガッツリ飲み明かそうねって言ったじゃん。」

「浩人、翔子をちゃんと送ってあげてね?」

「はい。」

「じゃ!」

「・・・・・・。」






電話が来て約5分。

亜美は迎えに来た彼氏と腕を組んでさっさと帰っていった。

持つべきものは親友・・・
なんて思った愚かな自分を殴りたい。






「ちっ・・・裏切り者め。」

「え?」

「・・・なんでもない。」

「?」






居酒屋の外、見えなくなった亜美の背中に恨みの言葉を投げつける。






「もー、しょうがないな・・・それじゃ私達も帰ろっか。」

「・・・はい。」






まだ飲み足りないけど解散してしまったものは仕方ない。

ざわざわと騒がしい街並みの中、浩人と並んで我が家に向かって歩き出す。






(あーあ、帰って何しよ・・・ん?)






チラッと目に入ってきたカップル。

いい雰囲気で見つめ合って・・・
あ、キスした。

いいなぁ、楽しそうで。






「大丈夫ですか?」

「え?」






不意に上から声が降ってきた。

ていうか大丈夫って・・・






「えと・・・大丈夫だよ。そんなに酔ってないし。」

「そうじゃなくて・・」






あ、あぁ・・・






「もしかしてフられちゃったこと?」

「・・・・・。」






浩人のヤツ、どうやら精神的な面で心配してくれてるらしい。

優しい後輩だね。






「そりゃショックだけど仕方ないよ。自分にも原因があったみたいだし。」

「・・・・・。」






原因、つまり不感症疑惑のことね。

自分で自覚はないけど。






(うーん・・・)






「あのさ、浩人・・・」

「はい?」

「変なこと聞いてごめんけど・・・自分のこと、感じやすい方だと思う?」

「えっ!?」






男子に聞くのは間違ってるかもしれない。

けどここは一つ、恥を忍んで聞いてみようと思う。






「私さ、不感症って言われたんだけど・・・正直言って自覚がないんだよね。」

「・・・。」

「まぁ・・・エッチはあまり好きじゃないんだけど。」

「え?」






敏感な部分を弄られると気持ちいいよ。

でも・・・・・・挿入される時ってちょっと痛くない?

だからってわけじゃないけどあんまり好きになれないというか・・・

みんなはどうなんだろ。
もしかして我慢してヤってんの?

 




「・・・翔子さん。」






(はっ・・・!)






ヤケに真剣な声色。

慌てて隣を見上げるとそれまた真面目な顔でこっちを見つめる浩人。






「あ、え、えと・・・!ご、ごめんね変な話して!」

「翔子さん。」

「い、今のはサラッと忘れて--」

「翔子さん。」

「な、なに?」






「俺と、エッチしてくれませんか。」

「・・・。」






は?






「実はあの---

 俺も、不感症なんです。」

「え・・・」













「えぇ!マジで!?」

「・・・はい。」






なんと!

こんな身近なところにまさかの同士が!






「だから、あの・・・お互いちゃんと感じられるように練習してみませんか。」

「練習?」

「は、はい・・」






スッと顔を逸らす浩人。


きっと恥ずかしいんだろう。

なんとなく頬も紅くなってるような気がする。

まぁ、その気持ちは分かる。
誰にでもペラペラ話せることじゃないもんね。






(練習かぁ・・・)






普通ならありえない提案だ。





けど相手は浩人だし
お互い同じ悩みを持つ同士だし

これはもしや・・・

またとない脱不感症のチャンスなのでは?






「あ、あの、すみません、無理にとは--」

「よーし分かった!」

「え」

「いっちょヤりますか!」

「えっ!?」






ポカンとする浩人をバシッと叩く。





こうなったら一緒に頑張ろうじゃないか後輩よ。

お互い手に入れよう。






ガンガン感じる体を!