軽ノリすんな・累

軽ノリすんな・累—4 SAKURA∞SAKU first




「・・・車、持ってたんだな。」

累「そりゃね。持ってないと移動が大変だろ?」

「・・・・・そっすね。」






まぁな、桜館の場所的にな。

車がないと確かに大変だよなぁ・・・





じゃなくて違う違う。





違うんですよお兄さん。

言いたいのはそこじゃない。






(これってあれだよな。名前出てこねぇけどあれだよ。)






なんなんだこのハイグレードな車は。

まぁ、5人でとはいえあんなでっかい豪華な家に住んでるんだ。

色々事情があるんだろう。

深くは聞きませんが。

車に揺られ、ボーっと外を眺めてみる。






(道、覚えなきゃな。大変だ。)






新しい生活圏。

実は結構な方向音痴だったりする。






累「着いたぞ。」

「おー・・・ってここ。T大か?」






着いたかと思いふと校舎に視線を向けると、どーんと"T"の校章が目に飛び込んできた。

言わずと知れた名門大学。

まさかここにお世話になっているなんてことは・・・






累「そうだよ。」

「・・・・・どんだけ頭いいのよ君。」

累「普通だぞ?」

「イヤミか?」






『天はニ物を与えず』

そっか、あれは嘘だったのか。

昔の人は嘘つきだ。






累「何言ってんだ。ほら、有希も降りろ。」

「私も?なんで?」

累「いいから。」






(・・・?)






何故か私を連れて行こうとする累。

腕を引かれて車から引っ張り出された。

レポート提出に時間が掛かるのか?

それなら尚更待っていたいけど・・・






「面倒臭ェな・・・」

累「文句言わないの。」






しぶしぶ累の後を着いて行く。

校内は授業が終わったらしく、学生達が外でワイワイやっている。






「それにしても累が院生とはね。キューティー秀才系か?正直びっくりだな。」

累「ん?」






おっと、呟きが聞こえたらしい。






「なんでもねぇ。それよりいいね~、学生さんは活気があって。累は参加しなくてもいいんすか?」

累「こういうのはもう卒業したの。それより有希、変な敬語使うのやめろよ。」

「え、あー、分かった。」






君と自分はビジネス関係。

てなわけで一応ね、と思ってたんだけどな。

でも敬語苦手なんで。

遠慮なくやめさせてもらいますよ。





---ただ今外出中





目的地に着いたら教授がいなかった。

レポートは専用BOXに投げ入れておけばいいらしい。



所要時間2秒。

すんなり目的を果たした。

やっぱり私が来た意味なくね?

まぁ、活気のある若者達を見てちょっぴり若返ったような気分になったからいいけど・・・

そういうことにしておこう。






累「任務完了。」

「ご苦労様。」






さてさて何を食べて帰ろうか。

そういえばここって大学だな。

学食なんかいいんじゃね?






(・・・・・・・ん?)






ふと、前方に2人の女子を発見。

今時風の可愛らしい二人組だ。




だが---




様子がなんだかおかしい。

何やら耳打ちしながらこちらに近づいて来る。






(あれ・・・)






あれあれ-----え、と・・・






私ってば・・・・睨まれてちゃってないか?






「神崎さん、学校来てたんですねぇ!!」

「最近見なかったから心配してたんですよぉ!」






(お---)






おぉ!ぶりっ子ちゃんだ!

久々に見た!






どうやらこの子達の目的は累たん。

なるほど、こいつってモテるんだな。

累たんのくせになかなかやるじゃないか。






累「もう帰るところだから。」






(え、累たん?)






抑揚のない声色と意外に冷たい対応にビックリ。

決してキューティーでは無い。






「そうだ!一緒にご飯食べに行きません?」

「あ、行きたぁい!」

「ね?ね?行きましょう?」






(す、すげぇ・・・)






軽く無視された累。

ギャルって強引だ。

根性座ってる。

オイシイとこ知ってるんです~
この前いいとこ見つけたんだよねー!

なんてきゃぁきゃぁ騒ぐ2人。

私が男だったら流される、瞬殺だ。






(ぷぷっ。累たんたらどうするよ?)






他人事だからな。

面白半分で隣にいる累に目を向けてみた。






(困ってる困ってる・・・)






自分を無視して騒ぐ女子二人を見て唖然としている累。

まあ、こんなに可愛くても同年の女子からは男子と見られるんだから仕方が無い。

でもとりあえず






(私は退散させてもらいますよー)






一緒に行くも行かないも、すぐに話が終わるような雰囲気ではない。

完全なる部外者だからな私は。

そこら辺で時間を潰してよう。







と、足を進めようとしたんだが







累「あのさ。」

「「はい!!」」







累「俺、今からこの子とデートなんだよね。」







「「えっ!!??」」

「・・・へ?」







そりゃ足も止まるだろ。







(・・・な、なんて言った今。)







ちょっと待て。


「この子」って誰。

君の隣には・・・私。

え、つまり------この子って

私か?






「デートって・・・この人、神崎さんの彼女なんですか?」






え。







「いやいや何言ってんのお嬢さん。違うに決まって---」

累「そうだよ。俺達付き合ってるんだもんね、有希。」

「は・・・」






(え、えぇ・・・)






る、累たん。

一体何を考えてるんだ君は。






「ちょ、ちょっと!」






思わず後ずさりすると累の左腕が伸びてきた。

そしてグイと肩を引き寄せられる。






「お、おいっ!」






目の前にいる2人は放心状態。

釣られて私もマジ放心。







累『話し合わせてくれたら明日も手伝ってあげるよ。』

『え・・・』







急にかがんできたと思ったら

耳元でひそひそと取引を持ちかけられた。






(・・・なるほど、そういうことね。)






「偽彼女」はどうかと思うが・・・

実際、明日の手伝いも捨てがたい。






どうする。

どうするよ・・・








『・・・・・乗った。』








乗ってしまった。









明日は重いものをガッツリ運んでもらおうと思う。