軽ノリすんな・孝

軽ノリすんな・孝—5 SAKURA∞SAKU first





(つ、疲れた・・・)






全く---なんて日だ今日は。

一生分の災難が一気に降り掛かってきたような気がする。






「とにかく!ちゅーとかぎゅーとか軽々しくかますんじゃねぇぞ!」

孝・累「・・・・・・・。」

「返事しろ!!」

孝・累「・・・・・・・。」






このガキ共め。

とりあえず返事しとけーってのが大人だろうが。

二人してだんまり決め込みやがって。






「ったく反抗期かよてめぇら。いや発情期か。」

孝・累「・・・・・・・・・・。」

「まぁいいや、面倒臭くなってきた。さっさと飲も。眠い。」






缶を手に取り、5本目に突入する。






「ぷはぁー!叫んだから喉がからからだ!いいねぇ、一番絞りの気分!」

孝「おやじかてめぇは。」

「誰のせいだよバカモノ。」

累「・・・・振り出しだなぁ。」






振り出しか。

それは勘弁だ。






「そういや五十嵐君。」

孝「・・・・・・孝。」

「・・・は?」






こう。

こうってなんすか。






孝「名前。」

「名前?・・・あぁ、名前で呼べって?」

「・・・あぁ。」






マジでこいつは唐突だな。

会話が上手く成り立たん。






「で、孝君ってお医者様だろ?」

孝「そうだが?」

「なんのお医者様なんだ?」

孝「外科。」

「外科!?へぇ、似合うなぁ・・・」






『メス』

言ってみてぇ。






孝「-----何が言いたい。」

「突っかかるなよ。褒めてんだろ。」

孝「------。」

「---あ、あのさぁ、ものは相談なんだけど・・・眠ってる時に夢見ない簡単な方法って何かないかな。」

孝「は?」

「やっぱ・・・・・ないのかねぇ。」

孝「---どうだかな。俺は切る専門だ。」

「そうだよなぁ。」






そんな都合のいいもん、やっぱないよなぁ。

人間、覚えて無くても毎日夢は見る・・・って誰かが言ってたような気がする。






累「夢、見たくないのか?」

「まぁ、そんなとこ。」

孝「-----だから酒を飲むのか?」

「まぁ・・・ね」






運動して疲れて寝るくらいじゃ夢見るんだよな。

一番手っ取り早いのが酒飲んでふらふらしながらねること。

夢を見てようが見ていまいが朝までぐったりだ。






孝「いつから飲んでる・・・」

「えーと、3年前から。」

孝・累「・・・・・。」

「毎日大量摂取だからな。良くねぇぞって友達にも言われてんだ。そりゃそうだよなぁ。でも仕方ないんだよね。ま、いっか!」






酒は別に好きではない。

出来れば飲まずに眠りたい。


・・・んだけどねー。






なんだかんだでビールのノルマ達成。

日本酒に手を伸ばす。






孝「お前、ペース速すぎ。」

「だから、早く寝たいんだって。」

孝「そのくらいで十分だろ?」

「え、何言っちゃってんの。ここにあるの全部飲むぞ。」

累「ば、ばかか!?こんな量飲んだら・・・」

「いつもより少ないから大丈夫だ。」






(・・・・・あ。)






また失敗した。

昼間と同じ顔・・・

累の眉間に皺が寄る。

累は心配性だったもんな。

こんな話、話題にするべきじゃなかった。







孝「・・・・・有希」

「え?」







突然呼ばれた名前。

ちょっとビックリ。








孝「夢見ない方法があるか聞いててやる。」








・・・なんだよ。

俺様も優しいとこあんじゃねぇか。

さっきはイジワルして悪かったな。






「サンキュ。助かる。」






期待してるぞお医者様。













その後、宣言通り全ての酒をごちそうさま。






そして新しい自室に床を取った。







「あー、飲んだ飲んだ・・・」







布団に倒れ込み上を見上げるとぐるぐる回る高い天井。






結構酔ってるな。






だがあんなに飲んでもなぜか記憶がなくならない私の体。

不思議なもんだよなぁ。







でも、だから・・・







ちゃんと覚えてるからな。







君たちには感謝してるぞ。







「今日は付き合ってくれてサンキューな・・・」







自分の小さな独り言がやけに大きく聞こえる。







「ね・・・・・む・・・」







体中を走り狂うアルコールが眠気を誘う。







今日もきっと







夢は見ない。










--------軽のりすんな 孝(完)





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