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「あー、眠ぃよー。」
桜館に挨拶に行って一週間経った金曜日。
現在午前9時。
私の家から新家まで車で約30分。
ただ今、とりあえず寝れるだけの一式と仕事に必要なパソコン達を車に詰め込んで運転中。
(重かった・・・非常に重かった。)
仕事に必須なので、PC群とその他もろもろは最優先で運んでしまわねばならない。
金・土・日。
無謀だがこの3日間で一気に引越し作業を終わらせようと目論んでいるのだ。
今日の為にこの1週間、時間を切り詰め切り詰めなんとか1週間分の仕事を終わらせた。
そして今朝は6時に起きてせっせと引越し作業に励んだのであります。
朝に弱い私には非常につらい。
「今日中にセットしてしまわないとね。」
ゆらゆら車に揺られながらいつの間にか新家に着いた。
「やっぱでかいわ・・・」
桜館。
この前は夜だったからはっきり分からなかったが、明るい中で見ると恐ろしくでかく正に城だ。
住めば都になるんだろうが、なにしろでかすぎて車から玄関までが遠い。
とりあえず出来るだけ近くに車を停めて玄関の扉を開け放った。
「よーし、やるか!」
気合い十分。
ダンボールにつめた相棒達を車から降ろしていく。
「かーっ!!くそっ重いなぁぁ!!」
盛大に独り言をこぼす。
おっさんか私は。
「よっ!早いな!」
「へ?」
突然飛んできた声。
荷物で前が見えない。
ダンボールを少し横にずらして声の方を見ると
「あぁ、おはよう。」
そこには玄関からひょっこり顔を出す累君。
今日も可愛さ炸裂だね。
「今日は休みなのか?」
累「夕方レポート出しに行くだけ。」
「レポート?」
累「あぁ。俺、院生なんだよ。ちなみに純も。」
おおぅ・・・笑顔が眩しいね。
いやいやその前に院生って・・・
こんなにカワイイのにもしかして賢い子なのか?
しかもあの純君も?
意外だな。
人は見かけによらないもんだ。
「すごいな、累君。」
累「何が?それより、ほら。それちょうだい。」
「え?・・・うわっ」
担いでいた荷物を取られた。
累「手伝うって言っただろ?」
「へ?あぁ、ありがとね。」
ひーひー言いながら車からおろした荷物を顔色一つ変えずに持ち上げる累君。
やっぱ男子は力強いね。
助かっちゃいますよ。
累「有希は軽いヤツを持って来いよ。」
「了解。」
累君ってばいい奴だな。
お言葉に甘えて軽い荷物を運んでいく。
非常に楽だ。
累「これで最後だな?」
「そ、そうみたいだ。」
信じられん。
あんなにあった荷物がほんの小一時間で・・・
車の中に詰め込んでいた荷物ちゃん達はすっかり新マイルームに腰をおろしている。
んー、感無量!
「ほんと男の子って力持ちだな。私なんてこの箱達を車に詰め込むのに3時間近くもかかったんだぞ?」
累「は?3時間って・・・朝から一人でやってたのか?」
「あぁ。」
累「バッカだなぁお前。言えばよかったのに。」
「そういえば皆の連絡先も聞かずに帰ったからなぁ。とにかく助かったよ累君。」
そういやこの前はさっさと帰ってしまったんだった。
こんなことならマジで連絡先聞いとけば良かったな。
そしたらもう少し遅くまで寝れたのに・・・
それにしても君はマジでいい奴だな累君。
爽やかな顔で『早く終わって良かったな』なんてにこやかに笑顔をくれる。
朝の清々しい光を浴びてバックにキラッと文字を背負ってるように見えるぞ。
今時の若者も捨てたモンじゃない。
「マジでありがとな。」
礼には礼を。
笑顔には笑顔を。
私も便乗して笑顔でお礼を返してみる。
累「・・・・・べ、別に構わないよ。それと、俺のことは"累"でいいよ。俺も"有希"って呼ぶからさ。」
「呼び捨てっすね?了解、累。」
こんなやり取り久々だな。
『ねぇねぇなんて呼べばいい?私のことは呼び捨てでいいよ~』
『え~じゃあ私も呼び捨てで呼んで??』
今考えるとどうでもいい事なのにちびっ子の頃は真剣に話してた。
可愛いよな、こういうのって。
自然、むふふと顔が緩む。
(・・・あれ。)
「なんだ、累。顔が赤いぞ?」
累「え!そ、そんなことないよっ!」
慌てて口に手を当てぷいっと顔を逸らす累。
なんだ、一体何があった。
(うわ・・・)
ぽっと染まっていく横顔。
そんなの見せられたらこっちまで恥ずかしくなっちまうじゃねぇか。
「あ、もしかして・・・私の大人の魅力にトキめいちゃったのかなぁ?」
こういう奴です私は。
調子に乗ってこの手の言葉をがんがん投げます。
累「ば、ばかかお前はっ!そんなんじゃないって!」
「あははっ」
からかい甲斐のあるヤツめ。
暇なときはこいつで時間を潰そうと思う。
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