有「た、ただいまー。」
お、やっと帰ってきた。
しかもなんだか疲れてない?
んー。
これはやはり孝に何かされたと見て間違いない?
真「遅ェじゃねぇか。」
有「はいはいすんませんね。ほら、お前の。」
真「・・・サンキュ。」
有「はい、お前らも。」
真樹のヤツ、随分熱入れてんだな。
マジで"オモチャ"なのか??
せっかくだからゆっくり飲もうってこと全員ソファーに集合。
---全員参加
それこそ有り得ない光景で笑える。
有「うわ、すげ。全員集合するとホストみてぇだな。」
孝「高くつくぞ。」
有「私がチップもらいてぇよ!」
バシッと孝を叩く有希。
やはり変人。
孝にそんなことできる女、今のとこお前限定だと思う。
(妖しい集団だな・・・)
---ホスト・桜館
ダサいネーミングが頭に浮かぶ。
「ではでは!ウェルカム有希ちゃんってことで!」
有「サンキュー!なんか嬉しいっす!」
純「俺も嬉しいよ、姫。」
有「純くんありがとな!」
「改めて、宜しく有希ちゃん。」
有「宜しくー!カンパーイ!」
累「カンパイ!」
心地よいグラスの音が響く。
さてさて、酒も入ったことだし。
人間観察続行といきますか。
攻撃するにも防御するにもまずは情報を掴むこと。
これ鉄則ね。
孝「だから・・・ペースが速過ぎだお前は。」
有「煩ぇな大丈夫だって!なぁ真樹?」
真「あーお前なら大丈夫だ。早く酔いつぶれろ。」
有「・・・お前が言うと危険な匂いがする。」
有希の位置は真樹と孝の真ん中。
やけに愉しそうだ俺様達。
逆に有希は迷惑そう。
いつもならこの光景は逆。
何人もの女が奴らを取り合うように犇めき合う。
目の前の光景は・・・
うん、激しく変な感じだ。
有「あ、後で仁に連絡しとかなきゃな。」
累「なんで?」
有「毎日来るって言ったんだよ。実際そのつもりだったし。心配してるかもしれねぇだろ?」
純「律儀なんだね、姫は。」
有「違う違う。下僕を教育してるだけだ。」
え、下僕?
孝「そういえばお前、あの店員と仲がいいよな。」
真「何?」
有「まぁな!ほんといい奴で良かった。一人で入れる店ってなかなか見つからないもんなんだぞ。」
累「それって仁のこと?・・・なんかムカつく。」
えーなんだよその会話。
皆してやる気になってんの?
ま、どっちでも構わないんだけどね。
誰が狙ったとしても、ここには一人の女を独占したいと思うような奴はいない。
---相手を落とすまでのゲーム
そう、ゲームだ。
(お前らがどの程度の気持ちでこの女を狙ってようと・・・どうせ軽い興味本位なんだろ?)
今までもそうだったし、これからもそれは変わらない。
純「それはそうと--」
おっと…
思考がぶっ飛んでた。
純の声で現実に引き戻される。
純「いい?姫、これからは一人で飲みに出るのは禁止ね?」
有「え・・・えぇ?なんで!」
真・孝・累「賛成。」
有「てめぇらは黙ってろ!」
そういえばこの子は一人で平気で飲みに行ける女だったな。
ついこの前、Blackに様子を見に行ったらマジで一人飲みしてたからビビッた。
真樹から邪魔されて何の進展も無く終わったのは想定外だったけど
確かにあんなこと続けてたらチャラついたナンパ男に持っていかれてしまう。
「そうだなぁ、さすがに1人で夜出歩くとなると心配しちゃうからなぁ。」
せっかく見つけた面白い素材。
危険な芽は先に摘んでおいた方が得策だ。
有「だ、大丈夫っすよ要ちゃん。自分、もう大人ですもん!」
めちゃくちゃ焦り出す有希。
でもダメダメ。
君は十分危なっかしいよ。
純「そういう問題じゃないよ、姫。やっぱり危ないから。」
有「そ、そんな・・・」
純「その代わりお酒にはちゃんと付き合うから。」
がっくりと肩を落とし恨めしそうに視線を上げる。
うわ、その表情いい感じ。
有「あ、あのなぁ…私は毎日飲むんだぞ?」
累「知ってる。」
有「単純計算で5日に1回飲みに付き合うってことになるんだぞ?そんなの絶対疲れる--」
真「いいから約束しろ。一人で出歩くのは許さねぇ。もし破ったら・・・」
あれちょっと待って。
なんか---変。
お前ら、有希のことマジで心配してるように見えるんですけど。
「あーもー分かりました!でも無理して付き合わなくてもいいぞ!ちょっと飲みたいなーって時に付き合ってくれ。」
でっかいため息をついて酒を一気に煽る有希。
どっから見ても迷惑そう。
(分かってないなー有希ちゃん。)
分からないと思うけどこの会話の全てが異常なんだよ。
君だけだよ?
こいつらにこんな態度取らせることが出来るのは・・・
「まぁでも…ありがとな、皆。」
「「「・・・・・・・・・。」」」
(・・・え)
な、なに・・・・今の・・・
累「・・・お礼言うことじゃないよ。」
純「そ、そうだよ。心配するのは当然でしょ?」
ちょっとちょっと・・・
今の笑顔は・・・・・反則でしょ。
普段笑わないわけじゃない。
でも今の笑顔には確かに
女の匂いがした。