顔合わせ

顔合わせ 02 SAKURA∞SAKU second





「えと・・・何か御用っすか?」






場所を変えたい、ってことでスタジオを出た。

無言で歩いていく晴樹の後を歩くこと数分。

廊下にある自販機でコーヒー買って、隣接されたベンチに座った。


さぁて、一体何事だ?





晴「なんか・・・拓海のことゴメンな?」

「拓海君?あぁ・・・質問攻めのことっすか?全然大丈夫ですよ。」

晴「そっか、ありがとう。」

「いえいえ。」

晴「・・・・・・。」

「・・・・・・。」






しーん。

え、終わり?






晴「あのさ・・・有希はRYO以外で歌うつもりはないんだよね?」

「え?あ、はい。」

晴「・・・・・もったいない。」

「へ?」

晴「有希なら一人でもやっていけると思うけど。なんなら俺たちの仲間にならない?」

「え・・・」





えーーーと・・・

この展開は・・・
まさかの君もお誘い組でしたか。





「あの・・・誘ってくれてありがとうございます。でもすみません。」

晴「有希はこの世界でやっていきたくないの?」

「そのつもりは全くないっす。」

晴「・・・即答なんだね。それって本音?」

「本音ですよ。マジで全然興味無し。」





まるで探るように目を合わせてくる晴樹君。

その真剣な目を真っすぐ見つめて答えた。





晴「・・・そっか。それなら仕方ないね。実は色んな人に勧誘してこいって言われてたんだけど・・・そういうことなら俺も有希に協力するよ。」

「そりゃ助かります。」

晴「いえいえ。あ、それと敬語は止めてね。名前も晴樹って呼んで欲しいな。」

「え、そう?じゃぁ-----そうする。」





ありがとう、と言って笑顔を見せる晴樹。

さっきまでの強張った顔から一変、明るい表情。

リーダーも色々大変なんすね。





晴「そういえば、遼とはくっ付いたの?」

「----へ?」





くっ付いた?

くっついたって・・・
なんのことだ?





「あ、あの、今のはどういう・・・」

晴「え?あぁ、俺、遼とは結構長い付き合いだからさ。二人が彼氏彼女じゃないこと知ってて。」

「そ、そうなんすか。」

晴「でもずいぶん長い間彼女の役引き受けてるから。本当にくっ付いちゃったのかなと思って。」

「あ、あぁ・・・」





なるほどそういうこと。





晴「もしかして他に彼氏できちゃった?」

「え?いやいやそういうわけじゃ---」

晴「そうなの?じゃぁ・・・」

「も、もういいじゃんか!この話は止め止め!」





なんか---むずむずする。

むずむずして恥ずかしいぞコノヤロー。


そんなことよりライブの話をしよう!

一緒に成功させようじゃないか!






晴「なに慌ててるの?あ、もしかして有希・・・誰か他の人に恋してんの?」

「ここっ------恋!?」






何を言い出すんだ君は。

あまりの斜め上な質問に変な声が出る。






でも






一瞬六人の顔が脳裏をよぎって・・・






更に、焦る。







晴「あ、その顔は図星だね?」

「ちち、違うっすよ!」






ていうかさっきから何を言ってんだリーダー!

いい加減にしなさい!
大人をからかうもんじゃありません!





晴「うわぁ・・・有希ってばすっごい可愛い反応するんだね。ちょっとドキドキした。」

「は・・・・はぁ!?」

晴「やばいなぁ。俺も有希のこと気に入っちゃったかもしれない。」

「な、なんでそうなるんすか?」





------類は友を呼ぶ


昔の格言はバカに出来ない。

正にリーダーも遼の友達だな。

話がびゅんびゅん飛んでいく。





晴「ねぇ、有希のこと好きになってもいい?」

「・・・・・は?」

晴「ダメ?」

「・・・・・あの、からかうのは止めろ。」

晴「からかってなんかないよ。」





(・・・何言ってんだこいつ。)





初対面の相手になんでそんなことが言えるんだ?

こんな可愛い面してるくせに・・・
もしや中身は女泣かせの悪い男なのか?

ま、人は見かけによらないと言うしねぇ。

ちなみに我が家にはそんな大人がわんさかいます。



いやいやそれは置いといて・・・





「えーと・・・万が一にでも私を好きになってくれたとしてだ。」

晴「うん。」

「私は君には応えられねぇ。」

晴「・・・なんで?彼氏いないんでしょ?」

「いないけど・・・・・・すっげー大切な奴らはいるんで。」

晴「・・・どういう意味?」





どういう意味、か。

そうだな・・・





「そいつら以外、私は男として見るつもりがないんだ。」

晴「・・・え?」





ていうか・・・・

見れない。






「そういうことなんで、からかうのは止めにして・・」

晴「・・・・・・・遼も、その一人?」

「へ?」






・・・遼?






そりゃ、お前・・・








「もちろん。」








-----遼を男として意識する




まさかこんな日が来るとはねぇ。

・・・ヤバい。

言った傍からめちゃくちゃ恥ずかしいんすけど。





晴「そっかぁ。でも俺、やっぱり有希のこと気に入っちゃったし、ちょっとは頑張ってみる。」

「え・・・」

晴「ダメ?」

「・・・ダメ。」

晴「えー!ショック!でもやっぱ頑張ってみる。」

「・・・・・・・・。」





打たれ強いんすねリーダー。

まぁ、厳しい世界で鍛えられてんだもんな。
お若いのにいくつもの荒波を乗り越えてきたんだろう。

だがその根性は別のところで使ってくれ。





晴「そういうことだからさ!あと少し練習頑張ろう!」

「は、はぁ・・・」





そういうことってどういうことだよ。

・・・という言葉は飲み込んでおく。
なんだかこれ以上話しても無駄な気がする。


ゲッソリする私を置き去りに「先に行ってるね!」と言って晴樹はスタジオに戻って行きやがった。






「まったく・・・わっけ分かんねぇ・・・」






思わず脱力。

だってそうだろ。

初対面の相手に好きになるだの頑張るだの・・・

どうなってんだ最近の若者は。





(いや、待てよ・・・)





もしやこれって人生初のモテ期到来ってヤツなんじゃ・・・

私にもついに?
ビッグウエーブなのか!?

んだよ神様!

一気にじゃなくてもっと小出しにお願いしたかったっすー!






(・・・・バカか私は。)






チャラけた頭を一発殴り

コーヒーを一気に流し込む。





「さぁて、行こ行こ。」





男にモテるだのモテ期到来だの。

そんなもん全く必要ねぇ。









今はまだ「安心感」としてしか表現できねぇけど









『男』はあいつらだけで十分だ。










他は、いらねぇ。