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「・・・・・・・・・。」
晋「・・・・・・・。」
現在、どこかへ向かって車で走行中。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
晋「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
うーん。
非常に気まずいのは私だけか?
晋「おい。」
「・・・なんだ。」
晋「何か話せ。」
「は・・・・・・」
良かった。
あんたも気まずかったんだね。
「えーと・・・お迎えご苦労さんでした。」
晋「あぁ。」
「出来れば目立たないところにいてほしかったですけどね。」
明日は木曜日、至って普通の平日。
もちろん会社に出勤しないといけない。
明日のことを考えると頭が痛くなる。
晋「目立たないとこにいたらお前に気付かなかっただろうが。」
「・・・・それはそれで良かったんですけど。」
晋「あぁ?」
「・・・いえ。」
(あれ・・・・・・・・・・?)
なんだろう・・・
なんか・・・引っかかる。
「どっかで見たことが?いや違う・・・あ、声だ!あんたの声、どっかで聞いたことが----」
「・・・・・・・晋。」
「は?」
「晋と呼べ。」
シン・・・?
あぁ、名前ね。
「晋さんの声---」
「さんはいらない。」
「晋くんの---」
「晋。」
「晋・・・ちゃん。」
「・・・・・・・・。」
無言の圧力を食らう。
まぁ・・・呼び方なんてどうでもいいんだけどな。
「はいはい分かりましたよ。晋ね、晋。」
「なんだ。」
「晋の声、どっかで聞いたことがあるようなないような・・・」
この声。
そして高圧的な喋り方。
晋「寝ぼけて辰巳の携帯に出た時だろ。」
「あぁ・・・・あぁ!?」
晋「この前の日曜。」
そういえばあの時・・・
「あれってあんただったんですか。」
晋「・・・・・・名前。」
「あぁすみません。あの時なんて言ってました?呪文みたいの唱えて・・・」
晋「唱えてねぇ。」
「いや、なんか言ってた。」
晋「・・・・・お前、変な奴だな。」
「・・・・あんたに言われたくない。」
・・・・睨まれた。
・・・・もちろん睨み返した。
「・・・・なんですか。」
晋「・・・・・・・・・・・・。」
ちなみに現在、赤信号に捕まっている。
停まった車の中、我々の睨み合いは終わらない。
信号が変わるまで続きそうだ。
晋「透。」
「なんだ。」
晋「透。」
「だからなん---------ッ!?」
スッと手が伸びてきた。
思わず身を引く。
「え----おいっ!」
なぜか胸倉を掴まれた。
そして強く引っ張られて----
「---ッ!?」
唇から・・・リップ音。
「------------は?」
こ、こいつ-----
晋「俺のことは、晋と呼べ。」
こ、こいつ今-----
キスしやがった!!
「なっ----何すんだあんた!!」
「晋。」
「し----晋ッ!」
「なんだ。」
「なんだじゃない!」
「は?」
こいつ・・・不思議ちゃんか!?
会話が成り立たない!
「いきなり何しやがる!」
晋「キスしたんだろ。」
「-------なっ!」
信号が変わって車が動き出す。
そう、何事も無かったかのように。
隣を見ると涼しい顔して運転するヤツ。
(し、信じられん。)
ほんのちょっと前に会ったばかりだぞ。
なのにいきなりチューなんて有り得ない!
まさかこの男、あの変態辰巳さんと同等?
いやそれ以上かもしれん!
辰巳さんよりはマシな奴かも・・・
なんて期待した私がバカだった。
正に-----放し飼いの野獣!
(・・・・・・・・ちょっと待て。)
そういえばこいつも---
恋愛ゲームの参加者なんだよな。
さ、寒気がする!
晋「そういえば透。」
「・・・なんですか。」
晋「辰巳に用があったんじゃないのか?」
「え?」
晋「さっき電話かけてただろ。」
「あ、あぁ。」
掛けてましたよ。
あんたをどうにかしてもらおうと思って。
「もういいんです。終わってしまったんで。」
晋「は?」
「それにしても良く私が分かりましたね。ていうか分かったんですか?それとも睨んだ相手がたまたま私だった?」
晋「この前バーで見かけたからな。覚えてた。」
「そりゃすごい。常に女子を観察してるんですね。さすが野獣。」
晋「なんだと。」
「いえ別に。」
一度見た女は忘れねぇぜ~ってか?
モテる男は違いますねー。
晋「観察してたわけじゃねぇ。お前が男か女か分からなかったからな。じっくり見たから覚えてただけだ。」
「なんだと。」
男か女か分からなかっただと?
「失礼なヤローですね。」
晋「お前もな。」
そう言うと・・・・キュッと口端を上げた。
ムカつくくらい綺麗な笑顔ですね。
(あぁ・・・疲れた。)
晋から顔を逸らし窓の外を見つめる。
今日は顔合わせのはずなのに合わせる前からすでに疲労困憊。
今すぐにでも帰りたい。
(はぁ・・・・・・)
軽く、目を閉じてみる。
いいんだぞ。
今からでも遅くは無いぞ。
夢なら-------覚めろ!!
晋「着いたぞ。」
「え?あぁ・・・」
バカなことに夢中になってると目的地に着いたらしい。
行きたくないが来てしまったものは仕方が無い。
とりあえず行ってみるかとマイバッグを握ると、晋が助手席のドアを開けてくれた。
「あ、ありがとう。」
目的地はイタリアン風の店。
入り口に着くとまたまた扉を開けていただいた。
そして中に入るよう軽く促される。
「・・・どうも。」
この前、辰巳さんに対しても思ったが・・・
こういう、エスコートっていうのか?
さすが女を落としまくってるだけある。
そこら辺は徹底しているらしい。
どうでもいいが、調子が狂う。
「あ、お疲れさん。」
「遅かったね。」
晋「文句なら透に言え。」
「・・・なんでだよ。」
オシャレなスタッフに案内されたのはこれまたオシャレな大き目の個室。
個室っていうか・・・家ですか?
もしかしてVIPルーム?
座り心地良さそうなイスにスタイリッシュなテーブル。
オマケに酒がずらりと並んだカウンターまである。
そのカウンターのイスには辰巳さんと、もう一人・・・
私達が入ってきたのを見てゆっくり立ち上がり、テーブルの方に歩いてくる。
(おぉ・・・・・)
スーツを纏ったすらりとした長身
そして二度見してしまうような綺麗な容姿
隣の晋ももちろん、まるで映画のスターみたいだ。
辰「透ちゃんは俺の隣ね?こっちにおいで?」
「・・・嫌だ。」
辰「え・・・・なんで!」
「役立たずだからに決まってるだろ。」
辰「ねぇ、それって何のこと?」
「自分で考えろ。」
辰「えー。」
どこに座ろうか突っ立っていると辰巳さんから声が掛かる。
あんたの隣だけは絶対嫌だ。
晋「じゃぁ透、こっちに来い。」
「・・・・嫌です。」
晋「なんでだよ。」
「野獣だからだ。」
晋「なんだと。」
あんたの隣も絶対嫌だ。
寒気がする。
「じゃぁ、透ちゃんは俺の隣だね。」
「・・・・・・・・・・。」
まぁ、座るならそこしかないですよね。
「・・・・失礼します。」
「どうぞ。」
「あ、どうも。」
見るからに優しそうな男子。
もちろん恐ろしいくらい綺麗な容姿。
そいつがイスを引いてくれた。
では有り難く失礼します。
辰・晋「------------。」
変態と野獣は対面席に無言で着席。
言っておくがお前らにだけは隙は見せんぞ。
絶対近くに寄らないからな。
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